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ベートーヴェンを毎日聴く303(2020年10月29日)

『ベートーヴェン/「星空の下の夕べの歌」Woo150』を聴いた。

ベートーヴェンの歌曲作品の中でも、ドラマティックで感動的な作品。彼の表現がストレートに現れているものであり、情景が浮かぶようなものである。

静かな開始からあからさまな感情を表に出すような頂点へと高まり、そしてまた再び静かになっていく。

詩は8つのスタンザが2つ組み合わさっている。最初の1組は

太陽が沈むと月がそっと手招きするように夜は更けていく。
星がきれいに輝き千の太陽の光が揺れるとき、魂が揺さぶられるのだ。
埃から解き放たれた大きな風になることを。

夜の静かな情景のなかに身を置く主人公。でもその人物は情景とは正反対の、燃え立つような決意を内に秘めている。そんな表現を見事に表している。

2組目も音楽が高まるが、3組目になると

地上の嵐が激しくても、偽りの運勢で邪悪な者が報れても
願わくば、魂は天へと向いてくれますように
星たちは正義が鎮座する場所へ
これ以上恐怖に苦しめられることなく
どんな権力にも命令されず
清々しい顔をしながら
魂は天の光に向かって昇っていくのだ。

という詩になり、音楽もピークにまで高まる。

ベートーヴェンが抱いているような思いにピッタリと合うような部分ではないだろうか。

あの世から迎えが来る。地上での旅も終わるだろう。神の玉座の下で、苦しみは報酬となるだろう。

最後はこのように静かに締めくくられる。星空の下、天に昇っていくような雰囲気を醸し出す部分は感動的でもある。

詩はハインリッヒ・ゲーブルという人物が作ったようだが、彼に関してはっきりとした情報が判らないようだ。

静かにじっくり聴きたい作品である。


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