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【業界地図オフ会】タイヤ業界の基礎と今後のトレンド

こんにちは、がぱけん(@gapaken335)です。

このアカウントは私が仕事や書籍、日々の気づきを通して考察したものを共有するものです。少しでもみなさまのインプットや気づきになると嬉しく思います。

今回は、おしばさん(@lumanabu)が主催している、業界地図オフ会に参加してみましたので、その内容をシェアします。

ちなみにおしばさんは天気業界。
サポーターによって支えられるウェザーニュースのビジネスモデルがとても面白かったですよ!

今回のテーマは「推し業界」ということだったので、タイヤ業界をチョイスしてみました。

花形産業である自動車に比べ、あまり話題に上らないタイヤ産業。
まさに縁の下の力持ち的なイメージですね。
そんなタイヤ産業にも、時代の転換が訪れており、掘ってみると意外と面白い業界なのです。

今回は業界全体の基本情報と今後に向けたトレンドについて
事例を踏まえてご紹介してみました。

それでは早速本題に入りましょう。


タイヤ業界の基礎知識。

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全体像のポイントは二つ。

①コモディティ化が進んでおり、企業の数は意外と多い
②タイヤ市場は新車向けと交換用タイヤの二つがある


①コモディティ化が進んでおり、企業の数は意外と多い

コモディティ化とは、モノやサービスの差別化が薄まり、価値が一般的になればなるほど起こる現象で、参入障壁が薄めになるので、新興メーカーなど中小規模のプレイヤーが多くなる現象です。


②タイヤ市場は新車向けと交換用タイヤの二つがある

意外とここが面白いのがタイヤ業界。トヨタなどの自動車メーカーに卸すBtoBビジネスと、一般消費者が購入するような交換用タイヤのBtoCビジネスの両方を持っているのが特徴です。

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国内上位三社のざっくりとしたP/L分析です。

国内メーカーに関しては、ブリヂストンが相当強い

利益率もブリヂストンは優秀で、原価率が他社に比べて低いのは、生産コストもあるでしょうが、ブランドプレミアムにより平均価格を挙げられている仮説も唱えられます。

地味に面白いのが売上高物流費率
タイヤって大きくて、重くて、運ぶのが大変なわりに、海外輸出もそれなりに起こっているので、物流費が嵩みがちです。

ちなみに棚卸資産回転期間は110日程度
自社で作って売るところまで行っている上、海外物流なども含めて膨れがちです。この辺は倉庫費にも直結し、物流費にも影響するでしょう。

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なた、コロナウィルス感染拡大の影響はガッツリと受けています。

新車の売上台数及び、車の稼働率低下の需要減少が原因です。


今後のトレンドは?

私個人として、中長期のトレンドは以下の三つだと思っています。

①市場規模は中長期的に新興国を中心に拡大見込み
②CASE/MaaSなど新たな形態での活用が求められる
③原材料のサスティナブルな調達が課題


①市場規模は中長期的に新興国を中心に拡大見込み**

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中長期的には市場は伸びます

理由は主に新興国
まだまだこれから人口が伸びる国において、自動車の普及率はまだまだ伸び代がありますし、車の種類も軽トラのようなモノからSUVなどへの変化も同時に起こる可能性が高く、単価も上がると思われます。

ちなみにそのうち20%程度が電気自動車になるそうです。


②CASE/MaaSなど新たな形態での活用が求められる

CASE/MaaSは今後の自動車のトレンドで、以下の頭文字を取ったものです。

Connected(情報が繋がる)
Autonomous(自動運転が実装)
Shared(所有するものから使うものへ)
Electric(ガソリンから電気へ)

ハードウェアエンジニアよりもソフトウェアエンジニアが重宝され(Connected)、タクシーの運転手の需要が減少し(Autonomous)、先進国で新車が買われなくなり(Shared)、エンジンを作っていた会社はモーターに仕事を奪われる(Electric)。

このような産業構造自体の大変革がゆっくりと、しかし確実に起こっています


タイヤ業界も例にもれず、このような流れに飲み込まれていきます。

とりわけ、タイヤ業界に影響があるのが「Shared」の部分。

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何が起きるのか?

端的に言うと「メンテナンスや耐久性の価値が上昇する」と考えられます。

人口あたりの新車の購入率が下がる代わりに、一台あたりの稼働率の上昇が見込まれます。

特に、シェアードサービスを提供している場合、パンクやすり減りなどのトラブルは大きな課題です。

個人の場合、金銭的な損失はタイヤの購入金額のみですが、事業で展開している場合は、顧客や荷物を載せる機会のロスや、人件費の高止まりに直結します。

じゃあとても耐久性が高いタイヤを開発しよう!

そのような話になると思うのですが、その方針にビジネスとしてのボトルネックが存在することも確かです。

耐久が高い = 交換頻度が低い となるので、販売数量が稼げないのです。

普通はそういったモノを作るときは単価を上げることで解消しがちなのですが、別の回答の可能性を示唆する事例がありました。

ミシュランがトラック向けサービスとして実装したIoTを用いたサービス化です

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タイヤにセンサーを埋め込んで、パンクの兆候やすり減りなどをモニタリングし、トラブルリスクをしっかりサポートする代わりに料金を従量課金にしたモデルです。

まさにタイヤのサービス化ですね。

さらに集めたデータは商品企画にも使うことで一石二鳥です。

このモデルの面白いところは、「耐久性が高いタイヤ」の顧客ニーズとビジネス的なインセンティブを一致させたところだと私は思います。

極端な話、永久に使えるタイヤを作った時、従来のモデルだと一回しか顧客から売上が上がらないのですが、このモデルであれば、サポートさえすれば永続的に売上が立つのです。

夢のチャリンチャリンモデルです。

「製品を売る時代から価値を売る時代」と言われて久しいですが、こちらもその流れを汲む良事例だと思います。


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各社濃淡はありますが、基本的に大手のタイヤメーカーはみんな「モノから価値へ」と言うことを掲げ始めており、業界全体のトレンドと言えるでしょう。


③原材料のサスティナブルな調達が課題

こちらは今話題のSDGsにも関係する話です。

みなさんタイヤの原材料ってご存知でしょうか?

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実は、一番多く使われている「天然ゴム」は木の樹液が原料なのです。

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採集の仕方はシンプルで、「木をナイフで傷つけて流れ出る樹液をためる」と言う方法です。

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労働としてはシンプルなので、発展途上国が主な生産国
設備投資もいらなく、規模拡大による生産効率化も限定的
それゆえに小規模農場が多いのも特徴です。

一家で一つ林を持っていて、樹液を採取するようなイメージの農家も多いのです。

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そんな中、天然ゴムの需要は右肩上がり
今後の自動車生産増も含めて、しっかり持続的にゴムが取れる仕組みの整備が求められます

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しかし、「単純労働である」「小規模農園が多い」と言うこともあり、現在は環境・労働力・持続可能性などに課題を抱えています。

単純労働で労働集約型のビジネスなので、子供が労働力として使われたり、生産拡大のために森林伐採が進んだ上、ノウハウがないため長期で活用できない形で生産されていたりしています。

この状態が進み、近年のSDGsトレンドと照らすと、現在スターバックスなどでよく見る「認定の農家からフェアトレードで仕入れたコーヒー豆です」と言うような世界観がゴム業界でも訪れるかもしれません。

ではどうすればいいのか?
重要なのはトレーサビリティの確保です。

どこの農家から仕入れているか?の明確化とその農家の情報の取得です。

そこで面白い仕組みを整え始めているのがミシュランとコンチネンタルです。

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スマホアプリで情報を収集してトレーサビリティを確保しよう!
と言う発想。

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この手の話で割と「ブロックチェーンで!」と言うような声が聞こえてきそうですが、このアプリは実にシンプル。

それぞれの仕入れ先にアンケートを投げて、その情報をつなげて、全体像をあぶり出す。と言うものです。

個人的には、最新技術に酔わない、良い手だと思います。

これらで怪しい業者や、搾取をあぶり出そうと言う作戦のようです。

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サスティナブルな調達は他タイヤメーカーもこぞって声明を挙げており、こちらのも大きなトレンドの一つと言えそうです。


結びとして。

タイヤ業界は、普段そこまで注目されない業界のような気がしますが、時代の波は確実に訪れています。

これまで、基本的な形や機能は変化しないような業界でしたが、もしかしたらニーズや自動車の変化とともに全然違う形のものが現れるかもしれません。

以下のGood Yearが出したコンセプトタイヤは一見冗談のようにも見えますが、実はこれがスタンダードになる時代が来るかもしれません。

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どんな業界も変化は訪れます。
これからの時代が楽しみですね。


関連書籍

今回は業界地図オフ会の内容でした。
今まであまり読んで来なかったですが、何か業界を調べたいと言う時に全体像を見るのはぴったりの資料です。

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