【書評】ネットの高校、日本一になる。

個性的な息子がN/S高(通学コース)に進学した。

N中等部(通学コース)に通っていたから、ドワンゴ学園の魅力も良さをよく知っているつもりだけど、この本を読んでみると、改めて知らないことや興味深いことがたくさん書いてあった。

N/S高のことを、「通常の学校に通えない不適合な生徒がいく学校」というイメージを持つ人も少なくないと思う。

しかし、N中に通わせてみて、とても先進的な学校だということがよくわかった。公立中や一般的な中学校の何年も先をいっているのが、N中だ。数年後に、日本の教育はようやくこういう形になるのだろうと想像できる。

N高の教育スタイルはコロナ前から変わっていないそうだけど、一斉休校という未曾有の事態で、世間の注目が一気に集まることになる。

日本一の生徒数になった高校。2024年4月現在で、29,000人ほどの高校生が在籍している。そのうち、ネットコースが21,000人超で、通学コースは7,000人ほど。

通信制なのに、通学する生徒が増えているのも注目したい点である。

大学進学者も毎年増えていて、東大や京大の合格者も出ている。特筆すべきは、東大や京大よりも、海外の大学を目指し進学している生徒が多いということ。

以前は別の高校から転校してくる子が多かったけど、ここ数年は、進学校からN/S高に入学する子が増えているそう。

N/S高では高校卒業に必要な学習はもちろんのこと、プログラミング、語学、イラスト、起業など、実に多様な学びの選択肢が用意されている。

「起業部」「投資部」「政治部」などのユニークな部活も話題になっている。

たとえば「起業部」は、起業準備金として1000万円が用意される。プレゼン審査を突破した生徒だけが入部できる。実際に起業部から生まれた法人もある。仲間割れや挫折などの失敗もあって、大きな気づきを得る。

「投資部」では投資家の村上世彰さんが特別顧問を務め、実際の株式投資を通じて金融の知識を身につける。投資部に入るのは選抜された生徒だけだけど、一人につき、一律20万円の投資資金を提供される。失敗も許される。

まさに村上さんによる「投資を始める君たちへ」というオンライン講座が先日開催されたので、息子と一緒に視聴してみたのだがものすごくおもしろかった。

「政治部」には現役の国会議員がゲスト講師として話をしてくれる。麻生太郎さんや枝野幸男さんや三浦瑠麗さんなど。

「美術部」は1000人を超える部員がいるそうだ。プロのイラストレーターやデザイナーが顧問を務め、作品を添削してくれたりアドバイスをしてくれる。私の息子も早速入部したらしい。

「eスポーツ部」は全国大会で優勝している。大会は目指さずにただ好きで楽しみたい生徒にも開かれた雰囲気。

その他にもありとあらゆる部活や同好会が存在する。

N/S高は、先進的な学習システムについて、世界から注目されているそうだ。オンライン高校で卒業率も高い高校として、世界一のようだ。

・「N予備校」という学習アプリで双方向の授業を可能にしている。
・ネットを活用して友達ができる
・将来の仕事につながる教育プログラムを多数用意している

N/S高でやっていることは、文科省がやろうとしている教育の情報化、GIGAスクール構想に沿っているのだという。

個別最適な教育を実現して、社会との接点もたくさん作ってくれる。

他の高校から転職してくる教職員も激増していて、幼い子どもを育てるシングルマザーの先生も仕事を続けることができているそうだ。

一方で、N/S高で働くことは学び直しの機会に恵まれるという利点が教員にある。

ほんとおもしろい学校だなと思う。

息子にはN/S高をとことん使い倒して、たくさんの経験をして、自分の世界を広げていってほしいと思う。

2024年4月現在のN/S高に関する情報をまとめてみた。

卒業生の人数
2022年度 7,588人
2023年度 9,115人

卒業率
98.7%(3年生のみ)
86.6%(入学から卒業まで3年間通った人)
92.3%(転学・退学者を除く)

大学進学を希望する人
50%

大学進学する人
45%

大学合格実績(累計)
国公立大学 170名
有名私立大学 1954名
早慶上理ICU 153名
GMARCH 339名
関関同立 210名
医学部医学科 10名
美術・芸術大学 96名
海外大学 138名

大学に進学したい人はフルにサポートを受けられて、それ以外の進路を希望する人にもサポートしてもらえる。

また、日本でも増えてきている「総合入試」型に対応しているのも、大きな魅力の一つ。

総合入試型の受験とは、
・試験(基礎、教養)
・エッセイ
・面接

知識、技能、思考力、判断力、表現力、学びへの意欲、人間性などが総合的に問われる。

N高立ち上げから携わっている川上さんが、このようなことをおっしゃっていた。

「この勉強は本当に役に立つのだろうか?と既存の学びに違和感を感じる生徒と、何も考えずに勉強する生徒はどちらが本当に頭が良いのだろうか?」

「違和感を感じる子の方が、本当は勉強したいのではないか。学びたい子がドロップアウトさせられているのではないのだろうか。」

「社会ではアウトプット力が求めらるし、大学受験でも総合的な力が求めらるのに、プレゼンなどは教えない。」

N/S高のスタイルは、どの高校生にも合うとは思わない。合わない人もいるだろうし、合わない人の方が多いのかもしれない。

私の息子については、本人の特性に合っている学校なので、出会えて良かったと思う。


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