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マタハラ・パタハラを考える(産前産後・育児休暇について)

今朝テレビを見ていたら、パタニティハラスメント(パタハラ)が話題にあがっていました。パタニティとは父性を表す言葉です。
あまり聞きなれない言葉であると思いますが、朝のニュースで取り上げられるようになったのだと少し驚きました。

一方で、マタニティハラスメント(マタハラ)は聞いたことがあるかもしれません。
マタハラとは、女性労働者が妊娠や出産をしたことや、会社や国が定めている休暇制度を申請することなどにより同僚などから嫌がらせを受けることです(詳しくは別のnoteで書きます)。

マタハラも、パタハラも企業にハラスメントの防止措置が義務付けられています。

平成28年8月2日に、事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針等が公布されました。 この指針は、妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置の適切かつ有効な実施を図るために定められたものです。 平成29年の1月1日から、事業主の方は、この指針に従い、妊娠・出産等に関するハラスメント防止措置を適切に講じなければなりません。

厚生労働省
雇用における男女の均等な機会と待遇の確保のためにhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/danjokintou/index.html

多くのハラスメントは「行為者の無知」が理由で起きています。

その前に、そもそも多くの人が会社に勤めているのに、産休と育休のことを知らなすぎです。
これも、マタハラ・パタハラの1つの原因になっていると思います。

まずは産休と育休がどのようなルール(法律)で運営されているかを知り、その上でマタハラ・パタハラを考えると理解が深まるかもしれません。

(このnoteでは主に妊産婦へのハラスメント、マタハラについて書きます)

産前産後休業

労働基準法 第65条(産前産後)
第1項
使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあつては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない
第2項
使用者は、産後8週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後6週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない

つまり、産後6週間は絶対に働かせてはいけない。
産前6週間は本人が請求したら休ませなくてはいけない。
産後6週間を超えて医師が問題ないと認めた業務であっても本人が早く復帰したいと請求していなければ、働かせてはいけない。

と、労働基準法で決まっています。

育児休業

【基本事項】
育児・介護休業法という法律があります。
第2章は育児休業についてであり、第6条に「事業主は、労働者からの育児休業申出があったときは、当該育児休業申出を拒むことができない。」と明記されています。
※有期労働契約で、休業終了予定時期と契約終了日が近いなど対象にならない労働者もいます。条件については下記の動画やパンフレットに記載があります。

また、不利益取扱いの禁止が第10条で明記されています。
「事業主は、労働者が育児休業申出をし、又は育児休業をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。」

育児休業は、母親も父親もとることができます
原則、子が1歳に達する日までの連続した期間取得できます
※1歳に達する日とは、1歳の誕生日の前日のこと。

【2歳までの延長が可能】
1歳まで、とはいっても、預け先の保育所が決まらないなど事情はあるでしょう。1歳6か月まで延長ができます。さらに2017年より2歳の誕生日の前日まで再延長することができるようになりました。

【パパ・ママ育休プラス】
父母がともに育児休業を取得する場合は、子が1歳2か月に達する日までの間取得可能です。
取得できる上限は、父親は1年間、母親は出産日・産後休業期間を含む1年間です。そのため、開始時期を少しずらして取る方が多いです。

保育所等の利用を希望しているが入所ができない場合や、子の養育を行っている配偶者が死亡、負傷、疾病等により子を養育することが困難となった場合は1歳6か月まで育休を取ることができます。


育児介護休業法による制度の紹介や、休業がとれる対象者は、動画やパンフレットが分かりやすいため、一読されることをお勧めします。

【Youtube】
厚生労働省
https://youtu.be/oke59MDP0kM

【パンフレット】
厚生労働省
育児・介護休業法のあらましhttps://www.mhlw.go.jp/content/11909000/000355354.pdf

【パンフレット】※古いですが概要理解には分かりやすいです 
厚生労働省
H29.01・育児・介護休業制度ガイドブック 
https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/pamphlet/pdf/ikuji_h27_12.pdf


その他妊産婦への措置

【経緯な業務に転換】

労働基準法 第65条第3項
使用者は、妊娠中の女性請求した場合においては、他の軽易な業務に転換させなければならない

妊娠中の女性(出産後1年経たない産婦は対象ではありません)が請求したら、軽い業務に転換をさせます。
軽い業務がない場合はその仕事をその人用に作ってまでの対応はしなくても良いことになっています。

【残業と休日労働】

労働基準法 第66条第2項
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、第33条第1項及び第3項並びに第36条第1項の規定にかかわらず、時間外労働をさせてはならず、又は休日に労働させてはならない

36協定があったとしても、請求があった場合は、残業や休日の労働をさせてはいけません。
これは妊婦・産婦ともに対象です。
ただし、管理監督者は適用外です。妊産婦の管理監督者は、自分で働く時間を調整できることが前提のため、このような規定になっていますが、実際は労使で話し合い、業務時間や量を調整するのがよいでしょう。

【深夜労働】

労働基準法 第66条第3項
使用者は、妊産婦が請求した場合においては、深夜業をさせてはならない。

妊産婦から請求があった場合は、22時~翌5時の深夜労働をさせてはいけません。妊産婦が管理監督者の場合も同じく請求があった場合は深夜労働をさせてはいけません。

【育児時間】

労働基準法 第67条
第1項
生後満1年に達しない生児を育てる女性は、第34条の休憩時間のほか、1日2回各々少なくとも30分、その生児を育てるための時間を請求することができる
第2項
使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない

例えば9時に出社の会社で、9時から9時30分を育児時間として請求することができます。就労時間の最初・途中・最後いずれの時間帯に取得しても構いません。
この時間は労働ができないので、ノーワーク・ノーペイで無給の扱いにしても構いません。

以上のように、妊産婦の働く時間については法律で様々な規定があり、配慮されています。

マタハラの現状

妊産婦に対して「配慮されすぎなのでは?」と思う人も中にはいるでしょう。「ずるい」と思う人も少なくないでしょう。
実際にマタハラにおいては、行為者は男性よりも女性が多く、その数は2倍ほどになります。データでも明らかです。

【HR 総研×NPO 法人マタハラ Net 協働調査】
企業におけるマタハラ意識調査
2016 年 2 月、WEB アンケート、上場および非上場企業の経営者・管理職、有効回答:212 件
http://mataharanet.org/wp-content/uploads/5015c9751caeb71de42c9677b04c9fb4.pdf

子どもを産むことを選ぶ女性、子どもを産まないことを選ぶ女性、結婚することを選ぶ女性、独身でいることを選ぶ女性といろいろな考えの人が職場にいます。
複数の選択肢のうち、ある1つの選択を取った人が優遇される(ように見える)ことに対して、不公平という気持ちが起きるのかもしれません。

でも、本当にそうでしょうか。
妊産婦は、様々な制度に一見守られているようですが、休んでいる間は基本的に無給です。
出産手当金や出産育児一時金、育児休業給付を受けられるなど制度があったとしても、十分な金額ではありません。
子育て中も、復帰できるのだろうかと不安な気持ちを抱えています。
休業前に「戻ってくるところないかもよ」「給料減らしておくから」など心無い言葉を受けて休業期間に入る人もいます。

改善のために

妊産婦が休み、業務時間を減らすのはその人が自由な判断で行っているのではありません。権利に基づいて行っていることを、多くの人が知ることが必要だと思います。
権利の背景として、身体に非常に大きな負担がかかるため、やむを得ないという知識もないといけません(話が広がりすぎるので医療の話はここでは書きません)。

それから、組織の在り方そのものにも問題があります。
休みの間に代替社員を入れない、誰かが抜けるにあたり業務をプラスすることしかしない(優先度の低い仕事を無くすなど業務の整理をしない)など。
柔軟に業務が調整できる環境や風土であれば、余計な軋轢も少なくなると考えます。

経営者、管理監督者であっても、マタハラへの認識はまだまだ十分ではありません。

先述の経営者、管理監督者対象のアンケートでも

■妊婦・子育て中の女性は、周囲の社員と比較して
 仕事を休みがちなので、正直迷惑だと思う。
→そう思う0% まあそう思う12.7%

■子供のいる女性は、家庭で子育てに専念するのが
 本来あるべき姿だと思う。
→そう思う2.8% まあそう思う16.0%(計18.8%)

と言う結果です。
経営者、管理監督者がこの認識、この割合というのは、想像よりも多いものでした。

ハラスメント対策は経営者(トップ)が強く発信していかなくては「とりあえず」の対策になってしまいます。
いち管理職の発信では、残念ながら弱いのです。

〇〇ハラスメントは、何がハラスメントに当たるか細かく覚えるのではなく、相手に対する配慮です。
相手の状況を想像して、相手の立場で考え接することで、おおよそのハラスメントは解消されるはずです。

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■公式HP
https://harassment-rma.jp/
■認定制度:ハラスメント対策企業認定(WHITE
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■研修:パワーハラスメントリスク管理講座
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■ハラスメント相談窓口サービス
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■就業規則改訂
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