【超短小説】年雄とカタログ

年雄が今のテレビを買ったのは五年前だ。

通信販売で購入した。

その時から、定期的にカタログが届く。

年雄はこのカタログが大好きだ。

何が好きかというと、オールカラーのカタログだからだ。

年雄はオールカラーのカタログを見るとワクワクする。

買う気はない。

実際、テレビ以降何も買っていない。

でもワクワクする。

多分、子供の頃の記憶だと思う。

年雄が子供の頃は、親におもちゃを買ってもらう事は、ほとんど無かった。

買う時は、お年玉を貯めて買う。

誕生日やクリスマスは、欲しいおもちゃを買って貰うのではなく、役に立つ何かを買って貰った。

本やノート、勉強机・・・。

役に立ったかは謎になるが・・・。

クリスマス前になると、おもちゃのチラシがカラーで新聞に挟まっている。

コレを見るのが楽しみで仕方なかった。

買って貰えない代わりに、ずっと眺め、欲しいおもちゃをハサミで切って買った気分に浸る。

通信販売のカタログも同じ感情だ。

最新の掃除機、洗濯機、冷蔵庫。

買わないが、カタログをずっと眺める。

まさか、大人になってもワクワクするとは思ってもみなかった。

浜本年雄40歳。

大人って、いったいなんだろうね。

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