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わたしは料理ができない

わたしは料理ができない。冷凍餃子はほぼ確実に焦がしてしまう。パンケーキは何度やっても丸く焼けない。ゆで卵は中身がドロドロか、硬すぎるかのどちらか。これらは3人の子どもたちの要望に応えてほぼ毎週のように作っているのに、一向に上達しない。

そんな我が家だが不思議なことに、週に3回くらい、誰かしら他人が家で夜ご飯を食べている。それは長男の悪童仲間であったり、長女の同じ保育園の友達であったり、彼らの気分によってバラバラである。

私は家で仕事をしており、そのことを知っているキッズたちはいきなり家にやってくる。気付くと我が子は家にいないのに、よその子どもだけリビングでおやつを食べながらくつろいでいる時もある。この状況が生み出された背景には、積年の苦い思い出がある。

小学生の頃からずっと、家で友達と遊びたいと思っていた。しかし母は片付けるのが大の苦手だったため、家はいつも散らかっていた。彼女は人見知りでもあったため「こんな状態で人を呼べないし、疲れるから誰も家に連れてくるな」と釘を刺されていた。
大学進学を機に上京し、一人暮らしができて家に呼べると思いきや「東京は怖いところだから」という理由で、女子寮に入れられてしまった。もちろん他人を部屋に入れることはできない。
大学四年生の頃、妹が上京したタイミングでやっと女子寮から脱出して、二人暮らしを始めたのだが、妹は母に似て、人を呼ぶことが嫌いな性格であった。
就職後は会社の独身寮に入っていたため、他人を入れたら始末書を書かなくてはならない。結婚して寮を出て、やっと人を家に呼べるようになり、今に至る。

家にいるのはいいとして、夜ご飯をどうするのか? ウーバーイーツを使うには、子どもの数が多すぎて高くつく。わたしは致命的に料理ができない。私は決めた。いつも同じものを出そうと。そして子どもたちに宣言することになる。「家ではポテト、唐揚げ、ピザしか出さない」と。

まず冷凍ポテトである。電子レンジで焼けるものもあるが、フライパンであげた方が美味しい。ポテトは安いものでいいが、塩は高いものを使うと高級レストランの味になる。トリュフ塩もリッチな気分にさせてくれるからおすすめだが、子ども達からはあまりウケが良くなかった。そのため「クレイジーソルト」を使うことが多い。

次に唐揚げ。これは少々手間がかかるが、失敗を重ねて作れるようになった。よその子どもたちが家に戻った時、彼らの親から「何食べてきたの?」と聞かれて「ピザとポテトだよ、以上!」となると、たぶん印象が悪い。唐揚げというタンパク質を食べてきたことで、なんとかまともな体を保ことができる……と思い込んでいる。
レシピは単純だ。鶏もも肉に、すりおろし生姜とすりおろしニンニクを溶かした醤油をひたす。バットに薄力粉をまぶして、鶏もも肉をちょんちょんとつけて、フライパンで焼く。子どもはそのまま食べてもらい、私はスイートチリソースをつけるのがお気に入りだ。

そして冷凍ピザである。冷凍ピザを美味しく焼くコツは、とにかくチーズを足すことだ。これで一気に店の味に近くなる。冷凍ピザは安いもので良いが、上に乗せるチーズは高いものの方が美味しい。
最近ではどのメーカーの冷凍ピザに、どのメーカーのチーズが合うのかを研究することにハマっている。「みなさまのお墨付き もっちり発酵生地を楽しむ ピッツァ マルゲリータ/楽天ネットスーパー」に「こだわる大人の配合S-1 ヨーロッパ原料指定のとろけるチーズ シュレッドチーズ/ハイ食材堂」を乗せるのが殿堂入りしている。

これらは週3回作っているので、さすがに上手く作ることができる。他のものは一向に作れるようにならない。夫に買ってきてもらうか、カレーかクリームシチューかハヤシライス(調理をしているのは電子調理鍋)のどれかでしのいでいる。

わたしは料理ができない。でも家に人を呼んで、みんなで何かを食べたいとずっと思っていた。オーガニックブームで逆風が吹いている冷凍食品だが、私の永年に渡る夢をかなえてくれた冷食たちには、心から感謝したい。

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