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多様な学び

1/27にNHKで放送されたNHKスペシャル「“学校”のみらい 不登校30万人から考える」及び1/11にオンライン発信された、「多様な学びプロジェクト」のシンポジウム「不登校当事者の実態等ニーズを把握し、官民共創でつくる効果的な施策とは」(アーカイブ視聴)について触れていきたいと思います。
 NHKの方は「君の声が聴きたい」というプロジェクトの一環として2部構成で放送されたもので、フランスや韓国の海外事例と日本の実態を比較して今後目指すべき方向性を示唆したものでした。
 1部では日本では不登校者29万人(小中学校計の統計データ)中、相談・学習支援をまったく受けていない子どもが11.4万人いることと、フランスではそのように手の届かない子どもをなくすために、月2日以上休んだ子どもを行政が調査し支援学校で、国家資格を持ったエデュケーター(全国で6万人)が個別支援するプッシュ型の支援制度(無償)が確立されていることが紹介され、これは有効だなと思いました。
 2部では当事者OB(インフルエンサーのひかりんちょさん他)やフリースクール関係者、教育関係者の方のディスカッションがありましたが、昨今の不登校生急増報道の露出拡大を受けて、国(文科省)も対策を打ってますよ的な、やや言い訳めいた内容が多く、学校やフリースクール、自治体の事例も紹介されましたが、肝心の施策については現行の教育支援センターの強化(学内センターの拡大や民間への運営委託拡大等)と多様化学校(指導要領のやや緩い学校)の拡充、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーの拡充といった感じで、当事者満足度の低いものの継続が多かった感じ(世田谷区の事例等教育支援センターの民間委託は当事者からかなり好評とお聞きしています。)で「血の通った」制度変換への熱意は残念ながらやや乏しく思いました。
 当事者(親)からの第一希望である居場所への財政支援の強化について、NPOの生駒さんやフリースクールの古川さんから要望が出されましたが、文科省からの力強い回答はなかったです。まずは基本的な課題認識を共有したというところでしょうか。
 次いで「多様な学びプロジェクト」の方ですが、今回、当事者(①保護者②18才以下の経験者③19才以上🟰成人の経験者の3ブロックに分けて)への大規模なアンケート調査(23年10〜12月)が実施されたことを踏まえての開催でしたが、幅広く当事者の生の声が吸い上げられており、画期的な内容であったと思います。
 まずは文科省のアンケート(学校・教師に対して毎年実施)とのギャップ(文科省調査では第一原因が本人由来の無気力・不安感がダントツなのに対し、今回の調査による当事者が回答した不登校の原因は①先生との関係②学校システムの問題③授業についての不満であること。)、そして以前は友だちとの関係(いじめ等)が第一原因であったが、昨今は前述の3要因の構成比が上位を占めるようになったという事実にインパクトを感じました。
 また初めて顕在化したのではと思いますが、親の経済的負担の大きさ(不登校に伴う新たな支出の拡大、退職や時短等の就労への影響、フリースクール費用の自腹負担等)が結果として出ています。(私も当事者として経験し、行政の委員会でも言及しました。)
 後半の当事者も含めたディスカッションの中では、昨年文科省から発表された新施策も盛り込んだCOCOLOプランが紹介され、文科省の意識の変化(当事者との定期的な情報交換会も実施されているとのこと)は感じられましたが、まだスタート地点という感じで、現場教師の方の多忙さや学習指導要領の縛りのキツさや情報、ノウハウのなさへの支援も圧倒的に不十分な感じか伝わってきした。
 官民共創の事例として長野県の事例が紹介され、フリースクール支援を推し進めるための課題(関係者の認識の擦り合わせが難しいことや認証の基準、担い手、役割分担、財源、学習指導要領との関連等)が顕在化され、コミュニケーションレベルを高めて対応を試行錯誤していくとのことでした。
 拙速な制度化に問題が多いのは事実ですが、不登校当事者が広義の推計では中学生で約一割とかなり多いことと、当事者親子の精神的、社会的な負担が共に相当大きいことを考えると、迅速で踏み込んだ財政支援(フリースクール運営者やスタッフへの支援も含めて)が早急に必要だと感じました。
 最後にNPOの西野さんや、学者の荒井さんから触れられていますが、不登校の問題は子どもや学校だけの問題ではなく、資本主義の過度な進行という社会全体の問題から生じており、より幅広い根本的な社会課題として、すべての人々が当事者であるという認識を社会全体で高めていく必要があると思いました。

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