それをしてしまう理由（４）

コミュニケーションなど必要のない家庭で育った自分

私がNLP子育てCOACHで学ぼうと思ったのは、自分の職業であるピアノの先生としての在り方に疑問を感じたからです。

人との関わり方に問題があるのではないかと感じ、コミュニケーションを学ぼうと一念発起しました。
これが私が初めて「人を理解したい」と思った出来事でした。

それまで私は、自分の育ってきた家庭で話し合いをすることはありませんでした。
母が何かを決めて、それを行う。私に興味があれば行かせてくれるが、興味がなくなるとやめさせる。

母が何か目的をもって習わせるということはありませんでした。父も仕事でほとんど家におらず、父のルールなどは一切ない父親不在の機能不全な家庭でした。
NLPのコーチングで、自分が知らなかった「自分自身」を知りました。
それから、私一人だけの世界から「他人の意見を聞いてみたい」と初めて思いました。それが夫のことをもっと知りたいという気持ちにつながったと思います。

夫が私に「偉そうに」と言った意味

人と関わっていくうちに、私が「コーチをやりたい」と思い、それを夫に伝えた時、夫は「偉そうに」と言いました。
なぜそのような言い方をしたのか、その意味がずっとわからなかったけれど、夫の価値観を理解した時に、わかったのです。

「自分（夫）に相談もできないくせに、コーチになろうだなんて、偉そうに」

ということだったのです。
NLPは不思議なもので、本人に確かめてはいないけれど、相手の価値観で、相手のマップで物事を見られるようになると、相手の気持ちがわかるようになります。

それにはまず、自分を知ることなんです。
自分の思い込みをなくすこと。
それが、相手の価値観を理解する第一条件なのです。

夫に謝らなければいけない。
と思いました。
でも、これだけのことをすべて説明するのは、身体で感じることの多い体感覚優位の私にはとても難しかったので、夫にメールを出すことにしました。

私は深く傷ついていた理由

キーボードで文字を打ちこんでいる間、なぜだか滝のような涙が、ボロボロ流れていきました。この時は、ほんとうによく泣きました。２日間かかって、まだまだ泣けました。涙が止まらず、心の深いところから溢れ出てくる感情に押し流されていました。

その時はわからなかったのですが、後で思い浮かんできたものは、夫や子どもに言われた嫌味に、私が深く傷ついていた、ということでした。
何気ない言葉の裏に潜む鋭い棘に、心が蝕まれていたのです。

そしてあの嫌味は、まったく母のようだったのです。
私がいつも母から浴びせかけられていた違和感のある言葉でした。母の言葉は、常に私の心に重くのしかかり、その影響が今でも私を苦しめていることに気づきました。

自分にとって大切だと思っていた人から言われることは、とてつもなくつらかったことでした。その言葉が私にとって何よりも大きな痛みとなり、心の奥深くに刻まれた傷となって残っていたのです。

悪い行動の背景には肯定的な意図がある

その後、私が母と関わる時のことを思い出しました。
私が嫌な気持ちを持った時、それを母に訴えても、母は
「私が変になった」「おかしくなった」と取り合ってくれません。
すると、最後は言った言わないになってしまい、言葉は何の意味もないものになってしまいます。

話し合いができない家庭。

そこで、言葉の代わりに出るものは、手をあげること。つかみかかったり、物を投げたり。
その時の感情を思い出しました。怒りや悲しみが込み上げてくる瞬間、その感情をどう処理すればよいのかわからなかったのです。

自分が人に関わる時は、ケンカになる。
ケンカは最終的な手段です。ケンカになったら、その場にいたくないので、外に出てしまうのです。
しかしケンカは疲れるし、やることもないのに、何も持たずに外に出ていくことは苦痛でした。だからケンカをしなくて済むように、嫌な言葉を聞いても、無視するようにしていたのです。
違和感のある言葉を聞きながら、無視して、ずっと我慢をする。

ケンカで人と関わる、というような自分の思考・行動パターンができていたので、無意識に人と関わらない選択をしていたのでした。
他の人と関わることが怖く、避けるようになってしまったのです。結果として、人間関係はさらに悪化し、孤独感が増していきました。話し合いができない、感情を共有できない、その孤独感は深刻でした。

孤独と戦う日々。
このようにして、私は人と関わること自体を避けるようになり、自分の殻に閉じこもってしまったのです。自分の感情を抑え込み、誰にも分かってもらえないという思いを抱えながら、一人で戦う日々が続いていたのです。