見出し画像

春はずぶ濡れ

たどたどしい足取りで、春を踏みつける
眠ったままの君は笑うけれど
空はちっとも晴れなくて
また強いだけの風がいたずらに僕の色を奪っていく

この指先の
目に見えない血管からほとばしるように
芽吹いた感情がいつか君のように誰かの目に焼き付いて
その足取りを人知れず軽やかにしていく魔法ならば
通り過ぎたばかりの顔も知らないあなたに
死に様を見せつけたっていい

降り注ぐ愛と憎しみでずぶぬれた僕は
一体これからどれだけの希望を歌にできるだろうか
僅かな温度の変化さえ許されぬ身体で
痛々しいほどに妬んだ君はまだ眠っている

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?