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THIS IS ME ~THE GRATEST SHOWMAN~

ミュージカルが好き。

歌うのも、踊るのも、自分にはできないことで、それができる人たちがうらやましい。

突然人々が歌いだし、踊りだすという現実ではありえない話なのだが、ただ演技をするのと全く別の伝わってくるものがある。

現実的ではないと言ってしまえば、それはそうなのだが、そんなことを言ったら、映画や小説、すべては作り物なのだ。

話が作り物かどうかではなく、そこに表された気持ちや動きによって、自分の気持ちが揺さぶられるかどうかが大事なのだと思っている。


画像は映画公式より

「THE GRATEST SHOWMAN」は、移動式サーカスを始めたP.T.バーナムをモデルにした物語。彼はそれまで社会に出ることが許されなかった「普通」から外れた人々=小人、巨漢、髭女、アルビノ、シャム双生児、有色人種などに光をあて、賛否両論を巻き起こしながらニューヨークの社交界をのし上がっていく。

2017年の公開とあるので、そんなに時間がたったのかと思う。

公開された当時、それぞれの歌の部分ごとに映像もたくさん公開されていて、YouTubeで何度も見た。特に「THIS IS ME」は気に入って、この曲で他の人が踊るのも含めて、色々見ていた。


普通の人と違うということで、これまでずっと傷つけられ、さげすまれ、そのため、隠れていた人々が、表舞台にたって、自信を持つようになっていく。そして今度は、傷つけられても、立ち上がって、戦い、堂々と「これが私」と言い切る強さに圧倒され、あこがれた。

ただ、YouTubeで見ることができたせいか、なかなか映画館で見るところまでいかず、本編をきちんと見たことがなかったのだけれど、最近アマゾンプライムで無料配信が始まり、さっそく見たのだった。

これまで何度も見た映像以外にも多くのダンスシーンがあり、むしろセリフだけの場面のほうが少ないのではと思うぐらいの量だった。映画館の大画面で見たら、どんなに迫力があるだろうと思う。

今回何より驚いたのは、「THIS IS ME」が流れる場面だった。

私はずっとこれは、普通と違うこと大変な想いをしてきた彼らが「普通」を振りかざす世間に対して向かう時の曲だと思っていたのだけれど、いやそれは確かにそうだったのだけれど。

この曲が流れる場面で、彼らを心無い言葉で切り裂いたのは、なんと彼らを救って、表舞台に引き上げ、自信を持たせたバーナム本人だった。

彼は上流階級に認められるために、成功したパーティからサーカスの仲間を締め出してしまう。その場面で流れるのが「THIS IS ME」なのだ。

もっとも信頼する人から受けた仕打ち、一度持ち上げられたところから落とされる辛さ、サーカスのメンバーの怒りと悲しみが込められた曲。

それでも彼らは物語の終盤ですべてを失ったバーナムを赦し助ける。それにより、バーナムも再び立ち上がるという流れなのだけれど、本当に今回見るまで、まさかそんな場面だとは思いもよらなかった。やっぱりちゃんとみないとだめだなあとしみじみ。

この物語はコンプレックスを持った人々がそれを克服する物語ともとれる。

もちろん、サーカスのメンバーが皆自分の見掛けにコンプレックスをもっているが、実は主人公のバーナムこそが、一番のコンプレックスの持ち主で、そのせいで大事なことが何も見えなくなってしまう。

そしてそのバーナムを救うのは、一見彼より大変そうなサーカスのメンバーたちなのだ。

彼らは、賢く、強く、美しい。

そんな彼らに支えられ、バーナムもまた自分が本当に大事にしなければならないもの=家族のしあわせに気づいていく。

改めて、「普通」とコンプレックスについて考えさせられる映画だった。

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