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トイレットペーパーは賢く売れ!

2020年3月4日付けのITmedia ビジネスオンラインには、トイレットペーパーを「買い占める」ほうが”合理的”であるシンプルな理由と題して、以下の記事が掲載されていました。

(以下記事内一部転載)
… デマによって人々が買い占めに走るという行動は、経済学におけるゲーム理論から紐(ひも)解くことができる。重要なポイントを先出しすると、「トイレットペーパーが輸入できなくなる」という情報がデマか真実かは関係ない。つまり、誰もそのデマを信じていなかったとしても買い占めは発生し得る。…

私はこの記事をNewsPicksにて拝読し、僭越ながら次のようなコメントをさせて頂きました。


筆者は経済学のゲーム理論から考察していますが、行動経済学におけるプロスペスト理論からも「買い占め行動」を説明や理解することは可能です。プロスペクト理論において、このようなケースでは、消費者に損失回避バイアスが生じやすいとされます。

損失回避バイアスとは、人は将来的なメリットよりも、目の前にある利益が得られない場合の「損失感」の方がより大きなものと感じてしまうため、それを回避しようとする思考の偏りや行動の偏りが出てしまうという事です。

例えば、今日もらえる1万円と、1ヶ月後にもらえる1万1千円では、1ヶ月後にもらう1万1千円の方が利益が大きいのですが、多くの人は今日もらえる1万円を選択してしまいます。

具体例としては、あなたの目の前に不足している言われているトイレットペーパーがたまたま売っていたとします。本人は必要ないが買わないと損した気分が強くなってしまうため、買ってしまう人が多いということです。

更に、マーケティング論の観点からは、昨今の消費者行動には自己実現欲求を満たしたい行動が見受けられますので、その欲求を満たしてあげるのも混乱を収束させる一つの方法です。つまりは、買い占めさせてあげるという事です。但し、正しい方法で買い占めをさせてあげる必要があります。

その為には、マネジメントや経営学を心得たリーダーたちによって、正しい情報の発信と、正しいオペレーションが必要になります。

今回のケースにおいては、トイレットペーパーを販売する側は、在庫が沢山あることを知っていますから、販売に制限をかけません。しかしここできちんと、お一人様一点限りとして、それ以上は別途制限なしで取り寄せ可能などと周知すれば問題は回避しやすいと言えます。
取り寄せの際には、「こんな時だからこそ、いつもお世話になっている常連のお客様たちには、出来る限りのことをさせて頂きます!」みたいな一言を添えてあげれば、お客様の心はイチコロです。

販売する側としては、「ニーズがある売れる時にいくつでも売りたい」「お店に活気が生まれる」「お客様が毎日通ってくれ追加消費が見込める」など、目先の利益に惑わされず、信用を維持したまま"賢く売る"方が長期的な利益に繋がるのだという視点も忘れてはいけません。

(2020年3月4日付け #NewsPicks にてMBAデザイナーnakayanさんのコメント より)


中山兮智是(なかやま・ともゆき) / nakayanさん
JDMRI日本経営デザイン研究所CEO兼MBAデザイナー
1978年東京都生まれ。建築設計事務所にてデザインの基礎を学んだ後、05年からフリーランスデザイナーとして活動。大学には行かず16年大学院にてMBA取得。これまでに100社以上での実務経験を持つ。
お問合せ先 : nakayama@jdmri.jp

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