私のきびだんご的スイーツ、レモンケーキの話
私が通っていた幼稚園は自然とふれることを重んじていて、月に1回、山登りの行事あった。子どもの小さな体には決してラクではない山道。ぎゅっ、ぎゅっと土を踏みしめながら、山頂を目指したことが遠い記憶の中にある。
もう歩けない〜〜〜っ！！！
そう言ってうずくまると、先生が渡してくれる”チカラアメ”というものがあった。「このアメをなめれば、力がもりもり湧いてくるんだよ！」と握らされた小さな包み。パクりと口に含むと、あら不思議。だるくなっていた足が前へと動き出すのだった。
幼稚園生の私を強くした、魔法のアメ。幼ごころに「甘いものをたべると、つよくなれるんだね。桃太郎が鬼ヶ島にきびだんごをもっていったみたいに、私たちも山にアメをもっていくんだなぁ〜」と思った。
大人になった今、残念ながらもうアメの魔法にはあやかれない。
でも、人生には鬼退治に匹敵するハードシングスが起こってしまうから、きびだんごが必要で。私にとってのそれは、レモンケーキだった。
🍋
20代後半。仕事もプライベートもイマイチだったあの冬、職場の先輩がカフェに連れ出してくれた。
「絶対このやり方のほうがいいから提案しているんですけど、聞く耳をもってもらえないんです〜。この時期なのに、まだ○○も終わってないんですよ。ありえないですよね！？ しかもプライベートでもこんなことがあって......」
口から飛び出すのは不満&不満。
先輩は「うん、うん」とマザーテレサのように優しく聞いてくれた。
そして、
「そっか〜それは大変だったね。甘いものでも食べて元気だそうか〜」
とレモンケーキとコーヒーを頼んでくれたのだった。
運ばれてきたケーキにフォークをいれながら、私は話し続けた。
「それで、彼に言われたんですけど（もぐもぐ）」
.........！！！
.................！！！！！！！ 🍋
柑橘のさわやかさとアーモンドプードルの香ばしさが鼻からふわっと抜ける。そして舌の上には、生地のしっとりやさしい甘みとレモンの甘酸っぱさが広がった。
お、おいしい......！！！！🍋 🥺 🍋
不満がモクモクと立ちこんでグレーだった心が、あざやかなレモン色に塗り替えられていく。顔の筋肉が緩み、心がゆるゆるとほどけていくのがわかった。
これまでの人生、レモンケーキについて深く考えたことなんてなかったけれど、レモンの甘酸っぱさ、バターのやさしい甘さ、そしてコーヒーの苦味が合わさると、最高の奏となることを知った。
ふと我に帰ると「うーん、おいしい😇」とすっかり頬のゆるみきった私を、マザーテレサ先輩が優しいまなざしで見つめていた。
「あの、、元気、でてきちゃいました...（照）🥰」
自分でもつくづくゲンキンで単純だな〜と思う。でも、人間はきっとそれくらいシンプルだ。
おいしいから、うれしい。以上！
🍋
その日から、レモンケーキは私のきびだんご的な存在......、戦いのお供であり、仲間とわけあうスイーツとなった。
あれからマザーテレサ先輩は転職してしまったのだけど、大事なプレゼンがある日には、ひとりカフェに駆け込んでレモンケーキを食べる。レモンケーキにはあの日の先輩のやさしさが宿っていて、私にチカラをくれるのだ。
元気のない後輩を連れていったこともある。このあいだ、唐突にその子から「あのときのレモンケーキ、なんだか心に沁みたな〜」とLINEが送られてきて、彼女の心にもおんなじレモン色の思い出があることをうれしくおもった。
最近ではリモートワークが続き、しばらくあのカフェに行けていないけれど、その分、お取り寄せで楽しんでいる。
私のお気に入りは、FORU LEMON。Wework原宿や渋谷にお店を出すforucafeが、コロナを機にクラファンでつくったレモンケーキだ。
しっとりと重みのある生地に、輪切りのレモンがしっかりと座っていて、一口食べると「あ、この子は愛されて生まれてきたんだなぁ〜」と伝わってくる。保存料や着色料が入っていないのもうれしい。
↑写真：クラファンページより拝借。
自分用に購入し、それから一緒にコロナ時代を生き抜いている大切な友人にも贈った。
ていねいに紅茶を入れ、お気に入りのお皿にレモンケーキをのせる。疲れてる日も、弱気になった日も、レモンケーキを口にすれば、頬がゆるみ、ふつふつと体の内側からエネルギーが湧いてくるから不思議だ。
こうやって「おいしいから、うれしい」の瞬間を数えながら、大変な時代を生きていきたいなぁ〜と想いを馳せる、午後3時。
からっぽになったお皿に残るのはいつも、「甘くてすっぱくて愛おしい人生を、存分に味わっていきたい！！！」という、未来への希望なのだった。
p.s
forucafeではレモンケーキ以外にも愛情たっぷりの手作りグラノーラなどを販売していて、どれも絶品です。お店で食べるブリュレフレンチトーストも最高🤍
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか？