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ベートーヴェンを毎日聴く198(2020年7月16日)

『ベートーヴェン/「嘆き」WoO113』を聴いた。

若きベートーヴェンが作曲した作品の中でも、高い表現力により胸を打つものである。

「嘆き」というタイトルとは裏腹にゆったりだが穏やかな長調で始まる。静かな夜である。"月が銀色の光を微笑むように私に投げかけている"様子をうまく表現した音楽。

でもしばらくすると曲は短調に転じる。
"若い私は窓辺で月の光を受けているが頬は青白く目は涙で濡れている”
月の微笑むような銀色の光に対する主人公の私の気持ち。

そして最後の節。"月よ、親愛なる私の友よ。もうすぐあなたの銀色の光は石の上に、若い私の遺灰を入れた石の上に降り注ぐだろう"
と何とも切ない幕切れで終わる。歌が終わった後の長いピアノの後奏が、若くして死するという無念さを引きずるような雰囲気を醸し出す。

詩の主人公である若い私。若いベートーヴェンはこの私に共感するものがあったのだろうか。ベートーヴェンはこれからボンを出てウィーンへ出て大活躍。有望な前途が待っている。そして難聴に悩ませられるもまだ先のことであるが。

光 东によるPixabayからの画像

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