【感動する童話】 障がいを持った動物がハンディを克服し恋愛する話 【フリー台本】
内容
→魅力的な動物達が繰り広げる、障がいの克服&共に生きる事をテーマにした新しい童話です。
この話はえすか・ぺふろむさんの希望を聞いて作成した童話です。色々悩みながら筋を変えたり構成書いたりした作品でした。労苦をいたわって欲しい(願望)
写真はPicNos!さんを使用しました。無料で商用利用できる良サイトなのでみなさんチェックしましょう!!
規約
※改変自由です(公序良俗の範囲内で)⇒結末を変える場合は、一報お願いします。
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本編【灰色うさぎと白うさぎ】
1
とある所に木々が生い茂った国がありました。
その国の外れにある小さな森にはうさぎが住んでいました。
うさぎの毛はくすんだ灰色でとても素敵でした。
ですが灰色うさぎはその事に気付かず、自分の事をきたないうさぎだと思ってました。
ただ、きたなくても美貌はそこそこあるだろう。
という謎の自信を持っていて、自分に友人ができないのも多少嫉妬とかそういうのが絡んでるはず。
そんなふてぶてしいようなたくましさ溢れる自信を、灰色うさぎは持ち合わせていました。
そんな灰色うさぎには大切な存在が一匹いました。
親友の真っ白なうさぎです。
ほれぼれするような白くて整った毛並み。
いつまでも見ていたくなる、淡い赤い眼を持つ白うさぎは、灰色うさぎの憧れでした。
2人が仲良くなったきっかけは、白うさぎが灰色うさぎの住む家の近くに通りかかった事からでした。
白うさぎの姿を見て、灰色うさぎは見とれていました。まるで神がつかわした使者のような、神秘的な麗しさ。
うさぎ界隈で言う美形に遭遇したので、灰色うさぎのテンションも思わず上がります。
その白うさぎは、ちらりと灰色うさぎを見つめました。
思わず灰色うさぎは見つめ返しました。
白うさぎがきょとんとしてましたが、少ししてからおじきをしました。
灰色うさぎも会釈をして、そこから2人はたちまち仲良くなりました。
今日もいつものように二人で遊ぼうと、村の外れにある湖のほとりで待ち合わせです。
灰色のうさぎは一人ぼっちで欠けた月を見ながら、白うさぎを待っています。
しかしその日、親友のうさぎは姿を見せませんでした。
どうしてこなかったのかな?
翌日灰色うさぎは心配になって、親友うさぎの家まで向かいました。
親友うさぎは留守でした。
灰色うさぎはしょんぼりしながら、親友うさぎの家を後にしました。
家を離れて少し立ち止まって白うさぎの木の家を振り返ります。
一瞬家から明かりが灯っていた気がしましたが、灰色うさぎは気のせいだと思いました。
灰色うさぎは心配でいっぱいでした。
いえ、心配よりも寂しかったのです。
灰色うさぎは無口で、今まで友達はいませんでした。
生まれてすぐ、両親がいなくなってからひっそり一人ぼっちで暮らしていました。
ここには天敵がおらず、食料もたくさんそろっているので一人でもなんとか生活ができました。
それでも、心のすみで時々胸が痛くなりました。
そんな不安な日々を過ごし、灰色うさぎは毎日湖のほとりで白うさぎを待つ事にしました。
何日も何日も待ちました。
待ち合わせにしていた場所には、くっきりと灰色うさぎの座った跡が残されています。
灰色うさぎは、白うさぎを信じて待ち続けました。
そんなある日の事。
いつものように湖のほとりで座って待っていた灰色うさぎの肩をゆする者が現れました。
それは、息苦しそうな息を吐く親友の姿でした。
2
灰色うさぎは驚きながらも、白うさぎは忙しそうに作業を始めたので、じっと様子を見守ります。
ほんとうは抱きしめたかったのですけれども。
白うさぎが灰色うさぎの右耳になにやら変わった物を取り付けました。
「ねえ、僕の声がきこえるかい?」
朗らかで優しい声が響きます。
灰色うさぎは驚きと感動で泣き出してしまいました。
白うさぎは嬉しそうに笑い、泣いていました。
「灰色うさぎさん、ほんとにごめんなさい。君にプレゼントするのに、材料を遠くまで行って集めたり、家の中でこもって作業してたんだ……」
灰色うさぎは感激しつつも、えっ居留守だったの……それはちょっと返事してもらいたかったかもと、心の中でぷんぷんしています。
白うさぎは話を続けます。
「……僕は耳の聞こえない君に声を届けたかったんだ」
灰色うさぎは急に喉元が熱くなり、知らないうちに涙を流していました。
灰色うさぎは秘密がありました。
彼女は生まれてから耳が聞こえなかったのです。
そのせいで仲間からいじめられ、へんぴな土地でひっそりと暮らしていました。
持ち前のめげない精神とふてぶてしさから、普段はなんともなく生活してましたが……ふと夜、枕元で痛くもないのに泣いていた時もあったりもしました。
一人ぼっちで顔を隠していました。
そんな耳の聞こえないうさぎに、突然の知らなかった感覚が補聴器を通して伝わります。
初めての音の衝撃におっかなびっくりしましたが、一番聞きたかった白うさぎの声が聞こえて幸せです。
白うさぎが話します。
「それにね……僕にも秘密があるんだ。とてもおそろしい秘密が」
3
白うさぎはごくりとつばを飲み込みます。
「僕の白い体は、とても珍しくて。白い毛に赤い眼は不吉だって言われて。両親からも気味悪がられたんだ」
灰色うさぎも同じ経験を積んでいました。同じな分、白うさぎの秘密もすんなりと受け入れます。
しかし、喋った事がないので黙っています。
「だから、他の仲間たちの目を気にして、この外れまでやってきた時、君に出会ったんだ」
灰色うさぎも同じでした。
「最初は僕の姿が珍しいから見てるんだと思った。そして、嫌な顔をして避けてしまうんだろうって」
灰色うさぎも同じでした。多少顔立ちのいい自分を見つめていても、少ししたら自分のみすぼらしい姿に離れてしまうだろう。
それでも、灰色うさぎは白うさぎのそばにいたい気持ちがあふれて止まりませんでした。
「でも、君は違った。こんな姿の私に……気さくに接して優しくしてくれた。耳が聞こえないとか関係ない!君と過ごしていたら、心がどんどん満たされていくのを感じたんだ」
灰色うさぎも同じでした。家路に帰る白うさぎの後姿を見るたびに、何度も声をかけたくてしかたありませんでした。
「心が満たされるとね、不思議なんだ。君になにかしてあげたい。そんな気持ちでいっぱいになった」
灰色うさぎも同じでした。さっきから、うなづいてばかりです。
「だから、君の耳をよくしたい。そう決めたらいてもたってもいられず、たくさんの苦労を経験して……そしてね、本当に何度も何度も失敗したけど、やっとできたんだ」
灰色うさぎは違いました。白うさぎの為に何かしたいのに、できていない自分にいらだっています。
「ほんとは耳をよくしたら、もう会うのをやめようと思ったんだ。僕の事が耳に入るのは時間の問題だと思ったから」
白うさぎは灰色うさぎの耳をふわっと優しく撫でます。
「……できるわけないよ。僕には君にはもっとよくなって欲しかったから。例え僕が仲間から化け物って呼ばれている事を知っても。君が離れる事になっても」
灰色うさぎは首を横に振ります。ふるふるとふるえている白うさぎを抱きしめました。灰色うさぎから温かい物が流れ込んでいきます。そして、灰色うさぎは声を届けようとしました。
「あ……あ……」
うまくいきません。灰色うさぎは白うさぎをぎゅっと抱きしめながら、何度も何度も声を上げます。
灰色うさぎはうまくしゃべられませんでした。
でも、白うさぎにはよく聞こえます。
いかないでと伝わりました。
白うさぎからも涙が止まらなくなりました。
「ありがとう。ありがとう。もうどこにも行かないよ。君とずっと一緒だよ」
白うさぎはお返しとばかりに、灰色うさぎをぎゅぎゅっと抱きしめました。
それからというもの、静かだった森の外れの湖のほとりは二匹のうさぎ達のにぎやかな声が響き渡りました。
その声はどこか楽しくて温かみのある、とても優しい歌のようでした。
(了)
読んでいただいた方々
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