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【要約&実践】ブランディングの科学 誰も知らないマーケティングの法則11

どうもー、消費財メーカーのマーケターとして働くmotuです。
マーケティングに関する書籍の"理解"から"実践"への架け橋となる記事を投稿していきたいと考え、活動しています。

書籍の内容を"実務"で活かすことができるよう、要約・体系化していくので、ぜひご覧ください。それではやっていきましょう!

書評

【再現性】   ★★★★
【面白さ】   ★★★★
【おすすめ度】 ★★★★

私の記事では、上記3項目を5点満点で評価しています。
再現性は、筆者が自身の成功(失敗)を体系化して、私たちでも実践できるような形のノウハウとして提供しているかで評価しています。
面白さは、純粋に書籍としての面白さで、読みやすさなども考慮して評価しています。

今回紹介するのは、バイロンシャープ氏著書の「ブランディングの科学」です。この書籍は、マーケティングの教科書に書かれているコトラー派の理論を"科学的に"真っ向から否定しています。森岡毅氏著書の「確率思考の戦略論」とかなり内容が被っているので、確率思考の戦略論を読んだうえでこの本を読むと理解が深まるのでおすすめです。それではやっていきましょう!

7つのシンプルなマーケティングの法則

本書では、11の法則の理論を説明したうえで、7つの法則の解決策を提示していたが、この記事では先に解決策を提示していく。

1. できるだけ多くの人にリーチする

ブランドカテゴリー内のすべての消費者に、配荷及びマーケティングコミュニケーションの両面からリーチしなければならない。誰が、いつ、どこでブランドを買い、生活の中でどのように利用しているのかを正しく理解して、できるだけ多くの顧客にメッセージが届く費用対効果を考えたマーケティングの選択肢を考える必要がある。

2. 買い求めやすいこと

メンタルアベイラビリティ(ブランド想起)フィジカルアベイラビリティ(購買機会)の両面から買い求めやすさを高める。市場調査を行い、消費者のブランド購買行動と使用行動を確認することや「買わない理由」を確認することが重要である。

メンタルアベイラビリティ

ブランドに関する記憶のネットワークがより広範囲で新鮮であるほど、消費者が経験する様々な購買シーンにおいてブランドが想起され、メンタルアベイラビリティを獲得できる。このとき、記憶とブランドとの間に構築されるネットワークの量と質に大きく依存している。この場合の量は、ブランドの購買顧客が構築しているブランド連想の大きさを意味している。質は、連想の強さと属性との関連性からなる。購買の状況に関連するならどのようなものでも属性になりえるので、消費者がブランドを選択する前の思考プロセスを幅広い視野を持って理解することが重要である。また記憶は、ブランドロゴ、色、パッケージ、フォントなどのブランド構成要素に加えて、なぜ・いつ・どこで・誰と・何と一緒に買う・使うのかといったブランドオケージョンからなる。

フィジカルアベイラビリティ

配荷の量と質のこと。消費者がブランドを購入する瞬間に常に競合よりも購入されやすい状態が求められる。ブランドの存在感を高めることで、小売業者への配荷量だけでなく店頭での存在感が強化され、またブランドと接している時間が長くなり、購入が後押しされる。

3. 目立つこと

記憶に残らない広告は人の記憶構造に影響を与えることはできない。好感度から生じる感情的反応が広告に作用すると注意が向く。また、すでに構築されている記憶構造にメッセージを届けることで消費者に影響を与えることができる。

4. 記憶構造を刷新、再構築する

消費者の頭の中に存在する記憶構造を理解し、それを反映したブランドコミュニケーションを構築する必要がある。新しいブランドにとって、どのようなベネフィットを提供してくれるのか、どのような形状か、なんというブランド名か、どこで買えるのか、どう使うのかなどの、ブランドを買いたくなる記憶の構築は重要課題である。すでに確立されたブランドにとっても、記憶構造を刷新することは重要であるが、新しい目的を掲げる必要はなく、広告キャンペーンはおおむね同じメッセージを発信するべきである。このとき、「新鮮さ」と「一貫性」が記憶を引き出す可能性を高める。

5. そのブランドならではの資産を構築する

ブランディングは以下3つの理由から極めて重要である、第一に、ブランディングを行うことで消費者がそのブランドにロイヤルティを感じるようになる。第二に、ブランディングを行うことで消費者の広告の理解が進み、記憶構造が刷新されてブランドの正しい理解が促進される。最後に、独特なブランド資産を記憶に定着するように表現することでブランドがいっそう際立つようになる。

ブランディングの役割
①ブランドの所有権を商標として残すこと
②購買客の記憶の中にブランド連想を定着させること
③個々の異なるマーケティング活動をつなぐこと

6. 一貫性を維持しながらも新しさを失わない

消費者は新しい情報に抵抗を感じるが、すでに納得していることを思い出すことに対しては、抵抗が低い。

7. 競争力を維持する-買わない理由を与えない

製品特徴の優位性が、時間経過とともにメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティを獲得する。一方で、消費者がブランドを買わない理由に対して警戒を怠ってはいけない。

ブランドの成長方法
①費用削減と品質改善を徹底し競争力を維持する
②市場基盤型の資産に投資してブランド独自の記憶構造を構築しブランドのメンタルアベイラビリティとフィジカルアベイラビリティを改善する
③ブランド特性を刷新または改良してから市場に再投入する(リスクは大きい)

11の法則

以上で挙げた7つのマーケティング法則を裏付ける、11の法則の理論を提示していく。

1. ダブルジョパディの法則

マーケットシェアが低いブランドは購買客数も非常に少ない。またこれらの購買客は行動的ロイヤルティもやや低い。つまりブランドは、市場浸透率を上げる(顧客基盤を拡大する)ことで成長する。

2. リテンションダブルジョパディの法則

顧客を失わないブランドはない。その損失はマーケットシェアと比例する。大きいブランドほど多くの顧客を失うが、その損失は顧客基盤全体と比較すると小さい。マーケターは顧客の離反をコントロールできないうえ、あらゆる市場で、新規顧客獲得が売り上げを伸ばす可能性は、顧客離反を防ぐことよりも圧倒的に大きい。

3. パレートの法則(60/20)

ブランドの売り上げの半分強がそのブランドの上位20%の顧客によってもたらされ、残りの売り上げが下位80%の顧客によってもたらされる(通常のパレートの法則の80/20にはならない)。つまり、マーケティング活動を行う上でヘビーユーザーに注力することは賢い選択ではなく、全ての消費者層、特にライトユーザーにリーチすることが極めて重要である

4. 購買行動適正化の法則

ある一定期間中にヘビーバイヤーだった消費者の購買量は、そのあと減少する。またライトバイヤーの購買量は増え、ノンバイヤーがバイヤーになることもある。この平均への回帰現象は、購買客の行動が実際に変化しなくても生じる。

5. 自然独占の法則

マーケットシェアが大きいブランドほど、そのカテゴリー内の多くのライトバイヤーを引き付ける。

6. 顧客基盤が類似する

競合ブランドの顧客基盤と自社ブランドの顧客基盤は非常に類似している。つまり、自社ブランドが競合ブランドの顧客を獲得するチャンスは大きい。カテゴリーの平均像からの偏位がみられるときは、偏位に即した戦略を実行すべきか、またはカテゴリーの平均像を重視すべきか選択する必要があるが、通常であれば後者を選ぶべきである。

7. ブランドへの態度と思いが行動的ロイヤルティに反映される

消費者は、自分が使用しているブランドほど知識が豊富で多くを語るが、使用しないブランドについては考えることも語ることも非常に少ない。したがって、ブランドに対する態度を評価する調査を実施すると、大きいブランドはロイヤルティの高いユーザーを多く含むので常にスコアが高い。自社のブランドが獲得しているロイヤルティは、消費者の習慣、製品の供給量、消費者への配慮の欠如などに起因しているに過ぎない。つまり、ブランド自体は消費者にとってそれほど重要ではなく、ブランドを買う人のほとんどがブランドのことをあまり深く考えていないが、売り上げを伸ばすためにはこのような消費者に目を向ける必要がある。

8. ブランド使用体験が消費者の態度に影響を与える'

ブランドは異なっても、それぞれの購買客がブランドに対して示す態度と認知は非常に類似している。

9. プロトタイプの法則

製品カテゴリーを的確に説明するイメージ属性は、そうでない属性と比較して、評価が高い(ブランドとの関連性が高い)。差別化ではなく、ブランドの認知度とセイリエンス(卓越したブランド特性)が重要。独自性のある要素(色、ロゴ、キャッチフレーズ、シンボル、キャラクター、セレブリティ、広告手法)とブランド名との関連性が強固かつ斬新であるほど、消費者のブランド認知、認識、想起を容易にする。また、これらは法律で守ることができる。このとき、「ユニークか」、「広く認知されているか」の2点が重要。

10. 購買重複の法則

ブランドの顧客基盤は、マーケットシェアに応じて競合ブランドの顧客基盤と重複する(大規模ブランドとの顧客共有率は高く、小規模ブランドとの顧客共有率は低い)。もし、一定期間内にあるブランドの購買客の30%がブランドAも購入するとすれば、どの競合ブランドもその購買客の30%がブランドAを購入する。購買重複分析によって、どのブランドがどのブランドと競合しているか、境界線はどこかを理解することができ、消費者の購買行動に基づいた洞察を得て、製品カテゴリーを定義することができる。また、競合ブランドへの顧客離反、および競合ブランドからの顧客獲得のベンチマークとして活用し、特異値を観測することもできる。ブランドをニッチな市場に押し込むのではなく、広くリーチするための手段を常に探すことが重要。

11. NBDディリクレ

カテゴリー内の購買客の購入頻度や購入ブランドについて、その傾向にどのような差異が生じているかを明らかにする数理モデル。このモデルが前述の法則の多くを正しく解説し説明してくれる。詳しくは確率思考の戦略論を参照。

広告の機能

ブランドの広告が消費者に届けば、記憶構造が刷新されて強固に再構築されることで、ブランドはより目立ちやすく、購買を行う状況でより想起されやすくなり、ブランドのセイリエンスとメンタルアベイラビリティ(ブランド想起)が向上する。広告の情報が処理されなければ記憶構造は構築されないこと、また、広告のブランドに基づいた記憶構造(ブランドの機能や外観、どこで入手可能か、いつだれがどこでどれと消費するのか、など)が構築されなければ売り上げは生まれないことに注意する。逆に言えば、記憶を構築する(ブランドの連想や連想のきっかけ、セイリエンス、長期的独自性などの枠組みの中に、広告メッセージを組み込む)ことができれば、購入意向や態度に影響を与えることができなくとも売り上げは伸びる。したがって、マーケターはすでに構築された自社ブランドの記憶構造を理解したうえで、それらを利用して広告の力で記憶構造を刷新する必要がある。次に、他にどのような記憶構造が役立ちそうか(カテゴリー内の購買促進要因など)を探し、それを構築するよう努める必要がある。

効果的な広告
・すべてのカテゴリーの消費者にリーチすること
・広告活動を長期間休止しないこと
・消費者に認識されること、無視されないこと
・ブランド連想を明確にすること。言葉あるいは視覚的にブランド名に言及することが極めて重要。製品と製品使用シーンを提示することも重要。
・記憶構造を刷新、構築することで、ブランドの想起、認識が容易になる
・説得力のある情報があれば、本来の達成目標を邪魔しない限り伝達する

価格販促の役割

価格販促で新規顧客は獲得できない。
消費者は、価格の絶対的水準よりもブランド間の関係(通常ブランドXはブランドYよりも高い)を意識しており、また購入可能なブランドを比較することをより重視している。
一次的な価格販促はブランドに悪影響を及ぼさないが、何度も繰り返し実施すれば、消費者がそのブランドに抱く参照価格が低くなるため悪影響を及ぼす。

より高い価格弾力性を導く要素
①ブランドの価格が参照価格より低い時
②価格の変更をはっきりと伝達する時
③ブランドのシェアが低い時
④ブランドの価格が通常よりも高い時
⑤ブランドの価格が他ブランドの平均に近い時

以上です。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。
本日紹介した書籍は以下のリンクにまとめてあるのでぜひチェックしてみてください。また次回!

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