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生産者と銭湯をつなぐ"もったいない風呂"

小杉湯では"もったいない風呂"という取り組みを2017年より続けています。
もったいない風呂とは、形が悪いなどで品質としては問題がなくとも廃棄せざるを得ない"もったいない"ものを、小杉湯のお風呂にいれて生産者さんと共存していく取り組みです。これまで、全国各地の生産者さんや小売店の方々と共に、シークヮーサー風呂から日本酒風呂まであらゆるもったいない風呂を実施してきました。

もったいない風呂が始まったのは"風流風呂"という企画から。
もともと、お風呂に入ることは「みそぎ」の意味合いがあり、江戸時代には香りの強い植物で邪気を払う薬湯が広がっていたそうです。冬至の日の柚子湯や、子供の日の菖蒲湯がその一つですね。小杉湯ではこの風流風呂を月に一度行い、季節に合わせた果物を八百屋さんで購入してお風呂に浮かべていました。

ポスターりんご湯

ポスター

新鮮な果物の香りや季節感を感じられると、お客さまから嬉しい感想を沢山いただきましたが、毎月果物を購入するのは正直コストがかかるのと、何より食ベるために売られている果物をお風呂に入れるのはもったいない…と違和感を感じるようになりました。お客さまの喜ぶ顔がもっとみたい、けどこのやり方で良いのかな…と風流風呂について考えあぐねていた頃、知人のツテで知り合ったのが徳島にあるみかん農家さんの「あおとくる」さんでした。あおとくるを営むご夫婦は、徳島に移住する以前は高円寺の風呂なしアパートに住んでいて、小杉湯に足繁く通っていたそうです。小杉湯ファンとしてぜひコラボがしたい!と仰ってくださり、それなら形が悪く販売できないみかんがもったいないからお風呂に入れようということになりました。

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いただいたみかんはちょっと形が悪いだけで新鮮そのもの!普通に食べられちゃいます。そのみかんをカットし、洗濯ネットに入れてお風呂に浮かべます。浴室にはあおとくるさんを紹介するPOPを掲示しました。また、番台前ではみかんの販売も。

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「良い香りがするね」「なんだかお風呂上がりの肌がしっとりしてるみたい」などお客さまから大好評で、販売分のみかんもあっという間に完売しました。通い続けていた小杉湯でコラボできたこと、みかんが完売したことを、あおとくるさんはとても喜んでくださいました。
その時の想いなど、あおとくるさんがブログでまとめてくださったのでこちらもぜひお読みください。



その気持ちを伺ったとき、みかん風呂が実現できた嬉しさはもちろんのこと、お風呂を通じて遠くの生産者さんとつながれたことに純粋に感動しました。まさか、小杉湯を舞台に遠くにいる方と繋がることができるとは思いも寄らなかったので、小杉湯という場の強さを改めて噛み締めました。お風呂を通じて遠くの生産者さんとも繋がれること、生産物のロスに貢献できること、ストーリーのある特別なお風呂を作れることなど、この取り組みにあらゆる可能性を感じ、ここから「もったいない風呂」をスタートさせていきました。

それからは、知人のツテやSNSでの呼びかけを通じて、「もったいない風呂」を広げてまいりました。もったいない風呂の基本的な取り組みは下記の通りです。

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生産者さんや小売店の方々からもったいない物を提供いただく代わりに、小杉湯ではPOPで生産者さんを紹介するほか、番台前にて物販を行います。
これまで行ってきたもったいない風呂の事例をいくつか紹介させていただきます。


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酒かす風呂 

130年以上続く老舗酒蔵「宝山酒造」さんから、酒粕を提供いただきました。昔は酒粕を使った料理も盛んでしたが近年はあまり利用されず、余った酒粕を廃棄しなければならないこともあるとのこと。美肌に効く酒粕風呂は大好評でした。

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2019年3月には、小杉湯スタッフが新潟を訪問。酒蔵見学し、杜氏の方から伺ったお話を浴室POPにまとめて紹介しました。番台前では、日本酒の試飲も。

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ワイン風呂 

ワイン輸入商社さんから、輸送の際に瓶に傷が入ったなどの"ワケアリ"ワインを提供いただきました。
2日間で50本を浴槽に入れ、美肌効果のあるワイン風呂としました。

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浴室POPでは、ワインがどのようにつくられるのかや、商社の仕事を紹介。
番台前では、湯上りにぴったりのスパークリングワインなどおすすめのお酒をグラスで販売しました。

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米ぬか/道南杉の湯 (SPICE×小杉湯)

東京で働きながら、故郷・北海道函館市を含む道南エリアの情報と魅力を伝えている「SPICE」さんとのコラボ風呂。
道南の“もったいない”=循環の例として「米ぬか」「道南杉の間伐材」の仕組みを紹介しながら、自然と人、人と生き物の豊かな関係を持つ、地域の良さを発信する湯となりました。

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湯上りには、SPICEさんプロデュースの函館真昆布を使ったクラフトビールも販売。

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もったいない風呂からの展開

さらに、もったいない風呂は小杉湯だけにはとどまらず、小杉湯となりや、銭湯ぐらしと連携した取り組みも行いました。

小杉湯となりとの連携

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小杉湯となりは、2020年3月に小杉湯の隣にオープンした建物です。銭湯が街のお風呂であるように、街に開かれたもう一つの家のような場所です。
いつもより大きな風呂に入ったあとに、手づくりのご飯を食べたり、仕事をした後にくつろいだり。自分の家に大きな台所や書斎がなくても、ここに来れば、くらしの余白を感じられる場所を目指しています。
新型コロナウイルスの影響を受け、現在は会員制の「銭湯つきセカンドハウス」として営業を続けています。

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小杉湯となりでは、熊本の果実農家「ハナウタカジツ」さんの果実を使ったサワーをお出ししています。このサワーを作る際に出る大量の皮を小杉湯側で乾燥させ、それをお風呂に入れるというもったいない風呂を実施しました。このように、小杉湯を飛び出して小杉湯となりと連携したもったいない風呂も展開しています。

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おうちでもったいない風呂

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2020年5月、小杉湯となりを営む銭湯ぐらしがオンラインショップ【銭湯のあるくらし便】をオープンしました。新型コロナウイルスの影響を受け、小杉湯となりが通常営業を行えなくなったことから「小杉湯となりを通して体験してほしかった時間を、この場所に来られない方にも届けたい」という想いでこの取り組みを始めました。お風呂あがりのひとときを楽しんで欲しいということで、以前もったいない風呂に入れた"もったいないもの"を小分けにした入浴グッズをくらし便で取り扱っています。肌当たりを柔らかくした「米ぬか風呂」や、イタリアの農園で大切に育てられた香りのよい「ハーブ風呂」など、心も体もほぐれるようなとっておきのお風呂もとは、複数回ご購入くださったり、ギフトに選んでくださったりとたくさんの方に愛される人気商品になっています。

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生産者さんとの出会いから偶然始まったもったいない風呂。4年間続けてまいりましたが、お客さまからの嬉しい言葉を聞いたり、SNSを通して生産者さんが喜んでくださっているのを見るたび、続けてきて良かったなあと改めて感じています。生産物のロスに貢献できたこと。ここにしかないお風呂を作れたこと。もったいないを抱えた生産者さんと出会えたこと。もったいない風呂を続けてきたことは 色んな価値を生みましたが、何より大きかったのは、顔が見えるお風呂を実現できたことではないかと思います。

私たちは小杉湯を、どんな人でも思い思いの過ごし方ができる場として捉えています。誰でも入れて、どんな過ごし方をしてもいい。例えるなら、公園のような環境かもしれません。小杉湯は誰にとっても心温まる場であってほしい。そう考えると、小杉湯で使っているものが顔が見える状態であることが、安心感やホッとできるひと時に繋がるんじゃないかと思います。誰が作って、どんな想いで入れたのか。それが見えるだけで、お風呂に対する愛着がグッと強くなって、それが心温まる場になるのだと考えています。小杉湯という場をさらによくするためにも、もったいない風呂はとても意味のある試みであると感じています。

今後とももったいない風呂を続け、沢山のもったいないを抱えた生産者さんとコラボレーションを実現していきたいと思っています。
最後に、もったいない風呂に興味をお持ちになった生産者さんや、小売店の方々むけに作成した資料を付記させていただきます。

こちらの記事と資料をご覧になってピンときた方は、ぜひ< info@kosugiyu.co.jp>までご連絡を頂けますと幸いです。ご相談の段階でも大丈夫ですので、どうぞお気軽にご連絡くださいませ。
もったいない生産者さんの方々にお会いできることを、楽しみにしております。

小杉湯



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