所感240408

「精神医療 第12号」

「日本の精神科医療制度は諸外国のそれと比べて問題が多い」と言われるが、具体的にどこが問題なのか、よくわからないことが多かった。
病床数が多いこと、非自発的入院が多いこと、入院日数が長いこと。
確かに、なんでも数が多けりゃ良いというものではないことはわかるし、これらを全肯定するつもりはさらさらない。
ただ、物事には必ずそうなってきた歴史があるはずで、日本という島国だからこそ構築されたこのシステムで、この体制だから救われてきた人たちもいたのではないかと、思わずにはいられなかったのだ。
諸外国の精神科医療制度は、本当に問題は少ないのだろうか。困ることはないのだろうか。
この疑問を解消しようとネットで各国の医療体制について調べてみても、「システム」については理解できるが、その深いところまでは見えてこないことが多かった。
現地ではどんなことに困っていたのか、どういう背景、歴史の中でその体制に辿りついたのか。
本書は、その知りたかった「素の部分」が垣間見える特集であった。
取り上げられた国は一部だが、それでも今まで考えもしなかった視点や、その国で起きたであろう苦労を想像するには十分だった。
他国で共通していたのは、国や州という比較的大きなコミュニティレベルで制度を整えてきた歴史であり、これは現在の日本の精神科医療制度に致命的に足りていない要素だと思えた。
病院単位、個人単位の努力では、現在のシステムは変えられない。
現在の、国が現場を縛っていくだけの方法では、抜本的な改革は得られないのだろう。
法制度の変遷が激しい今の時期に、読んでおいて良かったと感じた。


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