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こんな時代だからこその、本の売り方〜「オラ!スペインごはん祭 in 高円寺」をまとめてみたよ

今年の夏に、以前住んでいたスペインのごはんについての本を出版した。そして、その出版記念イベントとして、高円寺で「オラ!スペインごはん祭」を開催した。版元さんではなく、著者である私個人の主催。それは本の販促イベントというにはちょっと変わったもので、会場に来てくれた雑誌編集者の友人には、

「これ、出版記念イベントじゃなくて街おこしだよ!先進的なやり方だと思う」

と言われ、同じく会場に足を運んでくれた立体造形作家で桑沢デザイン研究所でも講師を務める森井ユカさんには、

「画期的な販促イベントの事例として、今後、授業で紹介しようと思う」

というお言葉をいただいた。

わはは、自分でも聞いたことないイベントだと思ってたけど、やっぱりそうだったのか!と思ったので、祭終了から時間はあいちゃったのだけど、もしかしたら今後誰かの参考にもなるかもしれないので、このイベントについてnoteに記録しておこうと思う。

とはいえ、このイベントは、ビックリするほどの偶然と縁が重なり、そしていろんな人や場所の協力のおかげで実現したものなので、どこまで他の人の参考になるかはよくわからない。ただ、「コロナでいろんな商売が大変な時代だからこそ、お互いがお互いの宣伝をする。同業種だけではなく、他業種と連携する」という骨子はとても大事な気がして、だからこそ書いてみることにした。

ではいきまーす!

(1)出版記念イベントが祭りになっちゃった経緯


まず私が出版した本はこちら。

コロナで海外旅行に行けない時代に、よりにもよって海外旅行本。しかも、コロナ感染者も多く、いつになったら行けるかわからないスペイン本。海外旅行ものは出版中止になったものもあるそうだから、出せただけでもありがたいとはいえ、売るにはかなり悪条件な本だ。でも、かなりの熱量でつくった本。多くの読者さんに読んでもらいたかった

そして、出版記念イベントというと出版社主催でやるイメージがあるかもしれないが、今時は出版社もそこまで余裕がないのが実情(以前だったら…みたいのは同業者からよく聞く話)。販促にガッツリ予算を取ってもらえるのは潤沢な出版社か、ベストセラー作家のみだ。そして、私は残念ながらベストセラー作家じゃない。だから自分で本を宣伝する作戦を考えようと思った。そして、ただの宣伝じゃ楽しくない。どうせなら、スペインごはんの世界をもっと知ってもらいたいし楽しんでもらいたいな、と思った。

実は、この本が出るかなり前に、高円寺の素敵ギャラリーclouds art +coffee」さんから声をかけていただいていて、出版記念の個展をやることは決定していた。


個展では、パーティやイベントすることも多いけど、小さなギャラリーの密室空間でのそれはコロナ的に気が乗らない。さらに、このコロナ禍にわざわざ電車に乗って高円寺まで来てもらって、すぐに見終わるギャラリーだけで終わりももったいない気もする。じゃあ、どういう形で個展をやるのがベストなんだろう…?

そうだ、スペイン料理についての本なんだし、高円寺のスペイン料理店オススメマップを制作して、お客さんにギャラリーのあと各自で行ってもらえばいいんじゃない?はしご酒文化のあるスペインらしく、ギャラリーからのはしご!そしたら密を避けられるし、お客さんも楽しいし、コロナで大変な飲食店も微力ながら応援できるかもしれないし…。

そんなことを考えていたタイミングで、たまたま同じ高円寺有名老舗銭湯「小杉湯がその隣に作ったシェアスペース、その名も小杉湯となりがコロナで急遽会員制になり、銭湯好きな私は速攻で会員申し込みをして、ワークスペースの一つとして利用するようになった。この小杉湯には小さなギャラリースペースもある。

ちなみに、この小杉湯となりは、実際に通ってみたら期待以上に快適で、私は自分が連載している東洋経済オンラインに「小杉湯となり最高だぜ」という記事を会員になって早々に描いてしまったほどだ。


高円寺でたまたま重なった縁。これは運命だなと勝手に思い込み、私は小杉湯の三代目オーナーである平松さんに提案をした。

「ギャラリーでの個展と同時に、小杉湯でもいっしょに何かできたりしないですかね?飲食店とか、街のいくつかのポイントをつなげる形にしたくて」

すると平松さんは、

「いーですね!!!」

と軽〜く即答した。後で知ったのだけど、この平松さんは故・ジャニー喜多川さんのごとく、「YOU、やっちゃいなよ!」が得意技な人だった。そして、小杉湯は、もともとイベントや地域連携に積極的な銭湯だった。

小杉湯オーナーの許可はあっさりもらえた。とはいえ、私ひとりじゃどうしていいかわからない。そこで、小杉湯となりスタッフさんにこんなことしたい、と提案していった。すると、小杉湯スタッフのアニーちゃんという子がノリノリで興味を持ってくれた。私は以前、演劇に少し関わっていたのだけど、アニーちゃんは役者の顔も持つ子で、そのせいか波長が合い、二人とも能天気なお祭り人間だった。だから、

「コロナで祭りがなくなって寂しいし、皆が鬱々してる。だから、パーっと頭がお花畑になるようなことしたいね。楽しんでもらいたいし、何より私たちが楽しみたいね!」

で意見が一致した。イベントの祭り化のスタートコミュニケーションが得意なアニーちゃんは、冷静沈着かつ信頼できる会社員のアッキーはじめ、小杉湯となりの会員さんやスタッフさんに働きかけをしてくれて、協力者を増やしてくれた。

そして、本当に偶然なのだけど、高円寺に住む私の呑み友達が、ほぼ同時期にスペインごはんレシピエッセイ本を出すことが判明した。ビックリした。

さらに、このイベント協力を打診していたスペイン料理シェフも、ほぼ同時期にスペイン料理レシピ本を出版することが発覚。えええ、日本で年間何冊のスペイン本が出るか知らないけど、そんな偶然ある!???

ああ、スパニッシュ神(なにそれ)は、私に高円寺でスペインイベントをやれとおっしゃってるのだな、これは運命だな、と確信した。

というわけで、これらの本の宣伝もフライヤーに入れたり、イベント各所で販売できるように手配した。ぶっちゃけると、これらの本の宣伝もすることで、彼らには予算的な便宜も多少図っていただいた。本当に助かった。

そんなかんじで祭りが具現化していった経緯については、小杉湯となり会員でグルメライターのシゲくんがインタビューとしてまとめてくれて、イベントの宣伝をガッツリしてくれた。

web版地球の歩き方では、スペイン在住の特派員・田川さんもイベントを紹介してくれた。

…というと、全て順風満帆に進んだように思われそうだけど、そんなに世の中は甘くない。コロナ禍での飲食イベントはむちゃくちゃに難しい

実際、イベント具体案は二転三転し、小杉湯内でも意見は分かれ、連絡の行き違いも起き、さらに雑務は膨大。途中、私とアニーちゃんは、あまりの現実の面倒くささにやさぐれかけた。銭湯で心と体を整えていなかったら、夜中に小杉湯の窓ガラスを壊してまわったり、バイクで走りだしだりしていたかもしれない。

でも簡単に進まないのは当たり前。このコロナ禍、イベントのプロでさえ苦労しているというのに、私はじめこの祭のメインスタッフはイベントド素人だったのだ(逆にいえば、イベント素人だからこそ、能天気に祭りにしてしまったとも言える)。

そのあたりの苦労については語るとキリがないので割愛するけど、まあそんなこんなを乗り越えて、銭湯で疲れを癒しながら、「お客さんも自分たちも楽しく、かつコロナ対策も考慮した祭り」が具現化していった。

(2)実際、どんな祭りだったの?

そんなこんなでスタートした「スペインごはん祭」。関係各所で配布してもらったフライヤーがこちらだ。表紙は、すばらしきデザイナー川名潤さんによるスペイン本装丁がとても気にいっていたので、それを改変していただき、中面は私がつくった。

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(なにげにマップの下に引かれてる地色はスペインの形。。)

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私がかつてフラメンコを習っていて、本にもフラメンコが登場することから、MAPではフランコスポットも紹介した。実は、高円寺には老舗有名フラメンコ教室老舗フラメンコ専用劇場(タブラオ)があり、なんと「日本フラメンコ協会」まである隠れスペインタウンだったのだ!(実は私もこのmap作ってはじめて気づいた。わはは)

それにしたって、私の本の販促イベントのはずが、本の宣伝がちょっとだけというこのフライヤー…。

おい、大丈夫か!これで本当に本の販促になるのか!!一回、水風呂入って頭冷やしてこい!!!

まあね、もうこの際、本なんてどうでもいい(よくない)。

とにかく、「私がお客さんだったら、どういうイベントが楽しいかな?」をいちばんに考えて設計したらこうなってしまったのだ。

祭り全体では1カ月半と長期間。イベントが大小複数あり、会場も多様で点在しているため、日によっては、ギャラリー→銭湯→スペインマルシェ→スペインバルやスペインレストラン、という「スペインくくりで、酔狂フルコース高円寺めぐり」が楽しめるというのが狙いだ。

祭りの主なイベントとしては、時系列順に紹介すると、

①小杉湯玄関でのミニ個展(1ヶ月半)

ミニ個展

せっかくミニギャラリースペースがある小杉湯。銭湯という場所にちなみ、スペイン本にもチラリと出てきたスペイン温泉のルポマンガを描き下ろして展示した。番台前では、本や私のグッズの販売もしていただいた。

ちなみに、マンガで紹介した温泉termas outarizは、日本の職人をわざわざ呼んで作った一部完全に日本風の温泉。しかも、経営者のスペイン人は、かつて日本の銭湯で修行してたことがあるそうだ。(このマンガ、いずれどこかのメディアでも出したいので興味ある方連絡ください😘)銭湯にうってつけの展示となった。


②スペイン料理店で使える「スペインチケット」の配布(1ヶ月半)

当初はオススメ料理店マップを作るだけ、の予定だったのが、小杉湯オーナー平松さんの提案により爆誕したのがこのスペインチケット

バルやスペイン料理店がオトクに楽しめるチケット(最低限使用金額を決めることで、お店のマイナスにはならないように設定
)を、私のスペイン本もしくは出版記念に作ったスペイン手ぬぐいを購入してくれた方、そして小杉関係の希望者に配布した。

協賛店は、新高円寺のガウチョさん(オーナー素敵)、高円寺のクアトロさん(ワインも豊富)、イーツマルシェさん(バルが経営するテイクアウト)、トリツカレ男(つまみもうまい立ち呑み)さん、阿佐ヶ谷のケクーさん(私の長年の行きつけ)、中野のイレーネさん(渋い本格派)。

こんなふうに「高円寺にスペインスポットがこんなにあったなんて!」と驚く声がとても多かった。住んでいる人からも、さらに、私とSNSでつながるスペイン在住者やスペイン関係の友人知人からも。確かに、高円寺ってアジアイメージのほうが強いしね。

さらに、イベント準備をするなかで、小杉湯関係者には、かつてスペインに住んでいた人がふたり、お子さんがスペインに住んでたという人がひとり、スペイン料理店で働いていた人がひとりいることも発覚。

次々つながる縁にビックリはしたけど、どこかで納得もしていた。なぜなら、人がひとつのテーマで真剣に熱量もって動けば、引き寄せは自動的に起こるものだからスピリチュアルとかじゃなくて、そういうものなのだ。

さらに、スペインチケットと共にミニミニサイズのお花も配布した。これは、花を頭につけた人が街に溢れたら能天気で楽しいなあ、というアニーちゃん発案の「頭がお花畑大作戦」だった。こんなかんじでお客さんたちはつけてくれた。

お花畑


③ギャラリーでの個展(1週間)

そして、このスペイン祭りのきっかけともいえる、「clouds art +coffee」さんでの個展。バーカウンターや屋外席もある店だから、作品展示をみながらピンチョスがつまめると、バル気分が楽しめていいなあと思い、毎日、数種類のピンチョスとバスクチーズケーキを用意した。コロナで本国に帰れなくなってるスペインの方も何人か足を運んでくれた。こんなかんじ。

ピンチョスとバスクチーズケーキの提供は協賛店の一つでもある、新高円寺のスペインバル・ガウチョさんにお願いした。ガウチョさんはこの期間、ギャラリーと自分のお店の両方をいったりきたりしながら奮闘してくれた。

ちなみに、個展というと友人知人が手土産を持ってくることが多いけど、今回は事前にSNSで「手土産は謹んで遠慮いたします。会場で本やグッズを買ったり、そして何より飲食店や銭湯でお金を使ってくれると嬉しいからです」とストレートにお願いした。街にお金を落とすのが街イベントの正しいやり方だと思ったからだ。


④小杉湯の「スペイン風呂」(2日間。朝〜深夜)

銭湯がスペインイベントでやることいえば、スペイン風呂しかない。

…って、なんだスペイン風呂って!!

小杉湯では元々、多様な業者の廃棄物などを利用したもったいない風呂という取り組みをやっているのだけど、スペイン風呂もその仕組みでできないかということで、協賛店のひとつである中野イレーネさんで知り合ったワイン輸入業者「ミリオン商事」の南さんと小杉湯オーナーをつなげた。

ちなみにこのたまたま知り合った南さん、たまたま小杉湯の常連で、彼もかつて演劇をやっていた人だった(ほーら、またつながった)。

結局、コロナで売れ残ってしまったワインを小杉湯さんが安く買い取る方向でスペインワイン風呂が開催された。こんなかんじ。

スペイン風呂、風呂の予定表で浮きすぎている笑。そしてさらに…


⑤小杉湯となりで「スペイン食堂」&「スペインマルシェ」(半日)

せっかくだから、小杉湯となりでもスペインイベントをしようという企画。

そして、スペインイベントといえば大鍋パエリアドーン!!


それを縁側マルシェでやりたいと思って計画を進めてきたけど、路上パエリア調理はコロナ的に断念路上飲食も泣く泣く断念。仕方なし。

結局、屋内で飲食できるのは小杉湯関係者のみ(スペイン食堂。予約制)、屋外はテイクアウト販売のみ(スペインマルシェ)という二部制に。感染リスクが高い食べ方呑み方は、身元や連絡先のわかる関係者だけに留めようという小杉湯側から提案されたコロナ対策だ。

パエリアはこんなかんじで屋内で調理していただいた。シェフはパエリアイベントのベテラン、虎ノ門エル・トラゴンの栗原シェフ。じゃあ、実際にどんなパエリアをつくっていただいたかというと…。

パエリアその1。本場バレンシア名物の肉パエリア!ウサギ肉&鶏肉。

パエリアその2。シーフードパエリアの上に食材でデコったデコパエリア。(食べる前に混ぜる)。デザインは私が作り、小杉湯となりの器用軍団、吉田さん&ハトちゃんコンビニ手伝ってもらって制作。

この心躍るハデさよ!!!!!!!

この瞬間に、湯を沸かすほどに熱く、高円寺と小杉湯のスペイン濃度がぐぐっとあがったよね。路上で立ち呑みできない祭りなんて祭りじゃないやいとすねてた私(お前はいくつだ)の心も一気に晴れたよね。

とはいえ、前述したように、これを生で見て楽しめるのは、室内に入れる小杉湯関係者のみ。一般のお客さんは小分けにしたちんまりパエリアしか見れない。いくらコロナ禍とはいえそんなの楽しくないし、大鍋ビジュアルが見れないパエリアなんて、テイクアウト販売しても売れなそう…。

というわけで、オンライン生中継。栗原シェフは日本パエリア協会発起人でもあるので、そのyoutubeチャンネルを使わせていただいた。

二転三転するなかで、アッキーが発案してくれたこのオンライン中継。セッティングや司会進行を担当してくれたのが小杉湯となり会員で薬膳講師の洋美ちゃん。普段のオンラインレッスンのノウハウをいろいろ活かし、音声トラブルはあったとはいえ(視聴者関係者の皆さんすいません!)その司会ぶりはシェフも褒めちぎっていた。

さらにパエリアのあまりのビジュアルインパクトに小杉湯関係者はSNSで拡散しまくり、その結果、パエリアは即ソールドアウト。

さらにドリンクは、西麻布のスペイン料理店フェルミンチョのソムリエールであり、ベネンシアドーラ(シェリーを注ぐ専門家)の作元さんがシェリーを、そのほかのドリンクはサクリスティアの堀池さんが担当。

ちなみに、栗原シェフは国際パエリアコンクール入賞の実力派だし、作元さんはコンクール最優秀のベネンシアドーラだ。どうしちゃったのっていうくらいの本格派だ。

ちなみにフラメンコ衣装(スペインでオーダーメイドでつくった私の私物)を着てるのは、マスコットガールに変身したアニーちゃん。彼女には予想以上に苦労をかけてしまったので、当日のかわいい晴れ姿を見れて本当に嬉しかった。こんなスペインマルシェや、他会場の様子を、一般のお客さんや小杉湯となりの会員さんがSNS発信してくれたのはこちら。

上のコメント通り、実はスペインマルシェは装飾まで凝っていた。たった数時間のイベントなのになんでそうなったかと言えば、小杉湯となり会員に、なんでも作れるハトちゃんというすごい人がいたからだ。ハトちゃんもまた演劇をやってる人で、アニーちゃんといい、どうして演劇人は一瞬の祭のためにこんなに力を注いでしまう、愛すべき非合理的生物なのだと感心した。装飾の一部はこんな感じ。

ちなみに、装飾を本に絡めるアイデアを出してくれたのはアニーちゃん。私が本の宣伝よりも祭りづくりに没頭していったので、「このイベントがちゃんと本の宣伝につながるように」と、著者本人が忘れかけてたことを(コラ)考えてくれたのだ。

こんな数々のイベントを一ヶ月半の間にやっていった。結果、コロナクラスターも発生せず、平和的に祭りは終わった。

(3)結局、イベントの効果は?問題点は?

イベント紹介がずいぶん長くなってしまった。

でも、これを読んでいる皆さんがいちばん気になるのは、イベントの具体的な成果だと思う。順にあげていこう。

①一番多くのイベントが重なった日はかなりの来客があり、ギャラリーのピンチョスもチーズケーキも即完売、マルシェのパエリアも即完売した。

②スペイン風呂の日、小杉湯はコロナ禍に入ってからの最高来客数を達成(朝から深夜までで、一日900人とか)。もともとかなりの人気銭湯だけど、万全なコロナ対策を頑張っていても、お客さんは減っていたそう。

③ガッツリイベントに貢献してくれた新高円寺のバル、ガウチョさんは、祭り期間中にお店が今年最高売り上げを達成。スペインチケットなどによる来客効果で、そのうちの何人かはその後も常連客として定着

予想以上の、嬉しい成果だった。特に②③は、本当に嬉しかった。

同じ街にかかわるコミックエッセイスト(私)、ギャラリー、銭湯、シェアスペース、飲食店という多業種がタッグを組んだからこそ、同じ業種だけじゃヒットしない人にまでそれぞれの宣伝が届いた、その成果だと感じた。

そのほかにも、ギャラリーのオーナーさんや協賛店、協力店、フラメンコ教室の先生などからは、

久々に祭の雰囲気が味わえて楽しかった。こんなご時世だけどやっぱりこういうイベントはいいなと。ご来場いただいた方も楽しそうで嬉しかった」
「高円寺にこんなにスペインスポットがあるという認知があがり、それぞれの宣伝になったと思う」
「コロナで大変だったけど、そんな中でこんなイベントを計画するという姿勢に、元気をもらった
「自分自身のスペイン料理に取り組む意識があがった
スペイン好きが増えるかもしれない
小杉湯となりの雰囲気や人が良かった
「ハラユキさんの読者さんが店に来てくれた」

などの感想をいただき、小杉湯となり会員や一般のお客さんからは、

「高円寺の再発見になった」
「スペイン料理を初めて食べた」
「おいしいお店を知れてよかった」
「素敵なギャラリーを知れてよかった」
「ずっと行ってみたかった小杉湯に初めて行くきっかけになった」
「マップを見るだけで気分があがった」
「高円寺の街めぐりが楽しかった」
「久々の祭りのムードが楽しかった」


など、とにかく「楽しかった」と言う感想が多かった。ほっ、よかったよ〜!中には、小杉湯となりスタッフさんのこんな感想もあった。

準備中には、予想してた以上にお手数おかけして申し訳ないな、とずっと思っていたので、こういう感想をいただけたのは嬉しかったなあ…。

そう、コロナ禍で大変なのは皆一緒。だからこそ、お互いに宣伝したり、協力しあうと、それぞれが本当にやりたいことにつながることもある

もともと私は、これだけ人と場所を巻き込んで、自分だけの宣伝だけで終わるつもりは全くなかった。関わってくれたからには、関係者全員幸せにしたかったし、関係各所の全ての宣伝につながるようにしたかった。小杉湯や小杉湯となりの今後にとっても意味あるものにしたかった。でないと、やる意味はないと思っていた。そしてそれは、少しは達成されたと感じられた。

ただ、反省点も山ほどあった。イベントスケジュールのせいでギャラリーの集客が偏ってしまい、一番イベントが多かった日には、ピンチョスやパエリアを売切れで食べられなかったお客さんが大勢いた。スペイン料理店が夜から営業のお店が多いと言うこともあり、はしごがうまくいかないパターンもあった。スペインチケットやオンライン中継や装飾なども最大限の活用はできなくて、協賛店によっては集客効果は少なかった。そのほか、慣れないイベント運営で、お客さんにはいろんなご不便をおかけしたと思う。そのあたりは申し訳ない気持ちでいっぱいだ

そして、個人的な反省点としては、

「祭りとしては盛り上がったし、楽しかったけど……私の本やグッズはものすごい数が売れたわけじゃないし(実はいちばんのメインイベント日に本を早々に品切れさせるという致命的ミスもした)、もしかして、肝心の本の販促イベントとしては失敗だったんじゃ…?

というところだった。

え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!

そういえば、夫からは、「君、個展とかそんなに慣れてないから、得意で好きなことに寄せていったら、祭りになっちゃったんだね」と言われたけど、そのとおりなのかもしれない。結局、私ってただの祭りバカなのっ!?

そんなふうに思っていたら、

イベント直後くらいに、スペイン本の重版のお知らせが届いた。

このコロナ禍での海外旅行本の重版

あ、これって祭の効果もちょっとはあった?あったってことだよね〜〜〜〜〜〜???あったってことだよね〜〜〜〜〜〜???

ほっと胸を撫で下ろしたのであった。


(4)祭りは終わっても、縁は残る

街イベントは仕込みがものすごく大変な分、お店や関係者と濃い繋がりができる。もともと私はごはん本を出版するくらい飲食店を愛しているので、そこはとても嬉しかった。特に、イベントにガッツリ協力していただいたガウチョさんでは、イベント後も本やグッズを販売していただいている。

そして、私はこのイベントをやったことで、飲食店のいろんなことを学んだ。もともと私は飲食店が大好きで、東洋経済連載では居酒屋のコロナ対策についても描いたし、飲食店の現状や苦労もわかっているつもりでいた。

でも、全然わかってなかったんだ

今回のイベントでは、ピンチョスやケーキやパエリアの提供数を自分で決めて、それが日によって売れ残ったり売り切れたりということを体験した。赤字になった分の経費や売れ残りは私が責任を持つ形でやってみたので、賞味期限がそれなりに長いイラストマンガ業では味わえないドキドキハラハラワールドだった。

ああ、飲食店はこんなリスクの高い、心臓に悪いことを日々やりつつ、楽しい時間を提供してくれているんだ…!しかもコロナ禍で!

頭でわかっていたのと、実際に体験するのは全く違うことだった。だから、愛する飲食業界へのリスペクトと感謝がさらに高まったし、今後も私のできる範囲で飲食店を応援していこうと、あらためて決意した。

さらに、このイベントをやったことで、いろんな才能ある人とつながったのも嬉しいことだった。イベントでは、必ず人と人の化学反応が起きる。このイベントで販売していた出版記念スペイン手ぬぐいは、クリエイターの手によって、新たなグッズへと変身した。

ハトちゃんによるスペインマスク。マルシェでも販売したけど、評判良かったので、正式に商品化し、今は私のweb shopで販売中。

刺繍の得意なママ友によるオーナメント。こちらもweb shopで販売中。

そういえば、少し前には、協賛店のいくつかにスペイン祭スタッフと呑みに行った。手みやげは小杉湯の入浴剤

地域の祭りの手土産は、地域のもので。それがこの祭りらしいやり方だよなあ、とカウンターで呑みつつ思った。輪がつながった感じがした。

さて、長々と書いて来たけど、そろそろまとめ。

もともと、本も飲食店も銭湯もギャラリーもシェアスペースも、すべて生活に豊かさを提供するものだ。でも、それでちゃんと売り上げを出すというのは本当に地道で大変なこと。自分だけでせっせと宣伝していても、限度がある。それは私がフリーランスを長くやって学んだことだ。

だからこのイベントでは、多種多様な関係各所がお互いに宣伝をしあうような仕組みを目指し、私は、率先して関係各所や人の宣伝をしまくった。自分の宣伝もする、そして自分が愛する人や場所の宣伝もする。

そう、大事なのは、愛するもので、宣伝の輪を作ること。

なぜなら、愛のない宣伝は義務的になり、その魅力も伝わらず、発信にいずれ疲れてしまうから。時間と手間がアホほどかかるイベントなんてバカバカしくてやってられないから。私がこのスペインイベントをなんだかんだで楽しくやれたのは、スペイン文化と飲食店と銭湯が心から好きだからだ。

そして、もうすでにお気づきかと思うが、このイベントまとめのnoteも、スペイン祭の一部だ。こまごまとリンクを張ったのは、関係各所への心からのお礼と、微力ながらの応援。そしてもちろん、私の仕事の宣伝も兼ねている。高円寺でつくった小さな輪を大きな輪にするために、このnoteをせっせと書いてみた。

それにしても、こうやって書いてあらためて思ったけど、一冊の本をキーワードとして街のあちこちを結ぶというやり方は、街イベントとしても出版イベントとしても、まだまだ可能性をひめているのではないだろうか。私よりもっと賢い人がやれば、もっと成果を出せる気もする。著者のみなさん、よかったら、ぜひマネしてみてね!(こんな面倒なことやるのお前だけだよ!という声が聞こえた気がしたけど笑)。

年を超す前に、やっとスペイン祭が終わって、ほっとした気分です。

関係者の皆様、本当に本当にありがとう!イベント関連のことで相談に乗ってくれたバレンシアの盛さんにも心からの感謝を。

また機会があれば、楽しいこといっしょにしましょう。

(↑実はひっそりと次の「お互い宣伝」システムを展開中の私…。わはは。詳しくはインスタ見てね。特に飲食店の方!)

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