道草の楽しみ 光のテーブル
外出の用事が終わった後、道草するのが好きだ。
時間に余裕があれば、知らない脇道に入るのがいい。
知らない街角。
何となくドキドキする。
面白い建物、不思議なお店、きれいな花壇、立派な豪邸、廃屋、何かの工場、暗い裏路地、懐かしい下町、小さな神社、子供たちの遊ぶ学校・・・
初めて見る景色は気持ちに刺激を与えてくれる。
こういう時は一人がいい。
そっと覗く知らない人たちの世界。
どんな人たちが何をしているんだろう。
すれ違う人たちの会話まで耳に入って来る。
面白い。
あちこち歩いて疲れたら、休憩するのもまた楽しみ。
初めてのお店。
今日は春の陽気を楽しめるオープンカフェ。
道沿いに日除けの張り出した日陰にテーブル席が並ぶ。
一つだけ、日差しの中にある端っこのテーブルが目についた。
スズメが二羽そのテーブル席の周りを飛び回っている。
日陰の席に座ろうと思っていたが、明るいその席が何か特別なもののように感じた。
座ってみるとさほど暑くもなく、街路樹からの木漏れ日が美しい。
ここは風が心地いい。
新緑がはっとするほど鮮やかに見える。
こんな日はコーヒーより昼間からビール。
少しの罪悪感を感じながら明るい街を眺めて飲むビール。
炭酸の弾ける音、きれいな黄金色、喉を通る爽快感。
春の日差しは優しく柔らかく美しい。
街も人の姿もほんのりやさしく見える。
あっという間に過ぎていく春を、堪能してやる。
きっとこの景色とビールの味わいも私の記憶のアルバムに挟み込まれる。
今日という日の宝物として。
絵 マシュー・カサイ「道草の楽しみ 光のテーブル」水彩
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