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新成人の皆さんへ。料理を覚えると一生楽しいですよ。

新たに成人を迎える皆さん、おめでとうございます。

とは言っても、今までのように誰かの庇護のもとに無邪気かつ暢気に過ごしていられた時間は次第に減るだろうし、こんな世の中だから大人になることはそれほど心躍るものでもないかもしれません。

でも、責任はもちろん伴うとはいえ、何と言っても自分自身で決断し自由に暮らしていけることが大人の最大の楽しみです。いろいろ考え悩んだりもすることがあるかと思いますが、まずはその門出を祝福したいと思います。

そして説教くさいかもしれませんが、皆さんより先にいろいろ失敗や挫折を経験してきたおじさんとしては、ひとこと助言のようなものをここに書き残しておきたいと思います。あっ、キモイ、うざいと思ったら読まなくていいし、もし辛抱して読んだうえで、お前の考えは間違っていると思ったら鼻で笑って忘れてください。

おじさんが一言伝えたいことは、もうタイトルにズバリ書いちゃっていますが……。

料理を覚えておいて損することはないですよー。

ズバリこの一言に尽きます。あー何だそれだけかよと思うかもしれませんが、これは僕が日々小さな台所に向かってコトコトグツグツジュージューやっているときに、折りに触れて実感していることなんです。

とはいえ「料理男子」と言って料理できる男のひとを持ち上げるノリが今もちょこちょこ見られますが、僕は正直この言葉があまり好きではありませんし、「オレ、料理男子。ウェーイ」と思って悦に入っているわけでもありません。なぜなら料理は女性のすること、と決まっているわけではないし、もうそんなジェンダー論は旧時代的過ぎるからです。

幸い、うちのオカンはそのあたり急進的な人で、僕が学生として一人暮らしを始めるにあたり「男だから料理しなくていい、逆に女だから料理しなくちゃいけないなんて何で決まってんの? 理由があるなら言ってみな」と僕に初心者のためのレシピ本を持たせてくれました。その本のレシピを片っ端から作ったわけではないにせよ、それで料理の基本が身についたことは感謝しているし、あのときのオカンの教えは今も大事に受け継いでいます。

だから男女にかかわらず、料理はできたほうがいい、という意味です。

料理ができると何がいいか? まずは当然、経済的に楽できる。

最近の食料品の値上げラッシュ、ご存じとは思うけどすごいですよ。スーパーに行っても、アレもコレも高くてなかなか買うのを躊躇います。それでも基本の料理を覚えておけば、いくらか食卓に彩りと潤いをもたらすことができます。

100gで108円という破格値で食べられる肉の塊も料理できてこそ。

この写真は先日食べた国産豚のスペアリブです。何軒もスーパーや商店街の精肉店をハシゴして、このお肉が国産肉では100gあたりいちばん安かったので購入(切り落としを除いて。切り落とし肉は冷凍ストックがまだある)。でも、ただ安いからだけで買ってもおいしく調理できる算段がつかなければみすみす材料を無駄にすることになるし、そもそも手が出ません。

その点、僕は何十年も素人ながらに料理をしてきて、こういう肉はとにかく煮込めばやわらかくなるということを経験で知っています(逆に言うと煮込まないと骨離れが悪くてガジガジ齧る羽目になる)。買い物した時間から夕食タイムを逆算して、煮込むヒマがあると結論してから購入。無事、二時間の煮込みタイムを経て、すっと骨が取れるやわらかスペアリブを堪能できました。

かかった材料費は夫婦二人分約500gで税込600円以下、つまり骨を入れた重量ではありますが一人250g見当で税込300円以下。外食するよりはるかにリーズナブルです。優勝。

そして料理できると、もうひとついいことがあります。それは……。

自分と、大事な人のQOLを上げられる。

これがいちばんのモチベーションと言ってもいいです。うちには子どもがいないので食事時が戦争になったりせず、のんびり仕込みができるという心の余裕もあってのことですが、大事な人においしいものを作ってあげることができるのはささやかながら確かな喜びです。

お金も地位も何もない、イケメンでもセクシーでもなく面白トークで笑わせることもできない、ピアノが弾けるわけでもない、このろくでなしの男性と結婚したことを妻に後悔させないため、少しでも一緒にいてよかったと思ってもらえるために何ができるかと考えたときに、いくらか料理ができてよかったとほんとうに思います。

何なら料理を通して節約もできて、他の趣味やレジャーになけなしのお金を回すこともできる。そのうえ健康管理もできて、その結果長い時間を一緒に過ごせる可能性が高まる。いいことづくしです。

家族・同居人・パートナーと共通の話題が増える。

これも大事な要素だと思います。うちは夫婦ふたりとも料理をするので、どの食材が切れたとか、買い足したとか、何を買うならどこが安いとか、冷蔵庫や流しの下、パントリー(廊下の片隅だけど)のストック情報を共有することが必然。そうすると自然と日常の会話が増えます。「駅前のスーパーでBIG BAGの『のりしお』が198円で買えたー!」「でかしたー!」なんて感じで。

相手に作ってもらうときすごく嬉しいし、おいしい。

大人である以上仕事もしなければいけないので、ときには忙しくてごはんを作っていられない日もあります。それが一週間続くときも。

うちではどちらか余力のある方がごはんを作ればいい、というスタンスなので、そういうときは妻に頼みます(というよりも妻の方が基本的には器用で丁寧なので、僕が暇なときに趣味で料理させてもらって、無理やり食べさせているに近いです)。そうすると「わあ何もしないのに温かいごはんが用意してもらえるなんて、なんて素晴らしい人と一緒に暮らせているんだろう」と素直に感動できます。いやマジで。仕事がテンパっているときにはしみじみ嬉しいです。

本当は掃除や洗濯もできた方がいいんだけど。

ここまで偉そうに書きましたが、実は料理以外の家事がからきしダメで、掃除洗濯は全て妻まかせ、せいぜい年末の大掃除のときに風呂場の掃除と窓拭きをするぐらいです。お金の管理もできません。ごめんなさいー。

だからあくまで独りよがりの趣味に無理やり相手をつき合わせているだけ、なのかもしれません。

でも毎日の献立を考えることは(ときどき脳みそのキャパ不足で何も思いつかないけど)生活に張り合いが出るし、今まで挑戦しなかったメニューがたとえば「〇〇の素」を使わずにできたりするとすごく達成感があります。漬物や発酵食品などを除けば、基本的にはすごく短時間で結果が出る遊びだと思っています。スタートからゴール、採点までが数時間で完結するゲーム。そしてゴールではうまくいけばおいしいものが食べられる。最高じゃないですか。

何にもいいことがなかった日、家でダラダラ過ごしているうちに夕方になった日、そんな日にもお腹は減る。よし、と気合を入れてキッチンに向かい、おいしいおかずが一品でも作れたらその日は「いい日だったな」と勘違いできます。

だから新成人の皆さん、自分には向いていないと決めつけないで、まずはゆで卵や目玉焼きからチャレンジしてみてください。一生楽しめるプレイグランドがあなたを待っています。



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