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「アオアシに学ぶ「考える葦」の育ち方」を読んでミタ

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▪️本著の要点

  1. 思考力のベースとなるのは「言語化」だ。「自分で考えて動ける人材」になるには、「観察→判断→実行」ループを回すことである。

  2. 観察力をつけるには、「視点」を獲得して使いこなす必要がある。視点を知らない、もしくは固定された状態にあると、同じものを見ていても違うものが見えてしまう。

  3. 判断は「価値基準×入力情報」と表せる。よい判断をするにはよい価値基準を持つ必要があるが、価値基準は常に自分で決められる。

  4. テクニックの習得は、「仮説→試行→検証→規範化」を高速回転させることが肝となる。「検証」ではやったことをふりかえり、言語化することが大切だ。

▪️本書の要約

考えない葦

「自分で考えて動く」とは

田舎町の中学サッカー部でプレーをしている青井葦人(アシト)。ある日アシトはプロサッカークラブ「エスペリオン」のユース監督に見出され、ユースチームに入団する。しかし入団早々、ジュニアユースからの昇格組とのレベルの違いに圧倒されてしまう。

コーチはアシトの“致命的な欠陥”に気づき、「プロになれない」と告げる。その欠陥とは「思考力のなさ」。アシトは、「考えない葦」だったのである。

思考力のベースとなるのは「言語化」だ。ストーリーが進む中で、アシトは試行錯誤をしながら言語化力を磨き、自らの才能の活かし方を理解していく。アシトの気づきや成長していくプロセスは、良質な仕事のヒントになるはずだ。

次章より「思考のフレームワーク」の中心となる「観察→判断→実行」ループを、「自分で考えて動ける人材」の観点から解説する。

観察

知らないものは見えない

matimix/gettyimages

ある脳学者によると、脳は知識がないものについては認識ができないという。つまり「知らないものは見えない」のである。

アシトはユースチーム入団直後、紅白戦でチームメイトとプレーがかみ合わず、ジュニアユース出身の黒田選手からこう言われる。「パスからメッセージが伝わらないの? それ以前に、僕らのポジショニングやボールの運び方を見たら、意図くらい察知できるはずだ」。

黒田はじめ昇格組は「ポジショニング」「ボールの運び方」「パスのメッセージ」という共通の視点やセオリーを持っているが、部活上がりのアシトにはそれがない。そのため、黒田と同じ状況を見ているのに認識ができず、アシトは「何を言われているのかわからない」状態に陥ってしまう。

「考えることが大事」といっても、このような「視点がない」状態では難しい。観察力をつけるには、「視点」を獲得して使いこなす必要があるのだ。

視点・視野・視座・視差

よく「相手の視点になって考えろ」というフレーズを聞くが、この「視点」という言葉には「相手がどこを見ているのか」「相手の立場になる」という2つの意味が混在している。
複数の意味が混ざっているとミスコミュニケーションが起こりやすいため、本書では「視点・視野・視座」という言葉を、次の意味で使いたい。

・視点:対象物の「どこを見るか」
・視野:「どこまで見えるか」(見えている範囲)
・視座:「どこから見るか」(立場)

「オンラインの地図」を例に説明すると、
・入力した住所のマークが「視点」
・地図が見えている範囲が「視野」
・そしてズームボタンのマイナスを押していくと「高いところから見た感じ」になるが、これが「視座」の高まった状態だ。

さらにもう一つ知っておきたいのが「視差」である。
視差とは、
・「同じものを見ていても、見えているものが違うこと」である。

この「視差」が発生する原因は、
・「視点を知らない(無知)」
・「視点が固定している(偏見)」
・「視座が固定している(同じ環境や立場にどっぷり漬かっている)」の3つだ。この3つがあると、観察力は鈍ってしまう。

視野の広げ方

Seiya Tabuchi/gettyimages

観察力が高いと選択肢が増える。選択肢が増えると、自分の意志でよりよいものを選ぶことができ、自由度が高くなる。

「自由」とは、自分がやりたいことを選択できる状態、もしくは選択肢があるなかで自分の価値基準で選び取っている状態だ。

会社では、上司に「これをやって」と言われて仕事が始まるケースが多いが、自分で解釈をして「やりたい」「意味がある」と思うようになれたら、「自由に転換できた」ことになる。人が成長するとは、「自由」を増やしていくことに他ならない。

では、「選択肢を増やす」にはどうしたらいいか。
観察力を高め、「見えているもの(インプット)を増やすこと」である。
具体的には「接した情報の量」「接した情報からどのくらい吸収できたか」の2つの切り口がある。それを表すと、次の公式となる。

入力情報=アクセス情報量×吸収率

たとえば100の情報にアクセスして20%吸収できれば、入力情報(インプット)は「20」である。この数値を上げるには、視野を広げてアクセス情報量を増やし、偏見をなくして吸収率を高める必要がある。

視野を広げるポイントは、「視点」と「視座」をコントロールすることだ。サッカーではよく「首を振れ」と言われるが、これは「広範囲を見て視点を増やせ」という意味である。また、高いところから見たり一歩引いて外側から見たりするとき、視野はいやおうなしに広がる。視座を対象物(視点)から離せば「アクセス情報」は増えるのだ。

▪️必読ポイント

判断

判断とは「分けること」

人間は「判断する関数」である。式に表すと次のようになる。

判断=価値基準×入力情報

「判断」とは「分けること」であり、「わかる」とは「分けられること」である。何かを判断するとき、頭の中では「タグづけ」がされている。

リンゴという情報が入って来たら、「品種:ふじ」「色:赤」「味:甘い」「評価:おいしいから好き」など、さまざまなタグがつけられる。

それが済んだら記憶の棚にしまわれて、誰かに「好きな食べ物は?」と聞かれたら、「好き」のタグがついているものを脳内検索して、検索結果の一つとして「リンゴ」が出力されるのだ。

「わかりにくい」というときは、「分けられない(解釈不能でタグがつけられない)」、「分け間違いやすい(発信者の意図と違うタグをつけてしまう)」ということが起こっている。相手にわかってもらうには、相手のタグづけ基準(価値基準)を知ることが肝要だ。

また、「判断が間違っていた」ということもある。「判断」をするプロセスでは、入力情報を価値基準によって処理(計算)する。よい判断をするには、よい価値基準を持つことが重要なのだ。

よい「価値基準」を持つには

RichLegg/gettyimages

「よい価値基準」とは何だろうか。
ふつうの状態を「1.0」と表現すると、ちょっとご機嫌(ポジティブ)な状態が「1.1」、ちょっと不機嫌(ネガティブ)な状態が「0.9」になる。「1.1」の人と「0.9」の人が一緒にプレーする(掛け合わせる)と、1.1×0.9=0.99で「1.0」以下になる。
つまり、「ネガティブでいないようにすること」はとても大事なことなのだ。

とはいえ、誰でもヘコむときはあり、いつでも「1.1」でいられるわけではない。必要なのは「0.9になったとき、すぐに修正できるスキルがあること」、いわゆる「レジリエンス(修正力)」である。

また、文句を言いたくなるような状況で、イライラをぶつけて相手を「0.9」にするか、感情をコントロールして「1.1」にするかは自分で決められる。

アシトはフォワードからディフェンダーへの転向を告げられ、失意のどん底に落ちた。だが考え直して 天敵ともいえるディフェンダーの阿久津に「教えてください」と頭を下げる選択をした。「プロになって親孝行をする」という目的のために、自身の成長につながる「1.1の価値基準」で判断を下したのだ。どちらの価値基準を選ぶかは「常に自分で決められる」のである。

選択基準を言語化する

いくつかの選択肢から決めるとき、自分がなぜそれを選択したかを言語化できるときと、そうでないときがある。言語化できているときは、ほかの選択肢と比べて「こうすればうまくいくのではないか」と仮説(問い)を立て、それを基準に選択している。つまり、選択基準を言語化したものが「仮説」なのである。

著者はよく、モヤモヤしている人から「次のステージに行くためには何をしたらいいですか?」という質問を受けるが、「そもそも問いが間違っている」という。

「うまくいく人」の問いは、「今のステージをやり切るには何をしたらいいか?」である。彼らは目の前の仕事がもっとうまくいくように没頭し、やり切ったら自然と次のステージに誘われていく。
「0.9な問い」も「1.1の問い」にアップデートできれば、価値基準もアップデートされ、選択肢も増えていくだろう。

実行

「仮説→試行→検証→規範化」を高速回転させる

サッカーでも仕事でも、できるようになるには「テクニック」が必要だ。ただ、単に数をこなすだけではテクニックの習得は難しい。大事なのは「仮説→試行→検証→規範化」を高速回転させることである。

「こうすればよくなるのでは?」と仮説(問い)を立てて試しにやってみると、気づきが生まれる。その気づきから得られた学び(実証された仮説)をもとに自分の価値基準をアップデートすると、仮説は「仮」でなくなり、自分ルールとして規範化される。

仮説を持つと気づきが生まれやすくなる。それは、理想と現実のギャップが明確になり、課題が見えるようになるからである。

学びの取れ高を決める「ふりかえり」

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「仮説→試行→検証→規範化」における「検証」とは、「ふりかえり」とも言い換えられる。ふりかえりとは、やったことを言語化する作業である。

『アオアシ』において、「言語化の重要性」は大きなテーマの一つだ。言語化には「頭の整理ができる」「無意識の行動が意識化できる」「他人に伝達できるようになる」という3つの効能がある。

アシトはチームメイトの富樫に「何を見てプレーをしているのか、説明してくれ」と教えを乞われ、説明するシーンがある。このときアシトは「選手自身も言いながら整理できて、勉強になってるんや…」と言語化の効能に気づく。

アシトは富樫と「ふりかえり」をすることで、3つの効能を手に入れる。もしこの作業をしていなければ、ただプレー(実行)をしただけで、気づきの少ないまま次へ行っているだろう。学びの取れ高は、「ふりかえり」によって決まるのである。

▪️すゝめ

本書の最終章では、「才能」について書かれている。アシトには「視野の広さ」という稀有な才能があるが、本人はそれに気づいておらず、強みとして活用できていない。思考力を鍛える上でのベースとなる才能をどう開花させるか。気になる方はぜひ本書でご確認いただきたい。

サッカーとビジネスには「チームプレー」という共通点がある。初期のアシトはフォワードとして「自分で点を取る」ことに強くこだわっているが、徐々に「チームとして勝つ」ことの大切さを理解していく。ビジネスでも自分の業務にだけ没頭していては、いい結果は生まれない。周りとの連携のなかで、いかに考えて動いて成果を出していくか。本書にはそのヒントが詰まっている。

冒頭にも書いたとおり、本書は『アオアシ』を知らない方にも配慮されているが、やはり読んだほうが断然おもしろく、理解も深まる。「とにかく6巻までは読んでみて!」という私の言葉を信じて、マンガも一緒に楽しんではいかがだろうか。

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