【超短小説】年雄が見た夢

年雄が見た夢の話だ。

年雄が寝ていると、部屋の中で人の気配を感じた。

ゆっくり目を開けると、真っ赤な服を着て、真っ白な口髭を生やしたおじさんが立っていた。

年雄がビックリして起き上がろうとした時、白ヒゲのおじさんは、”静かに"というジェスチャーをした。

年雄は自分の口を手で押さえた。

白ヒゲのおじさんが「少し休ませてくれないか?」と聞いてきたので、年雄は少し考えて"どうぞ"と首を縦に振った。

白ヒゲのおじさんはソファーにドスンと座り、"ふぅ"と大きく息を吐き、分厚い手で顔を撫でた。

年雄はゆっくり起き上がり「お茶飲みます?」と聞いた。

白ヒゲのおじさんは「ありがとう」と答えた。

年雄は熱いお茶を入れ、白ヒゲのおじさんに渡した。

白ヒゲのおじさんは一口飲んで「美味しい」と感想を言った。

年雄が「大変ですね」と話しかけると「今年は特にね」と答えた。

白ヒゲのおじさんは立ち上がり「子供達が待ってるから行きます。ありがとう」と言った。

年雄は「来年もキツくなった休みに来てください」と言った。

白ヒゲのおじさんは「ありがとう。キミみたいに独身で、クリスマスになんの関係もないのに私に優しい能天気な男の家は、いい休憩所になって助かるよ。来年もまた来よう。君は大人だから、プレゼントは無いけど許してね」と言って玄関から出て行った。

夢の話。

浜本年雄40歳。

目が覚めて、最初に思ったのは、"パチンコでも行くか"だった。

メリークリスマス。

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