【超短小説】年雄と影の道

朝、年雄はコーヒーをコンビニで買い、家に帰るところだ。

コンビニを出ると、東から建物の影が長く伸びている。

よし、久しぶりにやるか。

年雄は思った。

子供の頃によくやった、影だけを踏んで家に帰る遊び。

影だけが道。

影以外は崖。

年雄が住んでいた田舎と違い、都会は影が多い。

楽勝だ。

マンションから伸びる大きな影を踏んで歩く。

交差点までは難なく歩けた。

問題は交差点。

途中までは、ガードレールの影が伸びているが、その先がジャンプしないと届かない程の幅がある。

超えられない感じはしない。

年雄は助走をつけて、影から影へ思いっきりジャンプした。

ズゼゼゼーーー!

着地と同時に、砂利がタイヤの役割をしたかのように滑った。

年雄は尻持ちをついた。

手に持っていたコーヒーは、年雄の白いTシャツが全部飲み干した。

年雄は家に帰った。

影関係なく。

浜本年雄40歳。

1人になると、自分を見つめ直す時間がある。

なんであんな事したんだろう?

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