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「そんな悲しいこと言わないで」は言わないで。

緩和ケア病棟に入院していた祖母は、家族が面会に行くたびに「まぁはよ死にたい」「いつになったら迎えが来るんやろ」のような言葉を口にしていた。
そのたびに娘たち(特にうちの母)は「そんなこと言わんといて」「みんなが悲しくなるでしょ」などと返していた。

こういう会話、まわりでも聞いたことありませんか?


緩和ケア医との会話を今でも忘れないようにしている。

「おばあちゃんが『もう死にたい』とか言うことあるやろう?」

「ある、しょっちゅうある」

「そういうときに『なんでそんなこと言うの?』とか『そんなこと言わないで』って言っちゃうよなぁ」

「うん。悲しくなるし、聞くこっちもつらい」


「悲しいよなぁ。でも、家族にそう言われると、もう言ったらいかん、家族を悲しませたらあかんって本音を話してくれなくなる。つらいよって助けを求められない。僕たちは患者さんのつらさを少しでも取ってあげたいのに、その声を閉ざしてしまうんだよ」


そうだ、今病気でつらくて、死がせまって怖くて、助けを求めたいのは誰?

自分のつらさを、一番つらい人に押しつけてしまっているんじゃない?


「最初から否定しないで、『そうかぁ、もう死にたいほど、つらいよね』って相手が吐き出した言葉を先ずは受けとってあげて」

このときの医師との会話は、仕事で看取りに関わるときも、常に頭にある。
この人には言ってもいいかなと思ってもらえる関係性を築くことは、なにより大事なことだと思っている。
わたしたちは家族のように何十年という関係性がない。一緒にいられる時間が限られている中で、安心して最期を過ごしてもらいたいと思うとき、できるだけ気持ちを吐き出してもらいたい。


これは看取りに限った話ではないと思う。
相手の話を一旦受けとる。
「そうなんだね」「そう思っているんだね」
それは「あなたの話を聞いています」というメッセージ。
話を聞いてくれる人に話したい、自分なら。

あなたはどうですか?

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