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【23/24】FCバルセロナ私的通信簿【選手名鑑】

今年もあります私的通信簿。前回は23年の冬らしいですね。これまでは記事を分けることで読みやすい字数に収めてきましたが、弊害として全選手書き終わるまでに2か月かかっています。恐ろしいことですよね。

今年はその反省を生かして全員一気にやります。当然文字数は増えます。15000字くらいあるらしい。目次を置いておくので、よきところから読んでくださるのも大歓迎です。


シーズン振り返り

22/23

まずはおさらいから始めましょう。昨シーズンのバルサはこんな感じでした。画像をどん。

22/23保持
22/23非保持

433が基本システムと言いつつ、325と442を行き来するような形に落ち着いたチャビバルサ。肝はガビが2人分の守備タスクをこなすことと、右サイドの2人が対面の選手を上回ること。ブスケツは結局なくてはならない存在のままで、デ・ヨングはその周囲を好き勝手に動くことで相手に混乱を引き起こしていました。

しかしチームの心臓たるブスケツ、チャビがエース候補としていたデンべレは揃ってチームを去ることになります。3年目もチームを作り直すことになったチャビの心境はいかに。

移籍

【退団選手】
Ousmane Dembélé →PSG
Franck Kessié →アル・アハリ
Sergio Busquets →インテル・マイアミ
Jordi Alba →インテル・マイアミ
Gerard Piqué 引退
Pablo Torre →ジローナ(ローン)
Eric García →ジローナ(ローン)
Ansu Fati →ブライトン(ローン)

【加入選手】
İlkay Gündoğan ←マンチェスター・シティ
Oriol Romeu ←ジローナ
Iñigo Martínez ←アスレティック・ビルバオ
João Félix ←アトレティコ・マドリー(ローン)
João Cancelo ←マンチェスター・シティ(ローン)
Fermín López ←リナーレス(ローンから復帰)
Lamine Yamal ←カンテラから昇格
Vitor Roque ←アトレチコ・パラナエンセ(冬加入)
Pau Cubarsí ←カンテラから昇格(冬合流)

https://www.transfermarkt.jp/fcbaruserona/transfers/verein/131/plus/?saison_id=2023&pos=&detailpos=&w_s=  

戦力変動はこんな感じ。なぜか右のWGは補強せず、ハフィーニャのバックアップは当時15歳のラミン・ヤマルに全ベットしてシーズンを始めることになりました。

ちなみにフェリックス、カンセロのクセつよジョアンコンビが合流するのはラ・リーガ第4節からで、チャビはペップ、シメオネという両極端な名将から見放された2人をプレシーズンなしでフィットさせる難題に挑戦することになります。

23/24

23/24保持(前半)
23/24非保持(前半)

ということでシーズン序盤は布陣をこねくりまわしたチャビ。ロメウはフィットせず、ペドリ、デ・ヨング、セルジロベルトが順繰りに怪我をしたことでガビがフル回転することになりました。ジョアン×2を起用することで順当に堅守が綻びたのも含めて、編成の歪みによる負担を19歳が引き受けた形になったことは本当に反省してほしいですね。スペイン代表にはもう期待するだけ無駄なんで。

結局バルデの長期離脱もあってカンセロは左に回り、クンデがSBに復帰。これである程度WGの守備をカバーできるようになった右サイドにはラミン・ヤマルが台頭し、逆に左のフェリックスは出場機会を減らしていくことに。ジョアン×2を縦に並べるのは流石に無理があったのでね。

デ・ヨングがいるときはギュンドアンがトップ下
23/24非保持

12月にイニゴ・マルティネスとマルコス・アロンソが負傷したことでDFラインの選手が4人だけになったりもしたんですが、そこで抜擢された16歳のCBパウ・クバルシが大活躍。おかげでクリステンセンを中盤に回せるようになり、今シーズンの最適解ともいえる形が完成したのでした。でも、そこからクバルシがほぼフル出場したのは流石にどうかと思います。

プレータイム

縦軸が全コンペティション通した出場時間、横軸がシーズン終了時の年齢

最終的にギュンドアンとクンデの2人が4000分越えと酷使され、レヴァンドフスキも3800分の出場。クンデはともかく、33歳と35歳への仕打ちとは思えません。ヤマルが2955分出てたり、1月から起用され始めたクバルシが半シーズンで1925分のロケットスタートをかましてたりと若手にも優しくないシーズンでした。


選手別レビュー

さて、今シーズンの足取りがなんとなく掴めたところで本題に入りましょう。ここからは独断と偏見のみでお送りする選手別レビューとなります。異論感想その他もろもろあれば、こちらの質問箱にでも送ってもらえると助かります。もちろんツイートへのリプライ、DMも大歓迎です。

GK

#1 Marc-André ter Stegen マルク=アンドレ・テア・シュテーゲン

32歳/ドイツ/187cm/3240分/37失点

言わずと知れた不動の守護神。刷新が進むスカッドではかなりの古株で、腕章を巻く試合もかなり多かった。だからこそ、背中の負傷で2か月以上も離脱したことは痛恨。

今シーズンも1対1には非常に強く、彼のおかげで落とさなかった試合はいくつもある。一方で、ベリンガムのアレやヴィティーニャのアレなど、無理筋のミドルシュートが順当に決まってしまう印象は拭いきれない。代表で競うノイアーや、ライバルチームにいるクルトワと比べると理不尽さはうっすら足りないのかもしれない。

とはいえ、世界最高ではなくともトップレベルのGKであることに疑いの余地はない。SBへのロブパスを両足で遜色なく蹴り、それを嫌って広がった中央にグラウンダーで楔を刺すなどボール扱いはお手の物である。詰まった時はとりあえず下げて任せておけば何とかしてくれる。たまに相手にパスするときもあるが、だいたい自分でストップして事なきを得ている。

ボールを手で持っているときはなぜか焦りがちで、押し込まれているタイミングでも無理な速攻を狙ってロストしたりする。どっちにしろ彼に判断を丸投げしているのが原因なので、きっちり保持の形に組み込んだ完全体テア・シュテーゲンを見てみたいものである。



#13 Iñaki Peña イニャキ・ペーニャ

25歳/スペイン/184cm/1560分/17失点

正守護神の負傷に伴い、そこそこの出場時間を得ることに成功した25歳。もうちょい若いのかと思ってました。フェリックスより年上なんだね。

パフォーマンスとしては地道に堅実に。アトレティコ戦でのFKストップなど印象的なセーブもありつつも、無難に仕事をこなしたと言っていいだろう。

しかしそれは「セカンドGKとして見れば」という話で、ここの序列を覆すようなインパクトを残すことはできなかった。身長が高くなく線も細いため、空中戦では苦戦するシーンがちょこちょこ。ずっと騒いでるタイプでもないようで、お互いどフリーの状態でアラウホと交錯して失点したりもしている。

あとはキックの技術もテア・シュテーゲンと比べると大きく見劣りするのがつらい。国内カップ戦も全部優勝を狙っていく方針も相まって、大きくプレータイムを伸ばす想像はあまりできないのが現実である。20代も後半に差し掛かる中で、そろそろキャリアを考え直すときが来ているのかもしれない。



DF

#4 Ronald Araujo ロナルド・アラウホ

25歳/ウルグアイ/188cm/3023分/1G2A

CB陣で最長の出場時間を記録した筋肉担当。速さに高さ、力強さの三拍子揃ったその肉体で唯一無二の地位を確立した。でもSBで使うのはもうやめような。

バルサと相対する相手はまずアラウホを放置して守備を始めることが多いが、今シーズンはタッチダウンパスからアシストを記録するまでに成長。キックレンジは元から広いので、このまま練習を続けて固定砲台を目指してください。

今シーズンはクリステンセンが相方から外れることが多くなり、ブスケツも退団したことでエアバトルで頼れる選手が減少。ハイボール全部競るマンとなったアラウホだったが、被ったら背中のスペースを使われて即失点というギャンブルチャレンジめいた場面もそこそこあった。

そのあたりも踏まえて、課題としてはやはり判断の部分。裏に抜け出した相手への対応も含め、全部自分でやろうとして空回りするシーンが散見された。PSG戦のアレとか。メンタルとしては与えられた命令を全身全霊で遂行するほうが性に合ってそうなので、手綱を握れる相方がいてくれると安心。



#5 Iñigo Martínez イニゴ・マルティネス

33歳/スペイン/182cm/1619分/0G0A

純血主義アトレティックからフリーでやってきたベテラン。おじさんたちが相次いでチームを去っていく中、ラ・リーガで250試合以上に出場してきた経験を買っての獲得だったと思われる。左利きで身長の割に空中戦も強く、控えとしては申し分ないスペックだと言っていい。

問題は筋肉系のトラブルが長引いたこと。過密日程が極まる冬にハムストリングを痛め、2か月近く離脱していた。バックアッパーがベテランだとこれが怖いんだ。結局、主力を休ませつつ戦いたい国内カップ戦はほぼ全休であった。

ベテランらしくそこそこ何でもこなせるのは見えたが、どれか1つ切り取ってこれが凄い!というところは見えにくいシーズンだった。しっかり守れるけどオシムヘンにはふっ飛ばされるとか、リスクを取りすぎたロストはないけど目の覚めるようなパスは刺せないとか。逆にいえば穴の少ない選手ではあるんだけどね。急に代表に呼ばれたりしてたし。



#15 Andreas Christensen アンドレアス・クリステンセン

28歳/デンマーク/187cm/2789分/3G2A 

高さもありスピードもあり、保持時のサポートもお手の物。必要なものを必要なだけ持った、高水準なCBである。すごい。今シーズンもレギュラーは盤石かと思っていたのだが、予想に反してCBの2番手になりきれないまま日程が進んでいった。どこか痛かったんですか?

クンデが右SBに回ってからはそこそこ出番を得つつ、最終的には中盤にコンバートされることに。ひたすらカウンターの芽を潰し、DFラインの穴を塞ぐ作業に従事した。ビルドアップに関われなくても構わず起用されていたのは、シンプルにこれをできる人がクリステンセンしかいなかったことが原因である。ブスケツって凄かったんだね。

ジローナ戦で急にチャンネルランからゴラッソを叩き込むなどボランチが板についてきた雰囲気もあるが、フル出場するスタミナがないのは大きな問題である。そもそもフルで能力を発揮できるのはやっぱりCBなので、来シーズンはそっちで見たいです。



#33 Pau Cubarsí パウ・クバルシ

17歳/スペイン/184cm/1925分(冬合流)/0G1A

元から人数が少ないDFラインに怪我が重なり、アラウホやカンセロがテーピングぐるぐるで出場していた魔の1月。そこで抜擢されると瞬く間にレギュラーを掴み、スペインA代表デビューまで駆け上がった。チャビ監督その人から「自分が予想もつかないようなパスを出すんだ」と称賛されるという、なろう系主人公のようなエピソードを持っている。

パス出しはもちろん最高級だが、これだけの出場時間を記録できたのはガタガタだったDFラインを整える力があったからである。クロス対応や裏ケアの準備が完璧で、筋肉任せの相方をうまくサポートする視野の広さも兼ね備えている。スピードもそこそこあり、パワーのある相手へ対応する際の距離感も見事。つかず離れず粘り強く。

とは言ってもいまだ17歳。1月から出場してもう2000分近く出場というのは少々やりすぎで、シーズン終盤には疲労からか集中力を欠くシーンも見られた。ユーロに呼ばないのはいいんだけど、オリンピックに呼ぶならむしろオフが短くなったりしない?そこんとこ考えてらっしゃる?



#2 João Cancelo ジョアン・カンセロ

30歳/ポルトガル/182cm/3317分/4G5A

SBとは思えないキレキレの突破と、SBとは思えないふわふわの守備対応でスリリングな試合を演出し続けた。移動距離の長いSB-WG兼用のタスクをこなしながらも、チーム4位の出場時間を記録したのは立派。

カンセロに守備をちゃんとやれと怒鳴るのはアラウホにいいクロスを上げろと憤慨するようなもので、正直その場所で使ってるのが悪いという話である。分かってて借りてきてるんだから尚更ね。いくらチャビがデンべレの手綱を握れたからって、30になったカンセロが急に守れるようになったら怖い。物理的な脳の改造手術を疑うレベルである。

というわけで、右サイドの低い位置でふらふらしていたシーズン序盤は割と微妙なパフォーマンスを披露。バランスを取れば取るだけ攻撃での貢献が減っていき、結果として収支がマイナスに傾いていくのは切ない限りだった。

しかし左サイドで高い位置を取るようになってからは本領を発揮。今シーズンは左の大外から突破を図れる選手がカンセロしかいなかったため、常にピッチ上にいてほしい選手のひとりになっていった。なんでSBやってるんだろうね。最初に起用した人に話を聞いてみたい。



#3 Alejandro Balde アレハンドロ・バルデ

20歳/スペイン/175cm/2000分/1G1A

デススラによる負傷を乗り越え、LBのファーストチョイスとして挑んだシーズン。目指せアルフォンソ・デイヴィスを合言葉に、左の大外レーンを占有するタスクを与えられた。

しかし現実はそう甘くはなく、完全にバレてからも擦り続けた縦突破が必殺技に昇華されることはなかった。他の手札が少ないのは明確な課題で、パスで周りを動かすだとかバックドアを狙ってみるだとかのワザマエが向上する雰囲気は見られず。なんですかそのファーストタッチは。

逆に信頼できたのは守備の部分で、こちらは助けがなくともある程度何とかできるところを証明した。それなのにトランジションのたびに50mの移動を強いられ、疲れてきたところを怠慢守備と詰められる不憫な役回りに。その負荷が祟ったのかは知らないが、1月に負傷してシーズンエンドとなってしまった。低い位置からなら内外使い分けた長距離ゲインも可能なので、後方待機をメインにやっていったほうが映えると思っています。



#17 Marcos Alonso マルコス・アロンソ

33歳/スペイン/188cm/389分/0G0A

昨シーズンはCBでそこそこやれるやんという所を見せ、契約延長を勝ち取ったおじさん。しかしイニゴ・マルティネスが加入し、ジョルディ・アルバが退団したことでLB専任へとスライドした。

しかし悲しいかな、非保持であまりにも怪しかったため試合に絡んだのはごく僅か。歩幅がデカいうえにトップスピードも速くないため、つっかけられても裏に走られてもつらいという苦しすぎる状態に陥っていた。足が長いとこういう弊害もあるんですね。

さらにつらいことに11月の末に背中を負傷して3か月離脱し、国内カップ戦の期間を全休。戻ってきたころには17歳に2番手の立場を奪われていた。セットプレーでは左足の質の高さを見せつける予定だったが、周りが身長高くないのにあんたが蹴ってどうするねんという問題は解決しないまま。スキルが活きる場所はあると思うので、いい新天地を見つけてください。



#23 Jules Koundé ジュール・クンデ

25歳/フランス/4098分/2G4A

CBやらせてくれないなら移籍するんで!よろ!とほんとに言ったのかは定かではないが、シーズン開幕からSBでの起用を封印。しかしとにかくリスクを取る姿勢が裏目に出まくり、無理目の迎撃を試みてあえなく裏返されるシーンが目立った。左での起用が多かったものの、右足しか使わないのでなかなか内側を覗けないのも苦しいポイント。

評価が好転したのはSBにポジションを戻してからで、ヴィニシウスやクヴァラツヘリア、エンバぺといった錚々たるメンツを相手に「1対1で負けない」という設定の守り方を押し通す魔人っぷりを見せた。WGのサポートもほぼ完璧だったし、やっぱりここで世界一を目指さないか?やっぱり嫌か?

というかCBだSBだというより、3バックの左/中央だとうまくいかないね、ということを再確認したと言った方が正しいシーズンだったように思う。左肩上がりの3バック化を廃止するようなことがあれば、またCBとしてプレーする姿が見られる可能性もある。あと来シーズンも4000分走り切れるとは絶対思わないほうがいい。



#39 Héctor Fort エクトル・フォルト

17歳/スペイン/185cm/565分(冬合流)/0G3A

また17歳が登場である。DFラインの頭数が少なすぎたね。どうして7人でスタートしてしまったのか。ラ・マシアから生えてくる前提でスカッド組むのはやめて頂きたい。

CBからRBにコンバートされた選手という話だったが、トップチームでは主に左で出場することになった。相手選手と正対して時間を作る姿は流石マシア産といったところで、右足で美しいファークロスを送れるのも素晴らしい。スピードもあり、スマートに守ろうとしすぎないのも好印象である。

90分以上出場した試合は国王杯の2試合(3部バルバストロ戦、決勝アトレティック戦)のみで、トップの強度で上下動を続けるスタミナはまだない。左足でのキックももうひとつだが、そもそも右サイドで使えという話でもある。絶対そっちのほうが向いてるでしょ。左はバルデとフォルトでOK!みたいなバカの編成にならないか今から心配。



MF

#18 Oriol Romeu オリオル・ロメウ

32歳/スペイン/183cm/1432分/0G1A

ラ・マシアのDNAを持ち、プレミアで7年間戦い抜き、ジローナでリーガでも十二分にやれるところを証明したベテラン。実にいい響きだ。彼ならブスケツの後釜としてうまくチームを繋いでいけるでしょう。いやはや、いい補強をしたもんです。

というふうにはいかなかったんですよね。ブスケツに近いことができる選手だったからこそ、「ブスケツだったらなぁ」という失望だけが積み上がっていくことになったのは恐ろしい話である。常に世界最高の選手と比肩するプレーを求められる重圧なんて想像したくもない。

シーズン序盤はデ・ヨングと組んでうまくやっていたが、相方が負傷離脱してからはずっと不安そうにプレーしている印象だった。早くボールを離そうとしてパスミスしたり、逆にどこに出そうか迷っているうちに突っつかれてロストしたり。うまくできないと更に余裕がなくなる悪循環である。

どうもアレイシ・ガルシアを引き抜かれそうなジローナから復帰のオファーが来ているようで、来シーズンはピッチの反対側で見ることになりそう。自信を取り戻した姿を見せてほしい。



#20 Sergi Roberto セルジ・ロベルト

32歳/スペイン/178cm/1312分/3G3A

テア・シュテーゲンを抑えて最長の在籍歴を誇るキャプテン。もう10年以上になるんだね。次点がアラウホとかデ・ヨングあたりになるんだから凄いもんです。

本当に頭のいい選手で、そこにいて何がしたいんですか?と言いたくなる場面がほとんどない。誰もが手本にできるし、するべき選手である。彼が関わればそれが「バルサっぽい崩し」になる。

今シーズンはSBと中盤の控えとして働いたが、昨シーズン同様に筋肉系の負傷で離脱を経験。CLベスト8のPSG戦セカンドレグではサスペンションでベンチ入りできず、チームの敗退を見守るしかなかった。

契約が今シーズンまでになっており、チャビの退任によって将来が不透明になっている。本人は延長に前向きなようだが、フリック陣営からすると優先順位は高くないそうで。不完全燃焼で終わった今シーズン、雑な別れにはなってほしくない選手。



#21 Frenkie de Jong フレンキー・デ・ヨング

27歳/オランダ/181cm/2512分/2G0A

新進気鋭の支配層候補!次世代のピボーテ像を創る男!と言われ続けて早5年。時間が経つのは早いもんだ。今シーズンはチーム随一の身体能力を買われ、広大な中盤のスペースを埋めるネガトラ番長として走りに走った。

問題は体力はあってもメンタルが全然向いてなかったことで、疲れてくると露骨にトランジションが遅くなっていた。帰陣する前に味方や審判に不満を表明するフェーズが挟まるのはピボーテとしてわりと致命的。

とはいえ、活躍のさせ方が分かっていないわけではない。4番ができる人の隣に置けば勝手に輝きだすので。問題はセットでスタメンを張れる、つまりペドリかガビのどちらかを押し出すに足るレベルの選手を引っ張ってくる必要があること。そしてその資金を工面するにはデ・ヨング本人を売るくらいしかないことである。

レジェンドの後釜として高値で買ってきてたり、そのわりに想定より1つ前のポジションが得意だったりみたいな所はコウチーニョと重なって見えたりする。ラ・リーガだと得意なプレーがいまいち出し切れないとこもね。きちんとセットして組織だった守り方をしてくるチームが多く、ダッシュで奪いに来るDFを剥がすのが本領の選手は苦労しがちなリーグである。CLでやたら相手サポーターから褒められているのは、能力を十全に発揮できる環境が他のリーグにあるからなのだろう。

契約は残存1年となり、年齢的にも大型契約を結べるのはあと一度か二度。契約延長か、それとも売却か。まずは本人のジャッジが待たれる。



#22 İlkay Gündoğan イルカイ・ギュンドアン

33歳/ドイツ/180cm/4180分/5G14A

選手兼コーチみたいな形で、若手を導きつつ要所を締める役割になると思ってました?そうは問屋が卸しません。ギュンドアンさん、あなたには馬車馬のように働いてもらうことになります。

具体的には4000分くらい出場してください。トップ下のときはゴールに絡み、ボランチでは円滑にビルドアップを行ってください。新加入選手ではありますが、リーダーとして振る舞うのもマストです。よろしくお願いします。




ギュンドアンさん、お疲れ様です。シーズンが無事に終了しましたね。私どもの期待に見事応えてくださったこと、とても嬉しく思います。プレッシングやネガティブ・トランジションの局面で常にスプリントしてくだされば完璧でしたね。

・・・失礼しました。さすがにこれは厚かましい願いでしたね。33歳にして、これだけの出場時間を記録されたのですから。不躾な発言でした。

ところで、来シーズンはハンジ・フリック様が監督を務められることが決まっております。あなたには元同僚として、より一層チームの核として働いていたきたく存じます。

それでは、このあたりで。EUROにも出場されるということですが、くれぐれもお体を大切になさってください。



#6 Gavi ガビ 

19歳/スペイン/173cm/1172分/2G1A

2年前、デビューシーズンに書いた文章がある。この時はちゃんとシーズン末に書いてたんだね。それがこちら。

絶対おまえには負けてやんねー、と自分から果敢に相手に向かっていく姿は、若者らしい向こう見ずな危うさを秘めているようにも見える。しかしそのままバルセロナでスタメンの座を掴み、A代表でも当然のようにプレーされてしまってはこちらも脱帽して称えるしかない。怪我するなよ…と怯えるのではなく、「これがガビのスタイルなんだ」と胸を張って拍手を贈るのが筋というものである。でもやっぱり怪我はしないでね。進化していく姿をずっと見ていたいので。

FCバルセロナ選手別レビュー【MF編】

恐れていたことが起きてしまったね。本当に残念。何度も言ってるけど、10代の選手にプレー可否の判断を委ねちゃダメなんすよね。絶対出られるって言うに決まってるんで。彼らのモチベーションに引きずられず、プレータイムを管理していくのが大人の責任ってもんです。

この初年度に既に3000分の出場時間を記録していたガビだが、昨シーズンのプレー時間は更に割り増しの3500分に。今シーズンもサスペンションでの出場停止を除いて全試合出場を続け、そんな19歳をスペイン代表は身体が出来上がった他の選手と同じように使い続けた。全員反省してくれ。ペドリの件から何も学んでいない。

WG起用で運動量をフル活用するスタイルを押し出していたが、今シーズンはダブルボランチの一角としてボール出しにも関わるように。相変わらず別格の強度を非保持で活かしつつ、チャビその人の下で新たな引き出しを見つけているところだった。そのチャビもいなくなってしまったが、まずは完治させて元気にピッチに立つ姿を見せてほしい。どれだけ時間がかかってもいいからね。そして、そんな彼に頼らずとも闘えるチームを作るのもまた大人の責任だ。あんたらわかってるよな。



#8 Pedri ペドリ

21歳/スペイン/174cm/2026分/4G5A

ペドリもまた怪我に悩まされる一人。今シーズンは開幕早々の8月にハムストリングを負傷し、次の出場は11月まで待つことになった。復帰したのちにも年末、年度末にそれぞれ筋肉系の負傷で1か月ほど離脱している。

各シーズンのプレータイム

これまでの出場時間を見てみると、クラブで3500分&ユーロ出場&オリンピック出場というバカのスケジュールをこなして以来ずっとコンディションが安定していない。明確にダメージを引きずっている印象がある。

今シーズンは復帰後もしばらくはギアが上がり切らず、7割くらいのパワーで試合をこなしているように見えていた。フルスロットルで見せる出力は変わらないものの、巡航速度はちょっと落ちたイメージ。これはアンス・ファティにも言えることだが、やはり負傷の予感を振り切って駆け出すのはなかなか難しいのかもしれない。

リスクを取らず低めでボール出しに関与する日々だったが、シーズン末の爆発が証明するようにライン間で最も力を発揮する選手である。ビルドアップの出口になれるし、何より崩しのアイデアが段違い。メッシやレヴァンドフスキと同じビジョンを描ける天才を、自陣深くに縛り付けるのはあまりにもったいない。



#32→16 Fermín López フェルミン・ロペス

21歳/スペイン/174cm/1900分/11G1A

こういうことなんだよ。トップで登用されるカンテラーノってのはね、全員が全員コアクラスの大天才である必要はないんだ。むしろそういった主力のプレータイムを管理する準レギュラーにこそ、違和感なくチームに溶け込める下部組織の選手が切実に必要なんだよ。

とかなんとか言ってるうちに、準レギュラーどころかスタメンでも違和感がないレベルまで一気にのし上がってしまった。去年は三部リナーレスにレンタルされていた選手で、Bチーム登録からスタートだったがシーズン中にトップチームの背番号を勝ち取ることに。タイミングを掴むのは大事だね。

シーズンの序盤には目の前のボールに全部食いついたり、後半途中で分かりやすくガス欠になったりと経験不足が見え隠れしていた。しかし試合をこなしていくうちにみるみるスケールアップ。スペースの把握と侵入するタイミングに優れ、ライン間でのターンとそこからの加速、そしてフィニッシュへの積極的な参加が持ち味である。確信をもって振り抜くミドルシュートも強烈で、11得点はフェラン・トーレスと並んでチーム2位タイとなる数字。

とんとん拍子にスターへの階段を上り、スペイン代表としてユーロに出場する権利を掴み取ったことは誇っていい。クラシコでまた煽りパフォーマンス見せてくれよな。今度はそのまま勝ってやろう。



FW

#11 Raphinha ハフィーニャ

27歳/ブラジル/176cm/1949分/10G13A

なんやかんや言われつつも、2シーズン続けて10ゴール10アシストを達成した実力者。右WG, IH起用に続けて左WGでの起用も板についてきた。今シーズンの左WGはIHみたいなもんではあるが。

先発しつつヤマルと交代するのが定番で、なかなかフル出場できない状況にフラストレーションを溜めている様子だった。右での仕掛けがいまいちなのは左足アウトサイドでのボールタッチが上手くないのと、ストライドの大きさが災いして減速が苦手なのが理由だと思っている。基本的にインサイドかインフロントのキックに帰結するのでね。それを見せ球にしてのインステップニア抜きは結構刺さっているのだが、ことごとくポストに直撃しているのがつらいところである。

それが2月に入ってから左WGで起用されるようになり、バックドア連発と圧倒的な非保持の運動量でチームに貢献。左サイドだと抜け出してからそのままゴール方向にプレーできるのがいいね。やってることとしてはガビと同じだが、ライン間でのプレーが減る代わりにゴールへのベクトルが強くなっている雰囲気である。

若手たちのプレータイム管理への貢献も勘案して、左WGの1番手/右WGの2番手としてチームに残ってほしいと思っている。ただプレミア方面から高額オファーが来た場合はどうなるか不明。契約は27年まであるようだが、状況としてはデ・ヨングと近いものがある。



#14 João Félix ジョアン・フェリックス

24歳/ポルトガル/181cm/2143分/10G8A

永遠のロマン枠はここバルセロナでもジョアン・フェリックスらしさ全開でシーズンを駆け抜けた。ハイライト映えするね、この人は。イケイケの時は世界中に敵なし!みたいな雰囲気がある。

一方で良くなかった点もまた変わらず。それはズバリ、シメオネに口酸っぱく指摘されていた「継続性のなさ」。特に非保持を見ていると分かりやすくやる気が表れており、できない試合では本当になにもしていなかった。

本来ならメッシよろしくWG⇒前残り2トップという可変で守備をさせるところだと思うが、チャビはSHとしてだましだまし守らせることを選んだ。同サイドにはバルデ、逆サイドにはハフィーニャを配置するお守り仕様である。ちなみにそのハフィーニャと比べて数字を残せなかったのはかなり寂しかったりする。

結局バルデ&ハフィーニャとのセットで出すのが必須条件だったのは変わらず。ファンタジー部分はヤマルがいれば何とかなるという事情もあり、バルデが大怪我で出場しなくなってからはフェリックスもトーンダウンしていった。アトレティコで頑張ってくださいとはとても言えないが、さりとてバルサが大金を出せるとも思えない。これからどうなるんでしょうね。



#27 Lamine Yamal ラミン・ヤマル

16歳/スペイン/178cm/2955分/7G10A

Q. ウスマン・デンべレの穴はどう埋めるおつもりですか?
A. ラ・マシアにいい感じの15歳がいるので引き上げます。

バカみたいな回答だが、それをやっちゃうクラブも世界にはあるんです。恐ろしいですよね。2900分も出すな。

とはいえ選手としてのクオリティは疑いようもなく、既にリーガでもトップクラスの右WGだと言っても過言ではない。正対できてカットインからのシュートありファークロスあり、縦突破して右足クロスもあり、双方を囮にしたキックフェイントあり、アウトサイドでその場から斜めに刺すこともあり。手札がいっぱいだ。

シーズンが進むごとにトップチームの強度に慣れていき、ドリブルでの推進力がかなり向上したのも素晴らしい。身体能力が向上したのも理由なのかな?長い距離を運ぶことができるようになり、ポジトラの起点として重要な役割を担った。

非保持における貢献度はまだ向上の余地があるが、求められたタスクをきちんとやる責任感はきちんとある様子。頑張れるのはいいんだけど、本当に怪我には気を付けてください。デ・ラ・フエンテ、分かってるよな。



#7 Ferran Torres フェラン・トーレス

24歳/スペイン/184cm/1993分/11G4A

シーズン序盤には右で出て活躍したりしていたが、基本的にCFか左WGの控えとしてシーズンを過ごした。バルセロナはこの人のが3トップ全部できるのをいいことに控えの人数を絞っており、そのせいで2月、3月とハムストリング負傷でがっつり抜けたときはかなり台所事情が苦しくなっていた。

スピードがあるのはもちろん、周囲と繋がるのが非常にうまく少人数でもカウンターに持っていける便利な選手である。クラシコでもフェリックスとコンビでチャンスを作ったりしていた。最後に決め切れば€55mの移籍金も安く感じられるんだけどな。

戻っての守備はそんなに上手くないもののプレスに行く意欲はかなりあるタイプで、ヤマルと同時に投入されて場を引っ掻き回す役回りが多かった。あとはレヴァンドフスキを休ませる要員。少ないタッチでのポストプレーや反転しての裏へのランニングなど、差別化を図れる要素もちゃんと持ち合わせている。やっぱシュートだけうまくならんか。



#9 Robert Lewandowski ロベルト・レヴァンドフスキ

35歳/ポーランド/185cm/3800分/26G9A

35歳にして3800分もプレーしたが、今シーズンはピチーチ獲得ならず。とはいえ26ゴールは断トツのチームトップである。

クラシコでのスーパーボレーをはじめとしてゴラッソは何度も見せてくれたが、同時に決定機でファーストタッチが合わなくてロストする場面も何度もあった。ライン間に下がって受けたはいいものの、出しどころを探しているうちにロストする場面もあった。

あとは加入した当時と比べてプレッシングの強度も落ちているように思う。寄る年波には勝てないということなのだろうか。それともベテランを3800分も走らせているからなのだろうか。来シーズンはさすがにプレータイムを制限したほうがいいんではなかろうか。

PSG戦では若手CBべラルドをボコボコにして試合を楽にしてくれたが、逆に言うとあれだけCBに優位を取れている試合は稀ということでもある。ラ・リーガは強そうなFWならどついてもOKの寛大なリーグなので、ファール覚悟で削られても意外とカードが出ないことも影響しているかもしれない。だいたい毎試合なんかやられている。



#19 Vitor Roque  ヴィトール・ロケ

19歳/ブラジル/174cm/353分(冬加入)/2G0A

ブラジルでのシーズンを終えたのちにチームに合流した若きブラジリアン。1月に移籍してくると2月周辺にフェリックスやフェラン・トーレスが相次いで負傷していき、いきなりある程度の出場機会を得ることに成功した。

デビュー4試合目、5試合目と続けてゴールも決め勢いに乗るかと思われたが、謎イエローでの退場と主審の「ここはブラジルじゃないからね^^」という煽りのコンボを食らいあえなく出場停止に。これでケチがついてしまったのか、その後は数字が付くことなくシーズンを終えることになった。アトレティコ戦は惜しかったんだけどね。

ストライカーとしては身長が高くないが、低い重心を活かしてひるまずコンタクトに行ける選手なのは好印象。短い距離のダッシュでDFの前に出るだけのスピードはあり、どう走ればシュートを打てるか知っている雰囲気もある。ポストプレーの質や下がってきて受けたときのプレー選択はまだ勉強中。

フェルミンやアブデで味をしめたバルセロナとしてはこれから出場時間を稼いで経験を積むフェーズに入ってほしいわけだが、現在レンタル移籍の可否で代理人と大モメしている。なんでなんだよ。ここで放流したら笑い話にもならないので、どうにか穏便に事を運んでほしい。



#38 Marc Guiu マルク・ギウ

18歳/スペイン/187cm/182分/2G0A

ラ・リーガ第10節アトレティック戦で83分にトップデビューを果たし、その30秒後には既にこのセレブレーションを披露していた持ってる男。手足が長くて格好いい。このゴールでウノゼロ勝利だったんだぜ。

身長が高くてスピードもそこそこあり、何より裏へのランニングにプレッシングに精力的に走り回る姿には好感が持てる。実はBチームではシュートを外しまくっていたという噂を聞いたりしているが、トップチームではほぼ90分に1点ペースで得点している謎の決定力の持ち主。

トップチーム登録されているロケは控えかレンタルかの2択になるが、ギウはB登録なので来シーズンもほぼ確実にチームに帯同することが予想される。レヴァンドフスキおじさんの負担を減らすためにも頑張ってください。



監督

Xavi Hernández チャビ・エルナンデス

まずは2年半お疲れさまでした。まさかこんな終わりを迎えるとは思ってもみなかったな。辞任を撤回して契約延長した会見の1か月後に解任されるなんて、たとえ予言されていたとしても誰も信じなかっただろう。トンチキなことばかりやっているクラブではあるけれども。

チャビは今年もヤマル、フェルミン、クバルシといった若者たちの登用に積極的だった。彼らが得た経験は必ずこれからのバルセロナにとって大きな財産になるはずで、いずれ来る黄金期に彼の名が思い出され、語られるといいなと思う。

ただし一度信じた選手を使い倒し、なかなかプレータイムが管理できないのは彼の悪癖でもあった。捨て回じみた大幅ターンオーバー以外にも、選手をうまくやりくりして負担を分散するやり口は今後の課題になるだろう。

個人的にはチャビの選手時代をリアルタイムで追っていたわけではない。とはいえ、引退後の言動などからボール保持至上主義的なサッカーを展開するものだと思っていた。理想と共に生き、沈むときもそれは手放さないんじゃないだろうかと。それが就任してみると、「チャビの語る理想」を弾除けに使いながら現実的なチーム作りを進めていったのだから驚いた。

監督として引き出しの少なさを見せる場面もあったが、去年、今年と最終的にチームのベストに近いスタメンを発見しているのはなにげに凄いことなのではないかと思っている。リーガも制覇したことだし。ベストではないにせよ、この2年半を共に歩むにはベターな監督だったと言っていいでしょう。またいつか、お互いひとまわりもふたまわりも大きくなって再会できることを願って。









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