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軽減税率制度後の世界の探求

2019年10月に開始された軽減税率制度。この制度導入に仕事で携わったことにより、制度施行後もそこから目を離せなくなってしまった人間のお話です。レシートを手に取ってその姿になるまでの道のりに一緖に想いを巡らせてみませんか。

軽減税率制度とは

2019年10月から開始したのは「区分記載請求書記載方式」。取引の請求書・領収書等の帳票には、二つのことが求められています。

1.軽減税率であることが明らかになるよう「軽減税率対象」などを記載
2.税率ごとに区分して、合計した課税資産の譲渡等の対価の額(税込み)を記載

つまりは8%か10%を区別して合計し、8%対象の商品がどれかわかるようにするということですね。

『軽減税率制度への対応には準備が必要です!(リーフレット)(令和元年6月)(PDF/5,648KB)』参照

悪く言えばこれだけ。全国の数え切れない程の事業者が、上の情報と簡単なリーフレットをもとにそれぞれ検討して対策をしてその時を迎えたわけなので、多くのパターンが存在するようになりました。その結果、私は帳票を手にする度にそれぞれの事業者がどんな思いで辿り着いたのか、想像を巡らさざるをえなくなったのです。

一つ一つに人々の思考が反映されている。それがシステムの面白さ。生活の役に立つものではないけど、意外に興味深いのでお付き合いください。

1.基本型 

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今までの領収書の形式をなるべく変えず、明細に記号をつけることで税率を区別する方式。これが「区分記載請求書記載方式」対応の大半を占めていると思います。守谷SAの野菜売り場の領収書はその中でも国税庁のリーフレット上の例に近いもので、軽減税率対象は「※」で表されています。

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『軽減税率制度への対応には準備が必要です!(リーフレット)(令和元年6月)(PDF/5,648KB)』参照

※ちなみに、このリーズナブルなふきのとうはざっくり8個は入ってこのお値段。近所ではなかなか出会えないのらぼう菜も絶品でした。季節の野菜果物・山菜で溢れている素敵な売り場だったので通りがかった際にはぜひお立ち寄りを。

2.多様な印

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こちらはセブンイレブンさん。基本型と同じかと思いきや「※」ではなく”*”を採用しています。金額欄に記号配置することにしたようで、その結果か半角の記号となったようです。金額の左に記号がついているのもスッキリ見やすい気がします。

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続いてこちらはローソンさん。なんと、軽減税率の「軽」を採用。これなら凡例を見ずとも意味が一目瞭然です。蓋を開けてみると「軽」印を採用しているところは結構あるようでした。

※ところでこれは軽減税率制度施行直後にトイレットペーパーを買ってみた時の領収書です。あの時も増税前にトイレットペーパーを買いに走る人がいたようですが、やはり増税後の方がキャッシュレス還元でお得に買えていました。

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こちらはあるおだんご屋さんです。たまに小さなお店などで制度施行後も領収書が全く変わっていないところも見かけるのですが、きちんと軽減税率制度対応されています。記号は「内2」、税率No2の様な感じですね。連番をつけるならもう税率のまま番号をつけてもいいのでは(「内8」、「内10」等)…とも思いましたが、税率の桁数も税率も変動することを考慮すると正しい気がします。

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東急系の商業施設。軽減税率は"K"、標準税率は"H"。どちらかが無印なのは領収証のレイアウト上も、システム管理上もアンバランスで都合が悪いと判断されたのかもしれません。

普通の日常生活でこれだけ色々な種類の印と出会うことに驚きます。まだ見ぬバリエーションも無数にあることでしょう。

3.発想の転換

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お次は日常生活で一番お世話になっているスーパーマーケットのレシートを見てみます。こちらは東急ストアさんです。前に見たセブンイレブンさん同様、"*"を採用しています。品番?の前のスペースを有効活用するため、半角記号を選択した様です。それにしても、スーパーで購入するのはほとんど食材なので印有の商品が埋め尽くしていますね。目につくと言えば目につくような。

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と思っていたらこちら、とあるCGC系列のスーパーマーケットのレシートはやたらスッキリしています。なぜか。

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なるほど。新しい考え方の税率に印をつけることばかり考えていましたが、ほとんど食料品がメインの業態であれば逆の方が合理的です。おかげで税率の違うみりんとお酒がパッと探せます。…ただ、全く同じ"*"印でありながらお店によって意味が違う、というのは一消費者にとってはお店ごとの印の意味を把握しなければならず手間がかかります。厳密に標準化されず柔軟性が残されたことによる利点とも、弊害とも言える例だと思います。

こぼれ話

スープストックトーキョーさんでお昼を食べに行ったときのこと。いつもの癖でレシートを見てみると…

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ほうじ茶チャイというドリンクとのセットにしたのですがなぜかそれだけ8%。今まさに口をつけようとした手が止まりました。なぜ?確かに、注文の時に食事のあと仕事場にも持っていきたいのでテイクアウト用のカップをお願いしました。これが元でドリンクだけテイクアウト扱いにされてしまったようです(こちらの軽減税率の印はテイクアウトの"T"ですね)。このまま口をつけたら世に言うイートイン脱税…。

泣く泣く、店内では口をつけず店を出てから頂きました。このとき以外はこのようなことはなかったので、私の伝え方がドリンクだけテイクアウトするように聞こえたのだと思います。(それにしてもこんなことに気を使わなければいけないとは、改めてナンセンス)

まとめ

不可思議な軽減税率制度。こんな区分けの手間をかけて本当に誰が嬉しいのか。仕事で携わった時には何度もそう思いましたし、おそらく紹介したレシートを作った方々もそうだったのではないかと思います。ですが制度が始まって手にした帳票にはそんな中でも柔軟に最善の答えを出そうとしている姿が見えたようで、私は勝手に嬉しくなりました。そして制度施行までに皆きちんと用意したのだから凄い。今後もまだ見ぬ努力の結果に出会えることを楽しみに買い物をしていきたいと思います。

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