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ああ、夏休み 大きな空と自由な雲

暑い日が続くが、今日も公園では虫取り網を持った子供たちが汗をかきながらキャッキャッと蝶や蝉を追いかけている。

炎天下なのに、帽子をかぶっただけでニコニコと友達とサッカーボールを追いかける子たちもいる。

みんな夏休みを思い残すことなく楽しんでいる。

「夏休み」この言葉だけでも甘く切ないイメージが蘇る。

やはり、小、中学校の夏休みが一番思い出がある。

部活動や補習授業に追われたり、宿題に悩まされたりしたが、あの長い期間自由時間が増えると思うと、夏休み直前が一番気持ちが躍った。

休み中は毎日のように、近くの川に設けられた地区の水泳場に出かけ、大勢の子供に交じって泳ぎまくっていた。

夏の暑い中、自転車で水泳場に行き2時間ほど水遊びをする。プールと違って、流れも深みもあるし大きな岩もある。

深く潜って綺麗な石取りをしたり、魚を追いかけたり、大岩から飛び込んで水しぶきを上げる。

途中一度の15分の一斉休憩時間には川辺の砂地にに寝転んで青い空を見上げていた。

プールでも海でも川の水泳場でも、よく寝そべって空を見た。

田舎の夏の空の青は凄味がある。

雲もエネルギーをもって膨れ上がっているから、迫力が違う。

あの青は、一番きれいな空気の色なんだろうか。

あの大きな雲の中には何か隠れていそうだな。吹き飛ばしてみたいな。

空を見ているだけで時間を忘れた。

泳ぎ疲れて家に帰るとお昼寝だ。程よい疲れで気持ちよく昼寝できていた。

子供の頃はおなかもすぐに空く。昼寝の後は縁側でスイカを食べる。

田舎だったのでスイカはたくさん用意されていた。冷たいスイカを堪能したら、そろそろ夕方。

実家の庭には泉水があって花や木も多く、それらにホースで水遣りをする。

ホースから激しい勢いで噴出する水を庭中にまくと虹ができて気持ちがいい。指先に感じる水の躍動感も面白い。

夕暮れ時に、ツクツク法師がもの悲しい鳴き声を上げる頃、両親が仕事から帰って来る。

みんなそろっての夕食。

蚊取り線香の香りの中、庭で花火もした。

子供部屋はあったが、何となく寂しくてリビングのテーブルで勉強した。

夜は、窓を開け、網戸からの風の中で寝た。

エアコンなんていらない。扇風機がある。

田舎なので周りは田んぼ。

月明かりの中、夜空の美しさを布団に寝ながら楽しんだ。

周りの田んぼからはうるさいくらいのカエルの大合唱。
牛が吠えるような大声で鳴くやつもいる。

勉強や学校に追い回されない、のんびりした毎日。

今思えば、あの時代、あの田舎で夏休みを何度も味わったのは幸運だったんだ。

山と川と青空に囲まれて、走り回った子供時代。

今でも「夏休み」と聞くと ああ、いいなあ  とうっとりする。

思い浮かぶのはあの青い大空と躍動する雲。

甘酸っぱい感傷とともに。


絵 マシュー・カサイ「大きな空 自由な雲」 水彩・ペン



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