【要約&実践】確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力
どうもー、消費財メーカーのマーケターとして働くmotuです。
マーケティングに関する書籍の"理解"から"実践"への架け橋となる記事を投稿していきたいと考え、活動しています。
書籍の内容を"実務"で活かすことができるよう、要約・体系化していくので、ぜひご覧ください。
それではやっていきましょう!
書評
【再現性】 ★★★★★
【面白さ】 ★★
【おすすめ度】 ★★★★
今回紹介するのは、P&Gマフィアの一人である森岡毅氏の書籍です。
この書籍からは、市場調査、需要予測のやり方について詳しく学ぶことができます。文系の人には難しく感じるかもしれませんが、この手法をマスターすれば、高い再現性で有効な戦略を選択できるようになります。それではやっていきましょう!
1. 戦況分析
市場規模が一定の時、売上を伸ばすためには、①自社ブランドへのプレファレンスを高める、②認知を高める、③配荷を高める、の3つしかない。
よって、この3つのドライバーに絞って分析していくことで、確率の高い戦略に早くたどり着く。
1-1. 認知率
認知率の伸びに対してビジネスは一定レベルまで直線的な関係で伸長していく。したがって、自社ブランドの認知の量、質いずれか、または両方に伸びしろがあれば確率の高い戦略になる可能性が高まる。
1-2. 配荷率
認知率と同様に、自社ブランドの配荷の量、質いずれか、または両方に伸びしろがあれば確率の高い戦略になる可能性が高まる。
また、配荷率を上げて配荷の"量"を改善できるかを分析するだけでなく、
配荷の"質"をプレファレンスに合わせて改善することができるか分析することも重要。
1-3. プレファレンス
認知率と配荷率には上限が存在する。しかし、プレファレンス(消費者のブランドに対する相対的な好意度)に上限はない。したがって、プレファレンスはブランドの最大ポテンシャルを決定するため最重要指標。プレファレンスの構成要素は、①ブランドエクイティ、②製品パフォーマンス、③価格、の3つからなる。成功確率の高い戦略を選択できるようにするため、プレファレンスとその仕組みを解明する。
①ブランドエクイティ
すべてに優先してプレファレンスを支配する最重要な要素。ブランドエクイティを測定することで、自社ブランドのポジショニングを知ることができる。
このとき、ポジショニングや差別化、ターゲティングは、M(自社ブランドが選ばれる確率)を増やすためにやっているという目的意識を持つことが重要。この分析を通じて、Mを増やす(プレファレンスを高める)ためには、どのようなポジショニングをすれば良いか見えてくる。
また、プレファレンスを高めるには、水平拡大と垂直拡大の2つの選択肢があるが、水平拡大の方が成功率高い。
②製品パフォーマンス
ブランドへのプレファレンスに占める重要性は、製品の機能性が重視されるカテゴリーか否か、比較しやすいカテゴリーか否かによって異なる。
また、リピートビジネスかトライアルビジネスかによっても異なる。
消費者が実感できなければ意味がない。
シングルプロダクトブラインドテストは、プロジェクト初期における製品のスクリーニングに適している。
コンセプトテストは既存品の改善や新製品のアイデアの選択を診るのに適している。
C&Uはコンセプトと製品のマッチングを診るために使われ、消費者のプレファレンスを診るのに適している。
コンセプトテスト(C&U含む)は売上予測などの"検証段階"に使われることが多いが、このテストの「購入意向」を重回帰分析することで現状のプレファレンスの改善余地を判断するのに使うこともできる。
ここで、重回帰分析などの統計分析について学びたい人は、西内啓氏著書の「統計学が最強の学問である」や中西達夫氏、畠慎一郎氏著書の「武器としてのデータ分析力」を読むことをおすすめする。
③価格
値下げでプレファレンスを高めようとするのは愚策。一流のマーケターの仕事は、値上げしながらもMを増やす(プレファレンスを高める)。
以上プレファレンスを構成する3要素の分析方法は、量的調査を中心に述べてきたが、量的調査は現状と近未来の全体の指標でしかない。
中長期の未来に対しては、自身が取り扱うカテゴリーと、そのカテゴリーを含む上位商品群の本質(消費者の求める便益)を質的調査をもとに見極め、そのうえで、カテゴリー・上位商品群の法則性を見出す。
以上から現行の戦略を見直し複数のシナリオを作成する。
2. 需要予測
実際のビジネスでは、利益を改善しながらプレファレンスを高める必要がある。したがって、数あるビジネスドライバーの中で、どこに集中すべきか戦略を練るために需要予測が必要になる。理想的には予測値が現実より少しだけ少なめがベスト。投資の決断を助けることと経営資源の有効利用のため実施する。
2-1. 売上予測モデル
必要な「年間売上」などの目的となる必要数値を入れてみて、それらを実現するために必要な認知率や配荷率などのドライバーをどの程度目指さなくてはならないのかを逆算するために用いることもできる。その後、これらのドライバーの中で、自社が持つ経営資源や組織の強みを考慮して、どこに集中的に投資して目的を達成するのか判断する。
以上のモデルは、最終的な目的に到達するために選定した、ターゲットの売上金額を分解するとき(③)に利用することが多い。
このとき、同じ目的をベストシナリオとはできるだけ違う道筋で達成する戦略をもう1つ考えておくとよい。
また、戦略については、同じくP&G出身の音部大輔氏著書の「なぜ戦略で差がつくのか。―戦略思考でマーケティングは強くなる」に詳しく書かれている。
2-2. 消費者テスト(BP-10)
BP-10によって求めたテストコンセプトシェアを、認知や配荷、価格に応じて調整し、ユニットシェアを予測する。ユニットシェアは、市場全体におけるブランドのプレファレンスそのものであるため、プレファレンスを予測している。これによって、戦略を比較・検証することができる。
ここで、500人にテストして200人が一人当たり平均4枚のドットを対象商品に割り当てたとする。
テストコンセプトシェア=(4×200)/(10×500)=800/5000=16%
この値は認知率と配荷率を100%と仮定しており、価格の影響も考慮していない。ここから、認知、配荷、価格に応じて調整していく。
1か月目の認知が15%、配荷が20%の場合
購入可能な人は全体の3%(15%×20%)
また、月初めの認知は0%で月の終わりが15%になるため、購入可能な期間は11.5か月。したがって、1か月目に認知して購入可能な人たちがもたらす年間ユニットシェアは、16%(コンセプトシェア)×3%×11.5=6%となる。
2ヶ月目の認知×配荷が12%とすると、購入可能な期間は10.5か月のため、2か月目に認知して購入可能な人達がもたらす年間ユニットシェアは、
16%(コンセプトシェア)×9%(12%-3%)×10.5=15%
以上の月別のシェアの増加分を加えると、合計で55%になるとすると、
1年間の月別平均ユニットシェアは、4.6%=55%/(100%×12か月)
また、価格弾力性が-1.5%とすると、20%のプレミアムを持つ商品の場合、
ユニットシェアは、30%(-1.5%×20%/1%)少なくなる
よって、価格調整後のユニットシェアは、
4.6%(1年間の月別平均ユニットシェア)×0.7(1.00-0.30)=3.2%
以上で、認知、配荷、価格調整後のユニットシェアを求め、当該商品のプレファレンスを予測することができた。このとき、製品パフォーマンスに関しては、商品カテゴリーの平均であると仮定していることに注意する。
以上になります。長い文章にお付き合いいただきありがとうございました。本日紹介した書籍は以下のリンクにまとめてあるのでぜひチェックしてみてください。また次回!
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?