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菜の花黄金漬け 滋賀・上田上に伝わる発酵 その1

滋賀県大津市の上田上(かみたなかみ)に、昔から伝わる色も香りも芳しい素敵な発酵がある。菜の花の黄金漬け、だ。4月上旬、菜の花の収穫が最盛期ということで、JAレーク滋賀さんのご紹介で、この道35年以上、農工房ひらの代表の寺元孝子さんに会いに行ってきた。

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前の日は、地元小学生が体験に来てくれたということで、嬉しそうな寺元さん。年齢はおばあちゃんだし、「腰が丸くなってエライわ(しんどい)」と言いながらも、収穫の手は早いし何より口はさらに早い 笑 話が止まらない。爆笑の連続。

笑ってばかりでは申し訳ないので、私も手伝うことにした。指で挟んで、花が咲いていてしかも蕾が残っている柔らかい部分を摘んでいく。「今日は花摘み日和や」
仲間は現在5名ほどで、それぞれの役割があるらしい。

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この地域は、山に囲まれていて盆地であり、隣の大戸川の氾濫で培われた砂地の土壌が、えぐみの少ない菜の花栽培に適しているとのこと。よその土地ではなかなか一緒の味にならないらしい。グーグルマップではここら辺だ。

田んぼが砂地で、故に水抜けがあり、稲作では水を入れ続けておく必要がある。したがって株が太らずお米の栽培も収量的には少ないのであるが、味は大変良いとのこと。大戸川からの綺麗な水が入る。

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そして、お米の裏作として、菜の花を栽培している。昔は菜種を取るためでもあったそうだが、この菜の花漬けが人気で今はそのために栽培している。タネは在来種と現在の品種と、3種類ほど栽培して、それぞれ収穫時期が異なる。あまり遅い品種は色が良くないらしい。

「食べてごらん」「この柔らかい茎なんか甘いやろ」
ほんと、甘い。「おひたしにしても美味しいで」

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何せ菜の花は可憐。蕾のある先っぽだけ摘んでいくので、硬い茎は使用しない。だから、ベテランが約1時間かかっても、これだけしか収量が取れない。(おそらく5kgくらい)塩をしたら半分になってしまう。
「花を食べるなんて贅沢なもんや」「塩したらビュッとなってしまうわ」

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「ここに菜種ができるんです」

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「お母さん手ぇ早いな〜」
「いやいや、ええやつヨラなあかんのやで」(柔らかいやつを選ばなあかん)

基本的には家族のため、地域の人のために作り続けているもの。浅漬けのような新漬けも作るが、しかし、何より半年ほど漬け込んだ「黄金漬け」の美味しさには全く敵わないという。

「ここら辺だけで作ってるもんやね」
「食べる人はどんな人ですか。若い人は食べますか」
「やっぱり年取った人かねえ」
「いやいや私の息子も孫もみんな食べるよ」

そういや昨日体験に来た小学生は、夢中に楽しそうに菜の花を収穫してくれたそうだ。
「子供の頃の記憶は、ずっと残るからな。私はお味噌作りも教えるんや。4年生は黄金漬け、5年生でお味噌作り」
「素敵な食育ですね」
「私が若いパワー吸い取ってるんや」
「じゃあ、、、毎年やらなきゃいけませんね」
「いくつに思ってくれる?」
「、、、68歳くらい、、、」(マナー通り忖度)
「おおきに!なんぞええもん買うで」

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「背ぇは縮むし、菜種は大きなるし。お医者さんに腰を伸ばす薬を出してくれっていうとるんやけど」
「そんな薬はないでしょう」
「寺元さん元気やでー。全ての段取りから何から全部やる。うちらは付いて行っているだけ」
「いやいやそんなことない、みんなでやってるんやで。それぞれの役割があってな。軽トラを出すもの、重石を持つもの。」

そんな話をしてる間でも、手は止まらない。寺元さんの掛け声で、収穫に目処をつけて、仕込み場所に移動することになった。

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寺元さんの原付姿がかっこよくて。思わず写真を撮った。「ここらの暴走族や」だってさ!

次回は仕込み風景をレポートしよう。


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