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プレッシャーに負けずにベストパフォーマンスを発揮する方法/マジックコンテスト編

失敗が許されないマジックコンテスト。

いつもと違う環境にドキドキ。プレッシャーで胃が痛い。         

10年前まで海外の世界大会にチャレンジしていた頃、私も経験があります。これから夏に向けて国内外で様々なコンテストが開催されます。 

そんなプレッシャーを感じる状況において最高のパフォーマンスを発揮するメソッドをお伝えします。このnoteは過去に海外のコンベンションにて有料で行ったレクチャーと同じ内容です。

コンテストを例にしていますがコンテストに興味が無い方にも参考になると思います。5000字近くあり、ちょっとボリュームがありますのでカントリーマームをお供にミルクティーでも飲みながら気軽に読み進めてください。
 

最後まで読んで実践して頂ければ必ずあなたのパフォーマンスは劇的に上がります。誰かひとりでも役に立てば幸いです。   

①まず今、優勝してみよう! 


ハッ?何言ってんの?と思ったそこのあなた。
リラックスして椅子に深く座ってください。
目を閉じて自分が出場するコンテストにおいて優勝した瞬間をイメージしてみてください。       

受賞式で3位から名前が呼ばれていき、自分の名前は呼ばれない。。。  2位。。。呼ばれない。。。1位 〇〇さん!!(あなたの名前)        

やったー!!!と小走りに舞台へ。トロフィーを受け取り主催者と硬い握手を交わす。目の前には拍手で称えてくれる観客。喜びのあまり泣いてしまうあなた。 

実はこれ私がコンテスト時代に行っていたイメージトレーニング法です。
私がラスベガス大会で受賞するまでを追ったドキュメンタリー映画”Make Believe"にて受賞式で私が号泣しているシーンがあります。

自分が山奥でイメージしていた授賞式の情景と寸分狂わないものが実際に目の前に広がっていたので驚きのあまり泣いていました。

(2009年ラスベガス大会にて号泣する筆者)


このときからイメージトレーニングの大切さを深く理解しました。


ラスベガス大会の前は「前年度に優勝した自分が特別ゲストとして出演して最高のパフォーマンスを見せる」というマインドセットを自分にかけていました。ゲストなのですから、素晴らしい演技をして当たり前です。        

ゲストとして相応しい演技になるように当日まで練習と改良を重ね磨きをかけましょう。本番までにできることを全てして、言い訳のないように。

②まず演技を完成させる

コンテスト当日までの期間3ヶ月あるなら手順/道具/衣装を最初の1ヶ月で全て完成させましょう。練習の際に失敗したりつまづいた箇所は全て書き出して2度と起こらないように原因から潰します。練習で失敗したことは本番で起こりうる可能性があります。  
                   
バックアッププランを準備。備えあれば憂いなし。 

可能な限りバックアッププランを3つずつ準備しておくのが大切です。カードを落としたときのために胸ポケットに予備①テーブルに予備②ハットに予備③など。   

私の場合、例えばリスクが高いフローティングローズをする際は3重にバックアップを準備した状態で本番を迎えます。メインのマイク以外に予備に胸ポケットからITR①、キャンドルにITR②、最悪の自体に備えた左腕にLoops③ ここまで準備しておくと失敗に対する心理的ストレスを限りなくゼロにすることができます。

失敗は大きく減点されますが、失敗と気づかれなければ減点を回避することができます。

 

③ひたすら人前で磨いていく

 

全体を完成させそこから各パートの質を高めていきます。 

 残りの2ヶ月ではひたすら人前でコンテスト演技を本番と寸分狂わず同じように通します。敬老会、子供会、どこでも良いので人前で何度も演じます。
この一般の方に見ていただくというプロセスを経て、マジック界あるあるのマニアにしか通用しない演技というものが是正されていきます。

 100回の練習よりも一回の舞台の方が得るものが遥かにあります。 


本番まで残り1ヶ月になったら手順を一切変えないことが重要です。
目を瞑っても無意識に身体が動くレベルまで身体に染み込ませましょう。


④戦わないコンテスト 


演技が固まったらFacebook、Twitter等のSNSからログアウトにしましょう。youtubeも物理的に見れないようにしましょう。  


同じ大会に出場するライバル含め、他のマジシャンの演技を見ることを一切辞めましょう。大会当日も自分より前のコンテスタントの演技を見ないようにしてください。

ライバルに勝ちたい!という意識が生まれた瞬間、大きな心理的ストレスが生まれます。それがトリガーになり失敗してはいけない。。とマイナスの暗示がかかります。失敗してはいけないと思うとパフォーマンスが劇的に落ちます。人はコントールできないことに直面すると大きなストレスを感じます。他人をコントロールすることはできません。  


自分がコントールできる己のパフォーマンスだけに集中しましょう。


⑤パフォーマンスの質は自立神経が鍵を握る  


どうすればプレッシャーがかかる状況下において、ベストパフォーマンスを出せるのか。。。

この20年間、様々な書物を読んだり、認知科学の研究者との交流を通じてピークパフォーマンスについて研究と自ら検証を重ねてきました。

確信を持って言えることは本番前の気分と本番後の気分は同じということ。

大事なことだからもう一度言います。
本番前の気分と本番後の気分は同じになります。

本番前にモヤモヤした気分だと、本番も思い通りにいかず、終わったあとにモヤモヤが残る。逆に本番前に気分が良いと、リラックスしたパフォーマンスができ、本番後も気分が良い。

このことに気づいて以来、本番前の気分は本番の予告編だと考えるようになりました。いかに気分よく本番を迎えるかが重要です。  


⑥そもそも気分が良いってどういう状態?   


気分が良いという状況は医学的にいうと、リラックスした際に優位になる"副交感神経"とドキドキしたりすると優位なる"交感神経"のバランスが取れている状態のことを指します。

このバランスが崩れるとパフォーマンスの低下につながります。 


コンテストなど緊張感が伴う状況では、交感神経が優位になりテンパったり、胃が痛くなってしまう方が多いです。


余談ですが、複数のマジシャンが同時に出演するイベントで本番前に他の人がいる前でマジシャンが助手を怒鳴りつけているシーンを時々、目にします。あれは怒りによって本人のパフォーマンスが下がるだけでなく、他の演者にも悪い影響を及ぼします。テロ行為のようなものなので世界からなくなることを祈ります。

⑦具体的におすすめの行動


私の場合はコンテスト前日はゆっくりとお風呂に浸かっていました。      

海外のコンテストの場合、日本からいつも使ってる入浴剤を持っていくと良いです。ホテルのコーヒーメーカーでお湯を沸かしてお茶を飲んだり、味噌汁を飲みます。身体に対して、普段の日常ですよ〜と伝えてリラックスさせる効果があります。



スマホの通知は寝る2時間前に切り、睡眠を妨げないようにします。 


寝る前に最高のパフォーマンスができている自分をしっかりとイメージしてから眠りにつきます。それでもドキドキするかもしれませんが、あなたはもう優勝しているのであとは当日を楽しむだけです。

朝起きたら、湯のみ一杯のお白湯を飲み、お風呂にゆっくりと浸かります。
朝食を食べたら、ホテルの周りをゆっくりと散歩してください。
日を浴びることでさらにリラックスできる副交換神経が優位になります。 

このゆっくりと動くというのが副交換神経を優位にするのに役立ちます。  


会場にいく途中の横断歩道で他の人が焦って、赤になるまえに走って渡ろうとしてもゆっくりと立ち止まり、次の青信号を待ってください。

オードリー春日さんのようにゆっくりと優雅に歩き会場入りしてください。会場についたらスタッフの方々に笑顔で挨拶をしましょう。ニコッと笑った時に口角があがるだけでも副交感神経が優位になります。

控え室に入ったらストレッチをします。
折り畳めるタイプのヨガマットがおすすめです。


楽屋の角に敷くとあなただけのパーソナルスペースができます。
お気に入りの音楽を聞きながらゆっくりと全身をほぐしてください。

他のコンテスタントがバタバタ走り回っていようが、ドヤ顔でテクニックを披露してあなたに威圧してこようが、あなたにはまったく関係ないことです。ゆっくりと自分のペースを保つことに集中してください。


⑧本番直前の指差し確認

 

前の前の演者が終わりいよいよ次の次はあなたの番。最後に小さく声を出しながら指差し確認で道具と身体のセッティングを確認してください。
ジャケットに仕込みがある場合、ハンガーにかけた状態で仕込んでください。 

「カード ok! 紙吹雪 ok! シルク ok!」こうしてひとつひとつ目で見ながら指差し確認することで安心することが出来ます。これは普段の練習の段階から行ってください。 


⑨頑張らなくて良い 

 

自分の出番を待っている間は「最高の自分を発揮する」と何度も唱えてください。このとき「頑張るぞ!」と「気合いだ!」とかは禁句です。

 頑張るぞ!と唱えると脳内に、今より頑張らなきゃいけない!という暗示がかかります。あなたはここまで十分準備をしてきたのでありのままで良いのです。何ひとつ頑張る必要はありません。他の演者に「頑張って!」と声をかけるのもやめてください。 

⑩本番直前のトラブルを避ける

前の演者が終わり、自分の道具を舞台にセット。
この道具を置く作業は練習に付き合ってくれた信頼できる友人に頼みましょう。身体に道具を仕込んだ状態で屈むとセットが崩れるからです。

私は本番直前に舞台袖で必ず水を一口飲んで心を落ち着けます。 


全てが整って幕があくまでの時間は「私はお客様を愛してる」と何度も唱えてください。これはランスバートン氏から教えて頂いたメソッドです。
お客様を愛していると唱えることで幕が開いた瞬間に、愛のエネルギーを身体にまとってパフォーマンスをスタートすることができます。
 


あなたがお客様を愛した分だけ、お客様はあなたを愛してくれます。


いよいよ本番!! Don't think Just enjoy.

あなたはこの日までたくさんのことを犠牲にして練習してきました。 
本番は最高のご褒美だと思って心から一瞬一瞬を楽しみましょう。 

本番が始まったら、リラックスして無意識に身体が動き出しあなたは最高のパフォーマンスを発揮できるでしょう。

たとえ思ったようなリアクションがこなくても焦ってはダメです。本当はびっくりしすぎてリアクションが取れてないという可能性もあります。審査員にむけて演じるのではなく、お客様にむけて心から楽しんでパフォーマンスしましょう。 

パフォーマンスが終わったら次の演者のために舞台から速やかに撤収します。手伝ってくれた友人、舞台スタッフの方々に感謝を述べるのを忘れずに。舞台を終えたばかりで息があがっている場合もあるのでヨガマットに戻って軽くストレッチをして身体をニュートラルの状態に戻します。

フィードバックを頂く 

会場にいる尊敬するマジシャン・審査員の方に丁寧に挨拶をしてフィードバックをいただきましょう。結果を残してきた一流の先輩方のアドバイスは今後の糧になります。

たとえあなたのエゴが邪魔して批判的なアドバイスを今すぐ受け入れられなくても、いつかその意味を理解できる日がきます。
私もあのときに素直にアドバイスを聞いていればもっと早く成長できたのに。。。と後悔したことが何度もあります。
素直なマジシャンほど成長のスピードが早いです。

 
授賞式を終えて 


授賞式で例え自分の名前が呼ばれなくてもがっかりする必要はありません。他のショーやTVから依頼がくる可能性があります。

私は高校3年のとき鳥羽で開催されたコンテストに出場しました。自信満々で挑みましたが上位入賞はできませんでした。。。         

結果はダメだった...(涙) でもせっかく鳥羽に来たんだから温泉に入ろう!!と気持ちを切り替えて館内を歩いてると関西奇術連合会の西田会長が「君、なんかおもろいからうちのコンベンションに出てみる?」と声をかけてくれました。 

そのコンベンションにてクリスエンジェルや数々のスターマジシャンをプロデュースするJoaquin Ayala氏と出会うことが出来ました。
 

彼が私をプロデュースしたい!と名乗り出てくれて、翌月からホームステイさせてもらいラスベガスでの生活が始まりました。この出会いが私にとってターニングポイントとなりました。
優勝しなかった私をゲストとして招待してくれた西田会長は私の人生の恩人です。


(写真 筆者とJoaquin Ayala氏)


人生どんなタイミングでチャンスが転がってくるかわからないものです。

例え今、先行きが見えなくて不安でも、今できることを全てして言い訳のないようにベストを尽くせば必ず物事は良い方向に進みます。

このnoteが誰かの役に立てば幸いです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。

原大樹

www.hirokihara.com

www.wow-sugoi.com   



  

 

リュージョニスト/クリエイティブイノベーター/ NBCアメリカズゴットタレント"等世界25ヶ国以上のTV/舞台に出演。マジック演出wow creations代表。