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ベートーヴェンを毎日聴く121(2020年4月30日)


『ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ 第27番 ホ短調 op.90』を聴いた。

「告別」から4年ほどのブランクを経て作られたピアノ・ソナタは2つの楽章のみの作品だが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタにおいて大きな節目のような作品に思う。

「告別」で顔をのぞかせた、今までのピアノ・ソナタとは異なる雰囲気を少し前に戻すものの、やはりこれまでとは異なるのだ、というニュアンスを醸し出す。そしてこの後登場する、後期作品の最初の作品とも呼ばれる第28番、「ハンマークラヴィーア」、そして最後の3つの作品。その橋渡しとも言えるような作品。

正直、あまり聴く機会は無かった作品。でも、最初から順番に聴いてくると、ポイントになる作品と思えて、よく聴く作品になった。

第1楽章には「速く、そして終始感情と表情をもって」と書かれる。「感情」とはどのような感情なのだろうか。ひとつの楽章の中にさまざまな感情が現れるような気がするし、聴くたびに以前感じた感情とは異なるものが感じられたりする。

戦争は終わったものの、大きなダメージを残し、ウィーン会議が開かれるものの、大きな解決にはならず、不滅の恋人との破局。もちろん酷くなる難聴。様々な思いが重ねられていただろう。

第2楽章は「速すぎず、十分に歌うように」と書かれる。第1楽章とは全く逆の表現をさせようとするのである。主題の旋律で歌曲を作るとすれば、ロマンティックな詩が合うのではないか、と思うが。

2つの異なる楽章の対比、落差を感じながら、ベートーヴェンは何を表現しているのか、想像しながら聴くのは面白い。

ベートーヴェン/ピアノ・ソナタ第27番 ホ短調 op.90
(ピアノ)ゾルターン・コチシュ

(記:2020年12月30日)

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