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ベートーヴェンを毎日聴く260(2020年9月16日)

『ベートーヴェン/バガテル「エリーゼのために」WoO59』を聴いた。

ベートーヴェン作品の中では、よく知られた有名な作品。なので何も書かなくてもいいのではないか。

よく知られた作品とはいえ、「エリーゼ」はいったい誰なのか。ピアノを弾く方なら一度は弾いたことがあるだろうこの作品。「エリーゼ」について、正解を知っている方はいないであろう。

正解は「わからない」のである。ベートーヴェンの周辺に「エリーゼ」という名前の人物は恐らく存在しなかったという。

この作品の自筆譜はベートーヴェンの死後、ルートヴィッヒ・ノール(偶然「ルートヴィッヒ」が共通するが)という研究家によって発見され、「エリーゼのために」と題されて出版された。しかし、ノールが見た自筆譜はその後行方不明になってしまう。なんということか。でも彼が「エリーゼのために」と題名を付けて出版したのだから、失われた自筆譜にもタイトルが書かれていた可能性がある。

しかし先に書いたように「エリーゼ」はいない。そこで登場するのが、この作品が作られた時にベートーヴェンがお熱を上げていた女性「テレーゼ・フォン・マルファッティ」である。

ノールは「テレーゼ」を「エリーゼ」と読み間違えたのだろうか。それにしては単純すぎる間違いで、研究家としてはちょっとね、と思ってしまう。またこれは私の勝手な想像だが、そもそも題名が付いていなくて、ノールが勝手に、例えば自分が好意を抱いていた女性が「エリーゼ」という名前で、その名前を作為的に付けてしまって出版していたとしたら、これは大問題である。

正解は「わからない」。いろいろと想像しながらこの作品を聴いてみたい。

哀しみが覆い切なくゆったり響くピアノは、自分の心の内面を漂うよう。ふいにキラキラ光が差し込む明るさを取り戻したかと思うと、また再び哀しみに。そして内面に抑え込まれていた感情が高まろうとする。それが突き抜けるのか、と思うと、スッと後に下がっていく。そして再び哀しみに。

やはりベートーヴェンは、愛する人「テレーゼ」のことを思いながら、この作品を書いたのではないかと思うのである。

皆さんはどう思いながら聴くのだろうか。





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