琥珀糖との日々~3年ほど琥珀糖を作り続けて思ったこと(前編)
3年前の今頃、コンセプトのあるケータリングとして活動をしてきたハラペコラボは花のかき氷という作品のトッピングでどんなカラフルなものが乗せられるんだろうと考えたときに知ったのが琥珀糖との出会いでした。
花のかき氷のビジュアルはこちら。この様々な自家製の蜜とフルーツや食用花、などの他にトッピングとして琥珀糖の小さなカケラを乗せて販売を始めたのでした。日本にこんな素敵な和菓子があるものか!と感動ました。
とあるそんな時に、石みたいなお菓子が作れないかというお客様からの相談が!石、石、石~と考えていた時に、ふとこの琥珀糖の事を思い出した。当時はかき氷の大事な脇役として、小さな四角をただただ切り刻み、とにかくカラフルな四角をかき氷に乗せるべく作っていた。
寒天と砂糖と水をぐつぐつと煮てバットに流し込み、流し込んでから色粉で色付けし、バットへ流し込み、一晩冷やして固めてから包丁でカットをして、乾燥させる。
乾燥の過程で一粒一粒がくっついていると、くっついたままで固まってしまう。この「くっついてしまう現象」に当時非常に難儀していた。
溶かしこんで固めてカットまでは非常に簡単。だけどバットに置いて、しかも程よい距離を置いてそれぞれ乾かす。テーブルは琥珀糖に占領される。乾くまでは数日かかる。。
手間がかかって可愛い
琥珀糖に関するイメージは、簡単なんだけど、なんだか手間がかかる、時間がかかる。そんなイメージだった。
だけど時間が経つごとに透明でキラキラでガラスのようにクリアーだった表面が乳白を帯びて乾いて結晶化していくような様にどこか惹かれる部分もあった。波に揺られて長い年月をかけて出来るしーグラスのようでもある。「なんだか生き物みたいだな。一晩寝て起きたら明日はどんな表情をしているのだろう?」これは当時から3年たった今でも未だに思うことだ。毎回微妙に違う表情を見せるからだ。
話は戻り、その「石みたいなお菓子」と思案しているときに浮かんだのが琥珀糖の存在だった。頭の中で思考を繰り返すうちに、あのやっかいな「くっついてしまう現象」を逆手にとって、切ったパーツを再構成したら、石のようなものになるのでは??と想像してみた。閃いた瞬間であった。
なんとなく手を動かしてみたときの写真がこちら。
乾かす前の切りたて。
「既に相当可愛いじゃないか!!」
今思えば
「カットの技術も何も無い状態にしか見えない!!お恥ずかしいわ!!」
しかし、出来た瞬間は狂喜乱舞した。
色は天然由来でない色素、味もただの砂糖味でなんの風味もない。
ただ、いきなり作ってこの可愛さなので、そしてパティシエでも器用でもない私がこのように作れたので、ゆくゆくスタッフたちで作る事を想定しても、いろんな意味でいけるんじゃないか!と非常に可能性を感じた。展開のしやすさも容易に想像できた。
それから商品化すべく、パッケージづくりに時間をかけていった。
初期の琥珀糖の作品、ついに完成!
こちらが初期の作品。
今思えば粗削りすぎるが、石っぽさの片鱗は見え始めている。
当時¥1500(税)で販売のために準備した100箱が即座に完売した。
そもそも販売してくださった方の集客力と主催のお店さんの既存のお客様の新しいものへの理解のすごさが融合した結果としか言いようがない。
それでも独自で考えた石っぽいお菓子を琥珀糖の世界で表現していく事にど新人として手ごたえは感じた。
もっとクオリティの高いものを提供したい
そんな欲が出てきた。作れば作るほど、楽しい琥珀糖の世界にどんどんハマっていった。
味と色見を研究、苦戦の日々
味はピューレや、果汁、リキュールなど様々試し、寒天菓子特有の乾きやすさ、さらに湿度と気温の関係に左右されることに悩まされる。
どんなに味がおいしい柑橘類も、味はおいしいのに一向に乾かない、1週間経っても2週間経っても乾かない。。悩まされる日々でした。色見も天然由来の色素は色の表現が非常に難しい。化学的な色素の色の出し方が容易なこと!けれどそこは妥協したくないので、何度も作っては、理想の色出しを研究した。
試行錯誤しながらも、改良は積極的に進めていった。
だんだんと、小刀で切り出すカットの仕方にこだわるようになっていった。
カットの引き出しを増やそうと基本の形を追い求めていった。
上写真、濃厚なお抹茶味。これにあった男らしいデザインを考えてみる。
蛍石を模して正八面体のカットをカラメル味で。アクセントにザラメを置いてみる。
ラズベリー味の宝石っぽいデザイン。
今のルビーの原型
ピンクが紅水晶を模した、ピーチココナッツ味
緑はエメラルドを模した、ラフランス味
赤は、ルビーを模したラズベリー味
だんだんどんどんカットの精度が上がってきていく。
ここまでで、こうぶつヲカシを制作して約半年が経った。
当時メンバーの中では、この手のカットが出来るスタッフは1人ぐらいしかいなかった。私はデザインをして、スタッフが作っていく感じ。
なので本当に少しの量しか製作出来なかったのもあり、常にオーダーは限界まで埋まっている状態だった。
そんな時、クラウドファンディングで販売してみることになる。
今まではインスタグラムで投稿するのみで、恐らく福岡の地域の人たち(それもごく限られた)が知っているぐらいだったと思う。マクアケという販売型のクラウドファンディングの顧客は男性で新しいものが好きな方たち。全く違う市場に紹介することとなる。
結果は予想をはるかに上回る400人近くに支援された。
いきなり大量生産への挑戦に
クラウドファンディングが予想を上回り大成功したのもつかの間、月に100箱も作れば良い状態だったのに、急に3週間ほどの間に500箱近くを作る状況になってしまう。内部は大騒ぎ。と、緊張感が走る日々。。
この販売型のクラウドファンディングは発送まで参加者が行う仕組みなので、切って乾かして箱詰めして、発送までの1連の流れをすべてミスなく行わなければならない。発送にも慣れていない私たちが、手探りのまま納期に向けてひた走る日々となった。
けれどがむしゃらにやり、どうにか間に合わせることが出来た!そのときに、勝手に追い込まれることで、チームの能力はぐっと上がることに気づいた。やれば出来るじゃないか!出来ちゃったね私たち。。と。
そして、クラウドファンディングで見かけた方たちから様々なオファーが続いていく事となる。ネットニュースや雑誌などの取材も急に増えていき、より一層知ってもらえるようになっていく。
お客様のニーズに応えていく事でレベルアップ
様々なお客様から、主に企業やお店の方から、こんな感じのこうぶつヲカシは作れますか?というお問い合わせが増えていった。出来る限りは応えるようにしていった。
アパレルブランドのファッションショーでのお持たせ。
300箱近く発送。宝石のカットがパワーアップすることになる。
かと思えば、発掘してきた天然の鉱物を模したものを作る依頼も。
確実に写真の資料を元に、リアルさを追求していく。
方解石、天青石、蛍石、柘榴石
石の種類にも詳しくなかったがその都度調べていき、自然と興味がわくようになっていった。
個別でお問い合わせが多数来たのはウェディングプチギフトや企画もののノベルティ。
一つ例をSNSで紹介すると、1,2件次の案件が来るといった感じで、途切れなく挑戦すべき話がやってくる。それをどんな答えを出したら一番喜ばれるのかと思いながら打ち返していく。
作るたびに色の表現、味の表現、カットの表現が精度が上がっていく。スピードも上がっていく。
レベルアップと実践を同時進行していく
良く、いろいろと整ってから仕事にしたいという話を聞くが、そういう意味ではハラペコラボは最低限のレベルは絶対にお約束をするが、仕事の中で常にレベルアップを図っている。準備が出来てからでは、遅いうえに、ビジネスという実践という失敗が許されない状況になった方が良いものが出来ると考えるからだ。
その中で、ベストを尽くして送り出す。送り出している瞬間にはもう次の製作の事を考えている。常に安定した製作と新作を生み出すことを同時進行している状態が3年続いているわけだ。
9マスという枠のサイズに捕らわれずに作ったらどうなんだろう?とこうやって手を動かしてみる。
すると、次の作品が出来ていく。
ここまでで、こうぶつヲカシを作り始めてから約1年~1年半ほど経過している。すっかり、琥珀糖の虜である。
見た目も最早石だね!と思えるようにもなってきた。手作業で一つ一つ切り出すというところは譲らずに、ここまで大事に大事に独自のやり方で、琥珀糖と向き合ってきた。
さらにこの後、進化していく。
~後編へ続く~
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