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雨上がりの空に。  夏の入道雲

急に空の機嫌が悪くなったような雨だった。
冷えた風が吹いたと思うと、あたりが暗くなり一挙に降り出した。
雷まで鳴り響き、周りはもわっとした水蒸気の世界になった。

雨の匂い。

焼けた道路や電柱、ビルや街路樹が、雑草が、雨水を浴びて薄い湯気を上げる。薄黒く変色していく。

生ぬるい湿気の渦の中で、激しくはじける雨音を聴いていた。


雷が遠くなっていく。
やがて怒りが収まったかのように雨の勢いが弱くなった。
短時間で激しい通り雨は止んだ。

あれだけ暗くなっていた空は、青く晴れ渡ってきた。
まだ、雨の後のむんとした湿気はあるが、蝉は元気に泣き始めている。
風を感じて外に出ると、黒い雨雲は東へ逃げるように小さくなっていった。

また夏の強い日差しが照り付け始めた。
見上げると、見事な入道雲。
真っ白に輝きながら大きくなっていく。
夏の主役が登場した。

空も雲も輝きを増す中、今度は大きな虹が見えてきた。

大きい。雲も虹も青空も。

夏の空はこんなに大きかったのか。

ありんこのような私を見下ろしながら、雲はゆっくりと流れていく。
華やかな虹を纏って蝉の大合唱の中、流れていった。

見惚れていた私が、ホッとため息とともに我に返る。
まるで壮大な映画でも見ていたような気分。

夏空。 自然の描き出す一瞬の芸術。


絵 マシュー・カサイ「雨上がりの空に。 夏の入道雲」水彩・鉛筆


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