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『神話と日本人の心』の感想

本日は、ユング心理学者の河合隼雄先生の著書『神話と日本人の心』です。

第二次世界大戦では、プロパガンダとして神話が利用されたこともあり、先生は神話に対してあまり良い印象をお持ちになりませんでした。

しかし、留学先で自分のルーツを知るのに神話も関わってくることを知り、日本の神話に触れることになります。

心理学の視点で神話を分析するわけです。



日本神話は誰か偉い神様がいるのではなく、皆さん等しく尊い存在です。

外国の神話を見てみると、例えばキリスト教は一神教で偉い神様がいて、他の神様を支配するような形です。

このことから見ても、日本の和を重んじる風潮が神話から連綿と伝わってきているのかもしれません。


敗戦後、それまで教えられていた神話は、学校で教わらなくなりました。

忘れてるだけかもしれませんが、私も学校で神話を教わった記憶はありません。


かつての日本人は、皆さん神話を教えられていて、偉大な何かに守られているという安心感を持っていたと言います。

現代日本よりもずっと命の危険は多くて、物理的な不安がつきまとっています。

神話により、心理的に安定することで生きていけましたが、個人の自由は束縛されていました。


うちもそこそこの田舎ですから、なんとなく個人の自由がない感じは分かります。

現代では、科学技術の発展により、便利で快適な生活を送ることができています。

しかし、神話が読まれていた時代と比べて、孤独感や不安がすごい。



そこで、自分の神話を各々が見つけ出すことが必要だと『神話と日本人の心』は教えてくれています。

そのうえで、自分の神話に責任を持つことがとても重要だと言います。




女性は、20歳くらいで結婚して、30歳前に出産して育児して家事をするという昭和時代では、当たり前のロールモデルは、今は一握りの方々だけしかできなくなっています。

当時からこのロールモデルに合う方、合わない方が当然いて、合わない方には本当に苦痛な時代だったと思います。

このあたり、多様化の波が来ているので、このロールモデルに合わないであろう私は、めっちゃラッキーなのかもしれません。

逆に、昭和時代のロールモデルが合う方にとっては、今はとても大変な時代なのかもしれません。

どちらであっても、自分に合うロールモデルを探していかなければならない時代ですから、この本をちょうどいいタイミングで読めたと思います。


ロールモデルと神話は、少しニュアンスは違いますが、ロールモデル=神話とすれば自分の生き方のロールモデルを探すことにもなると思います。

神話を読むことは、自分の生き方を探すためのヒントとなりえるのです。



『神話と日本人の心』では、天地創造から神様のことを分かりやすく解説してくれています。

ちゃんと読んでいたはずなのに、知らんうちに主人公の神様が知らん神様になってた、とかいうことがなく、エピソードも紹介してくれているので、とても理解しやすいです。

大まかな流れもつかめるので、日本神話を本格的に読んでいく前に読むのもおすすめです。



また、外国の神話との比較もあるので、とても興味深く面白い。

全然別の国なのに共通している部分が多いことも驚きです。

人類の考えることはだいたい同じなのか、はたまた都市伝説的に宇宙人が神様として君臨していたのか、神話から考察してみるのも面白いと思いました。



『神話と日本人の心』は、2003年に出版された本ですが、むしろ20年後の今読む方が、内容を真剣に受け取ることができる本だと思います。

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