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【atマーケティングコラム】マーケティングと戦争の共通点

日本漢字能力検定協会が発表した今年の漢字は

「戦」

皆さんはどう感じましたか?

戦争の様子が毎日飛び込んでくることが
既に日常となってしまった今、
マーケティング業界では「辛い」という声が
上がるようになってきました。

というのも、マーケティング用語のほとんどが
「軍事用語」なんです。

顧客をターゲットと呼びますが
「標的」と呼ばれるとどうでしょう?
「おいおい、止めてくれよ」と思いますよね。

「キャンペーン」は軍事行動、ほかにも
「戦略」「戦術」「空中戦」などなど。

広告の歴史上、会議は男性だらけだったでしょう。
クライアントと打ち合わせをする際に、
共通認識できる軍事用語をメタファーに使ったことは
容易に想像がつきます。

さらに、ずっと主流だったマス・マーケティングは
どうしても「数で勝負」となってしまいます。
一人ひとりの生活者を思い浮かべるのではなく
人をまとまった数字としか見なくなる。
そうすると「囲い込む」とか「刈り取る」とか
上から目線の発想にもなりがちです。

戦争が身近になった今、
マーケティング用語と戦争とが
容易に頭の中で結びつく場面が増えたことで
違和感を感じるマーケターが増えています。

ただ、これは最近戦争が身近になったから、
だけが理由ではないと思います。
SNSの進化で、個人個人が見える化してきたこと、
これが根底にあった先に出てきたものだと思うのです。

マス広告のように鯉に餌を撒くようなやり方は、
上から下へという構造を内在しています。
「囲い込む」と言いがちな上から目線は、
顧客を数字としてマネジメントできる感覚になり
支配している気持ちまで持たせてしまいます。

戦争も同じではないでしょうか。
数字の向こうに「人間」を思い浮かべて
自分と同じ家族や仲間がいる人だと想像すれば
どうして銃撃することができるでしょう。

今、成功している企業の多くが
「目の前のひとりに喜んでもらおうと、
日々追及しているうちに業績が上がってきた」
と同じようなことを言っています。

顧客を数字ではなくひとりの生活者として見る、
広く浅く伝えるのではなく、
狭く深く伝えることで結びつきを強くすれば、
それが波紋のようにクチコミで伝わっていく
それが今のビジネスの形だと思います。

もちろんこれは、元々の日本の商売の基本であり
目新しいものではないのですが、
大量生産大量消費の時代に少し忘れられていました。
SNSによって個人とのやり取りが簡単になり、
しかも昔と違ってエリアに縛られなくなったことで
新たに浮上してきたのでしょう。

逆に顧客の側から見ても、これまでは
企業という大きな塊でしか見えなかったものが
「中の人」と言われるように
自分と同じ生身の人間が運営しているのだと
仲間意識すら覚えるようになっています。

所詮ビジネスは人と人とのやり取りです。
現場の息遣いを感じずに数字上だけで考えると
見誤るのだと思います。
戦争も同じかと。。。。

実は20年前、私がマス広告の業界を抜けたのも
同じ理由からでした。
上司もクライアントも生活感のない男性ばかり、
机上で戦略を練り、主婦としての私の意見は
まったく通りませんでした。

何かおかしいぞと。

生活者である女性たちの肌感覚、気分、正義感、
命へのこだわり、平和、幸せ感、そんなものを
クライアントにきちんと伝えることが使命だと
マーケティングの世界に飛び込んだのです。

ちなみにその頃から、
軍事用語に対する違和感は
女性マーケターの中でよく語られていましたね。

「戦わずして勝つ」

戦いたくないからこそ、
しっかりマーケティングするのだと
ある人に言われてハッとしました。
マーケティングとは戦うことではなく、
戦わないためにあるのだと。

来年こそは「楽」や「嬉」などの漢字が
踊ってほしいと願うばかりです。

今年も本当にお世話になりました。
皆さまの「幸」に少しでもお役に立てるよう
来年も精いっぱいサポートさせていただきます。

どうぞ皆さまよいお年をお迎えください。