星と鳥と風~33 愛燦燦

燦々と降り注ぐ太陽に照らされて
七色に輝く小さな破片が
目に留まった。
取り出そうとすると、どうやら破片は
予想していたものより大きかった。
最初は土に覆われていて分からなかったが
沢に降りて水で洗い流すと
見事な水晶が現れた。
それは綺麗にまとまって、山型に形成された
水晶クラスターであった。
私はその水晶を
(スピリチュアルマウンテン)

名付けた

そして
よく見ると、夫婦の神様の周辺に
沢山の水晶が落ちていることに気がついた。
結局
ものの五分間の間で
20個程の水晶が出てきた。
先程まで、崖をよじ登ったり、目を凝らして探した水晶が、こんなに最も簡単に出てくるなんて、信じられない。

私は
(リアルな日本昔話のようで、急に怖くなった)

色々と思考を働かせて考えたが
その中から、5つ程の水晶が、私にご縁がある気がしたので、それだけを確保して、他の水晶は山へと還した。

*欲深くない所があんたのいい所ね*

私は今一度
山神様の所へ水晶を持って行って
これらを持ち帰ってもいいですか?
と、聞いてみたが、当然返事はなかった。

だが

夫婦のどちらもが満面の笑みを浮かべているように見えた私は
有り難く自然の恵みを頂戴する事にした。

その5つの水晶達は
どれも本当に素晴らしい石達で
私は一生
この水晶と人生を共にするのだろう
と考えていたが

後に
その全てが、他の人の所へと旅立った
(勿論お金など頂いてはいない)
縁のある人や土地を見つけると、猛烈に
石はそこへ行きたがるのだ

【まるで意思を持つかのように】


本当は、誰にも渡したく無かった石達。
でも
自分の人生を見つけて進む誰かの行く道を
止めることなど本来、誰も出来ないように
石も人も
自分がベストで生きられる環境があり
人生の中で、時に痛みを伴いながらも
それらを知る機会にも恵まれる
そして
手放すという意味を知る
それはお互いにとって
有難い事だ。

今思うと私は
必要な人へ、必要な意思を届ける
【仲介人】
だったように感じている。
少し寂しいけれど

夫婦の神様に挨拶をして帰ろうとすると
【また、会いに来てくれるかい?】

声が聞こえた。

私は
一瞬ビックリしたが

「勿論です」
と、応えた。

それから2度ほど
その場所へ出向いたが
夫婦の神様に会いに行く時は
【じいちゃんばあちゃん】
に、会いに行くような
そんな気持ちに
なるのだった。

私にも一つだけ相棒が出来た。
その石を見つけた時
私は訳も分からず涙が出てきて
気持ちが落ち着いたのを
覚えている

その石とは
よく旅にも出掛けた
不安な時
風邪を引いた時
コロナになった時や
誰かを信じれなくなったとき
いつも側で私を助けてくれた
石は人によっては
合わなかったりもするが
この石だけはそんな事はなかった
誰にでも優しく
大きな心と献身性から

【ドクター】
と名付けた。

ドクターは今でも私のそばで輝いている。

もう一つ
思い出深い石がいた。
私は水晶を琥珀色の綺麗なガラス皿に
置いていたのだが
その石は何度もそこから飛び出し
いつも
あり得ない場所で私を待っていて
よく驚かされた。
その石は
独立した意思と
明らかな魂を感じて
【ソウル】
と、名付けた。

ソウルは当時
付き合っていたパートナーに
プレゼントしたら
彼女は
1日で石を無くしてしまった。

というより
ソウルの事だから
自ら旅立ったに違いない
と、私は思っている。

しかも無くした場所も場所だ
割愛させて頂くが
その場所は
日本で1番のお祭り会場で
そんな場所でソウルが
じっとしていられるはずもなかった。

*ご縁があればまたきっと逢えるわよ*

それから1年半の時が経ち
2024年9月18日
私は相変わらずの病状の中
無事に誕生日を迎える事が出来た。
それもこれも支えてくれた
全ての皆様のおかげだと
心から感謝している。
誕生日は、15年振りに
親父と2人で食事に出掛けた。
そこでこの小説の事も
カミングアウトした。
親父は以外にも喜んでくれたのと同時に
私に今までの事を謝罪してきた。

「お前には幾度と無く俺の酷い有様を見せてきたが、何より俺は、お前に嘘をついて生きたくなかった。」

「幼少期から母親がいなかったり
新母が出来た時も、妹のMとも比べられて
まだまだ子供のお前にとって
とても辛い思いばかりしている事も
俺は知っていた。」

だから俺はあの日から

【自分の全てを曝け出して、時に(親)という
エゴも捨てて
お前の一番の
(親友)であり続けると誓ったんだ】

と言った。

親父のこの言葉のおかげで
私の中にいる幼い私が
やっと重い鎖から抜け出し
初めて自由になった瞬間を
見届けれた。

そして
誕生日が終わり
数日が経った。
私はアルバイト先で仲良く
させてもらっているK君に呼ばれた。
「渡したい物があるから、手を出して」

私は、虫か何かを、手に乗せられそうで
一旦断った。

「大丈夫だから、手を出して」
渋々手を出すと
【ズシッ】
と重みがあった。

【誕生日おめでとう】
彼の言葉と共に私の手に乗っていたのは

綺麗な
【アメジスト】
だった。

それは、K君に以前からお願いしていた石であった。
私は、当時付き合っていた彼女に、プロポーズをする為に、指輪を作ろうとしていた。
鉱物採取を趣味としていたK君に
私は
アメジストはないか?と相談していて、彼は私にプレゼントする為に一日中
山の中を探し回って
この石を見つけてきてくれたのだった。


*愛されないと、いくらあんたが争っても、愛される運命には抗えないわね*


私は
それを見た瞬間に
【ソウルが帰ってきた】

心が訴えかけてきていたのと同時に
何よりも必要としていた
自分自身の
【魂】

取り戻した気がした。

石は意思を持って旅をする
またとない瞬きの中で
またとないあなたに逢う日を夢見て
信じて疑わない
自分として産まれた意味は
決して奪われない
その光は
いつかあなたと
広がりゆく






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