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日本一料金の安い銭湯に行ってみた

銭湯・サウナが好きなんですが、ところで「銭湯のない都道府県がある」というのはご存じでしょうか。

今どきたいがいの情報はネットにあるとしたものですが、銭湯の場合、毎月数件ずつ各地で廃業が続いており、そして都道府県によっては銭湯業者の組合活動が機能していない(茨城県のように県内に2軒とかしかなければ、もう公式ページとかも運営されなくなる)ところもあって、オンタイムな各都道府県の正確な銭湯数の表はなかったりするのです。

このため私は知らずにいたのですが、すでに都道府県によっては銭湯が一軒もないというところがありまして、実は山形県と島根県には銭湯がもう一軒もありません。歩ける町並みが残っているところにしか銭湯は存在し得ず、モータリゼーションが進むと、スーパー銭湯にその座を奪われ成り立たなくなってしまうようです(両県とも温泉が多いので温泉浴場は多かったりしますが、銭湯とは微妙に役割が異なります)。

そしてラスト1軒になっているところがありまして、一つは銭湯ファンには有名な「中乃湯」のある沖縄県、そしてもう一つが私の故郷の佐賀県で、唐津市にある「恵びす湯」が唯一の銭湯です。私が子どもの頃は佐賀市内にもけっこう銭湯はあり、風呂の修理の機会などに連れて行ってもらった覚えがありますが、いつのまにか佐賀市内では絶滅したらしく、県内でもついに最後の一軒ということを最近知り、佐賀に行ける貴重な機会に足を伸ばしたのでした。

唐津市は佐賀県のなかで佐賀市と対をなす歴史ある町で、豊臣秀吉の朝鮮出兵の際の拠点となったことは皆さん歴史の授業で学んだことがあるのではないでしょうか。「三大松原」に数えられる松がならぶ美しい海岸があり、毎年11月に行われる「唐津くんち」という雄大な祭りでも知られる風光明媚な町です。

その唐津市の中心地、唐津駅からは十数分あるいた住宅地に「恵びす湯」はあります。17時から営業ということで少し早めに到着し、一番客を目指します。

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住宅地にあるなんてことない一軒家の1階にしつらえられたのが恵びす湯さんです。開店とともに撮影のお願いをしたところ快諾いただきました。お客さんがいらっしゃるともう浴場は撮れないので、今回の旅はこの瞬間にかけていました(笑)。

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男湯に入って入口側に向かって撮ったところ。

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浴室のなか。カランは8個。シャンプーとボディソープは備え付けがあり、タオルは無料で貸してくださるので手ぶらで行けます。

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お風呂は40℃くらいかな。熱すぎない。万人が好む温度です。

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湯船はふたつあるのですが、片方はもう数年前からお湯を入れていないとのこと。「昔はこっち側はヨモギ湯とかやってたんですけどねえ」とのことでした。

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湯船の奥には小さい庭があって、お稲荷さんが祀られたほこらがあったりします。17時にオープンしてすぐ4人ほどになりました。くつろいでいいお湯をいただきました。

この日、番台に座っていらっしゃったのはお嫁さんの島崎明美さん。お声をかけると、いろいろ気さくに答えてくださいました。「一日にお客さんはだいたい十数人で20人はいかないね。ほとんど地元の人で、あとは近くのゲストハウスのお客さんが話を聞いてやってくるくらい」とのこと、コロナ禍でのダメージはそこまでなかったそうですが、今はゲストハウス経由のお客さんがほとんどいないとのことでした。

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浴室と脱衣所の入り口の上に掲げられた額。入浴料280円、洗髪料50円とあります。銭湯は、終戦直後に公布された「物価統制令」によって価格が決まる仕組みで、この法律の適用例はもう銭湯のみとなっています。各都道府県ごとに設定され、佐賀県は全国最安で280円。東京都の470円と比べると破格です。洗髪料が設定されています(聞くところによるとこれももう佐賀県だけらしい)が、実際にはこの料金は取られません(左のセッケン貸料金もタオル貸料金も取られません)。いやはや大盤振舞や・・・。

これに一日あたりのお客さんの数をかけると・・・いやはや経営が大変に決まっているのですが、とはいえすぐに廃業したりするつもりはないとのこと。「家族でやっているので何とかなっている。やれるうちはずっとやりたい」と仰っていました。頭が下がります。

頻繁には来れませんが、また必ず足を運びたいと思います。どうかお元気で。近隣に行く機会のある方はぜひ立ち寄ってみてください。

最近、日経でも記事になってましたのでさらにご興味ある方はどうぞ。

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