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七夕の短冊に願いを託して ( 愛犬へ )  #虎吉の交流部屋初企画





夕方の電車に乗り、ふと窓の外に映る夕焼けを見ていると、涙が止まらなくなった。
スマホに取ってあるいくもの写真を眺めては、月日の経つ早さに残酷ささえ感じてしまう自分がいる。

昨夜はよく眠れなかった。
一晩中、夢の中で苦しそうな声が聞こえる。
次第に呼吸がゆっくりになっていく中で僕は神様に祈った。

「あと1日、たった1日でいいから一緒にいさせてください ! 」
そんなことを祈る間にも呼吸音はもう途切れ途切れになっていき、ついに、聞こえなくなった。
「今、天国へ行ったんだね···」
腕の中で静かに眠る愛犬を見て声が出なくなった。

頭の上で目覚まし音が鳴り響いた。朝だ。
愛犬のココ(10才、女の子)が顔の近くに来ていつものようにその小さな鼻をぐいっと近づけてくる。「おはよう」「きゅーん」

よしよし、今日もいい子だ。
そう思いながらも僕は一抹の不安と恐怖を拭いきれないでいる。
10才を超え老犬と言われる年齢になった愛犬にはもう何が起きてもおかしくはない。

もう何日もこの夢を見ている。
もしこれが現実になる日が来たら、僕はどうなってしまうのだろう。

仕事には行けるだろうか。
食事はしばらく喉を通らないだろう。
このnoteさえ続けていける自信がない。

ペットロスなんて言葉じゃ表現できないと思う。
だって家族なんだから。僕の人生の約3分の1をともにしてきた子どものような存在。

僕の寿命の3分の1をあげてもいいから1日でも長く、元気で生きていてほしい。
ただそれだけでいい。
たくさんの季節を一緒に過ごしたい。

「ねぇ、ココちゃん。明日は「たなばた」っていう日なんだよ。綺麗な空に川が見えるんだって。いつもお散歩で行ってる川よりもっともっと綺麗な川なんだよ」

「「たんざく」っていうのがあってね、それに願いごとを書いたら神様が1つだけお願いを叶えてくれるらしいよ。ココちゃんは書けないから僕が書いといてあげようか。もう書くことは決めてあるんだ」

う~ん ? ていう顔をしたココが近づいてくる。
何やらそんなことよりもおやつが欲しいらしい。
仕方ないなぁ(笑)
思わず僕も笑顔になってしまう。

この子は遠い将来のことよりも「今日」を生きることに精一杯なんだな。それはそれでとっても大切なことなんだよな。

思えばこうしてのんびり2人で元気に過ごせる今が一番幸せなのかもしれない。
神様はいつだっていじわるだ。いつまでも幸せではいさせてくれない。
始まりと終わりを残酷に決めてしまう。

でも、もう少しだけ、今を大切にさせてほしい。
そう、もう少しだけ···。

最近は噛む力が弱ってきて、大好きだった硬いガムが食べられなくなった。足も老犬ゆえの関節炎を起こし、時々歩きにくそうにしている。
若い頃より確実に体は弱くなった。

これから残された時間はこれまで一緒に過ごしてきた時間よりずっと短いんだろう。

犬の一生って何なんだろう···
犬の幸せって何なんだろう···
僕はこの小さな命に何を残してあげられるんだろう···

きょうからよろしくね、げんきなわんちゃんだね、ちゃんとトイレできたね、かたいごはんもたべられるようになったね、おさんぽだいすきなんだね、ひとのきもちがわかるんだね、えらいね

ごめんね、ありがとう、うれしいね、かなしいね、おいしいね、さみしいね、いいにおいがするね、おるすばんありがとう、おはよう、おやすみ、ただいま、いってくるね、たのしいね

これまで一緒に話してきた数えきれない言葉。
やっぱり、思い返すと複雑な重いが胸によぎる。
だめな飼い主さんだね···。

「ココちゃん、しっかりこっち向いて。大事なことだからちゃんと目を見て聞いてね」

「ココちゃん、たなばたってね、1年にたった1回しか来ないんだよ。たった1回だけ。この意味、お利口さんのココちゃんなら分かってくれるよね···。明日は一緒に夜の空に浮かぶ綺麗な川を見ようね。来年も再来年もその次の年もずっとね。明日は晴れたらいいね」
そのつぶらな瞳が瞬きで頷いてくれた。

年にたった1度きりの七夕の前夜。
僕は短冊に祈りを込め、ただ1つの思いを笹の葉にそっと託した。


2023年7月6日 七夕前夜 虎吉お父さんより




僕は普段、noteではあまり読者の方々が重い気持ちにならないよう心がけていますが、今回ばかりはすいません。溢れ出る思いを自ら抑えきることができませんでした>⁠.⁠<

今回、七夕の記事を書こうと思ったのは眞愛さんのこちらの記事がきっかけです。
眞愛さん、本当にありがとうございました(⁠^⁠^⁠)




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