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この夏、本を読むなら飯田賞受賞作がオススメな理由

突然ですが、みなさんは小説を買うとき、何を参考にして決めますか?
書評? ネットの口コミ? 本屋さんでカバーやPOPを見て?
もちろんそれらも素晴らしいですが、いまあえて推すなら書店員さんが運営する「書店員さん文学賞」受賞作がオススメです。

こちらの記事がよくまとまっています。

なんと言ってもその嚆矢は新井見枝香さん(最近はストリッパーとしてもご活動されていらっしゃいます)が主催する「新井賞」だと思います。これが出てきた10年ほど前は「黒子である書店員が出しゃばったことを・・・」という反応も少なからずあったのではないかと思います。

しかし時代は変わり、読者にもっとも近い存在である書店員さんがその価値を保証しその面白さを伝えていくという売り方が今では当たり前となり、出版社もそれを前提として販促を行うようになりました(発売前の原稿を読んでもらう書店員さんをTwitterで募集する光景も当たり前のものになりました)。新井さん、時代の先を行ってましたね・・・

「全体として小説の売り上げが下がる中で、新しい販促の形が必要だった」とか「SNSの活用が当たり前となり、書店員さんの発信力が飛躍的に高くなった」とか「本屋大賞向けにあれこれ読んでいたが、推しが受賞せずそれならば」とか盛んになった理由はいろいろ考えられるところですが、いずれにしても全国各地の書店員さんが同様の試みをはじめており、いまさらなる発展に入ろうという段階になっています。せっかくだからこれに乗らないのはもったいないという訳なのです。

飯田賞を知っていますか?

そこでオススメなのが、東京都の蒲田という町にあるくまざわ書店グランデュオ蒲田店の店長・飯田さんが主催する「飯田賞」です。

栄えある第1回は今年2021年1月。受賞作は星野智幸の『だまされ屋さん』でした。

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70歳の夏川秋代は、夫を亡くして公団住宅にひとり暮らし。ある日、「(長女の巴と)家族になろうとしている」と語る若い男が突然やって来た。戸惑う秋代をよそに家に上がり込む謎めいた男。彼は本当に娘の婚約者なのか、それとも新手の詐欺なのか――。秋代には実は、長女だけでなく、二人の息子にも男の来訪について相談できない理由があった。アメリカで未婚のまま娘を産んだ長女、男らしさの抑圧に悩み在日韓国人のパートナーとうまくいかない長男、借金を重ねて妻子に出て行かれた次男……こじれた家族の関係は修復できるのか。現代文学の最前線を走る作家が、家族のあり方や人々のつながり方を問う渾身の長編。(ebookJapanより)

私も読みましたが、確かに面白かった。家族同士のコミュニケーションの難しさをいろいろな設定を織り交ぜながら軽妙に描き出しているのですが、この飯田賞がなければ出会わなかった作品でした。普段からノンフィクションやらマンガやら読んではいますが、なかなかすべてのジャンルは眼が行き届かないので、行きつけの書店が賞としてプッシュをしてくれたことがこの作品を知るいいキッカケになったのでした。

そして第2回は2021年7月14日、芥川賞・直木賞と同日に(!)発表されました。

芥川賞・直木賞が今回ともにダブル受賞だったというのが話題になりましたが、飯田賞もダブル受賞! 芥川賞・直木賞はあくまで当日選考委員が合議して選ぶもの。飯田賞は前もって発注されててこの日、店頭に並んだわけですからけっして狙ったものではないという。こういう偶然の符合を呼び寄せるところがなかなかです。

「マジカルストレンジ部門」に選ばれた松田青子『男の子になりたかった女の子になりたかった女の子』はこんなお話。

「私の生理ってきれいだったんだ」『おばちゃんたちのいるところ』が世界中で大反響の松田青子が贈る、はりつめた毎日に魔法をかける最新短編集。コロナ禍で子どもを連れて逃げた母親、つねに真っ赤なアイシャドウをつけて働く中年女性、いつまでも“身を固めない” 娘の隠れた才能……あなたを救う“非常口”はここ。(ebookJapanより)

店頭のサイン本をありがたく購入させていただきました。さっそく読み始めましたがこの本、装丁もシャレています。このへん、電子書籍版だと味わえない魅力ですね。

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リングライトが反射しちゃってますが、この見返しがピカピカなのが好きなんですよねえ。松田さんの銀色のサインがドンピシャでハマっています。

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そして次に読む「サプライジングミステリ部門」の、浅倉秋成『六人の嘘つきな大学生』。

成長著しいIT企業「スピラリンクス」の最終選考。最終に残った六人が内定に相応しい者を議論する中、六通の封筒が発見される。そこには六人それぞれの「罪」が告発されていた。犯人は誰か、究極の心理戦スタート。(ebookJapanより)

読んだ人の感想を探すと「ひたすら騙され続けた」との感想多数。そういうの好きですよ、純粋に。いやはや読むのが楽しみです。

書店員賞はライブ体験そのもの

この書店員さん賞で本を書うというのは、最近、映画館で映画を見ることが「ライブ体験」に似た価値を持つようになったことに似ていると私は思います。単に「作品を見て消費する」というだけではなくて、その本の存在を知るところ、実際に買うところ、そして実際に読み、そのあと語り、本棚で所有するまで一式がセットになっているものであって、一粒で何度も、いろいろな形で楽しめるもの。まさしくリッチコンテンツなのです。

この飯田賞、同じ本をamazonとかのネット書店で買おうと思えば買えますが、出来ることならここで買ってみて欲しいなと思います。なんと通販で全国でお求めいただけますw

飯田賞を二倍面白く楽しむためのフリーペーパーがついてきます。飯田店長が自作自演で対談をしているというなかなかぶっ飛んだ内容です。

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この夏、インドアで過ごすぞ!という方、ぜひお試しください!

蒲田カルチャートークのデザインやお手伝いスタッフの謝礼など運営費用に使わせていただきます。大田区の街をこれからも盛り上げていきます!