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たてがみの犬

大きな犬と、生まれて間もない赤ちゃん。

赤ちゃんの興味は、

すっかり、ふさふさのたてがみを持つライオンのぬいぐるみのほうへと移ってしまう。

離れた部屋の入り口で犬はその様子を見ている。

声もあげずに。

赤ちゃんの父親は、それに気がつく。

まだ若い風貌。

スマホを取り出し、画面にタッチ。


翌日、届いたばかりのたてがみをつけた犬は赤ちゃんと戯れる。

穏やかな目をした、我が家のライオン

   

       ーといったところだ。


AmazonのCMである。


そんなことしないと、飼い犬は悲しい顔をやめられないのかとも思ったが、違う。

動物の成長は、人間のそれよりも早い。

人間のコドモは、本能と生理的欲求で生きるのが精一杯。

ほとんどすべての生物の幼体の可愛らしい姿は、養育を得るために授かる生命の仕組みだ。


パパがそれに気がついたところが、ショートストーリーの暖かな色味を生んでいるんだね。

黄味がかったピンク色と、オレンジが混ざったような、らんぷの灯りのような暖かさ。


気づくこと、アイデアを形にすること、そのように動くこと。

ひとにはみな、ぎざぎざしたなんとも飲み込みにくいものがある。

それを持ったまま、律して、微笑みを生み出せるのはとってもとっても高尚なことなのかもしれない。


ディスプレイに映し出される哀しい報せや怒り、なにかを狂わせるハイなエネルギー、穏やかな情景、観る人に勇気を与える人々の生きざま。取り入れたものを全部消化して、吐き出す(書き出す、描き出す)ときには光の粒に変えられたらいいな。そこに残るわずかな突起もぴかっと光って揺れ動く波のように描けたら。





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