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#9 波瀾万丈…西日本緊急周遊記

#8 のつづき

大阪独り周遊とインドネシア人女子大生との出会い(Day4 朝~昼)

大阪・西成の激安ホテルに2泊滞在した私は、15時10分発の鳥取行きのバスが出るまで大阪を観光することにした。思えば、この旅に出てからろくに観光名所を訪れていない。せっかく大阪に来たのだからそれっぽいところに行ったほうが良いだろうと思った私は、まず新世界と通天閣を見に行くことにした。

お金がないので、当然、移動手段は徒歩だ。

ビリケン様と通天閣。人はまばらだった。
新世界にあったレトロな佇まいの劇場(?)

通天閣のある大阪南の下町の一帯は「新世界」と呼ばれていて、ヤクザが幅を利かせているとも聞く。レトロな建物や呑み屋、お好み焼き屋などが立ち並んでいたが、特に食欲もなかったので、そのまま通り過ぎて、1kmほど東にある四天王寺へ向かった。四天王寺は日本仏法の祖である聖徳太子が建立した寺で、特定の宗派に属さない日本の全仏教の総本山的な寺院である。

私は特に熱心な仏教徒ではなく(一応、親戚や先祖の墓・葬儀は仏式だが)、あくまでも暇つぶしに訪れただけだったので、中心伽藍に入るには300円入る必要があるとの看板を目にし、その門の手前にあった木の下のベンチに腰掛けて、他の参拝客の姿をぼーっと眺めながら、時間をつぶした。

「参拝客観覧」にも飽きた私は、夕陽ヶ丘から谷町九丁目の角を曲がり、そのまま、「大阪と言えばここ!」の道頓堀グリコサインを見に行った。道頓堀の橋には、記憶は定かではないが、金銭を要求する募金箱のようなものを抱えた男や、歌う女、ワクチン接種会場への案内看板を抱えた人などがいたような気がするが、特に面白いものもなかったので、そのまま心斎橋筋商店街を北上し、大通りに出て、大阪城方面を目指して歩いた。

ビジネスマンの多い、堺筋本町のあたりを歩いていたところ、ヒジャブ(スカーフ)を被ったイスラム教徒らしき若い女性に声をかけられた。片言の日本語と英語を混ぜたような会話によると、どうやら、「ワクチン接種会場はこの目の前の建物か?」と尋ねたいようだった。しかし、私が見る限り、その建物「堺筋本町センタービル」は、ワクチン接種会場ではないようだった。第一、ワクチン接種会場の周りには道頓堀にいたような看板を持って案内をするスタッフがいるはずだが、そういった人は一人たりとも見当たらなかった。

困ったな…。

この旅で外国人から道などを尋ねられるのは今回が二回目である。一回目は愛知県内の駅で、日本語も英語も話せないベトナム人だった。今回は、英語は確実に通じる。それだけは救いだ。それにしてもなぜ私なのだろう?ビジネスマンばかりの堺筋本町で、暇そうな、時間的には余裕そうな私の表情が外見に現れていたのだろうか?

女性によると、スマホに表示されていた「堺筋本町会場」の「堺筋本町」という文字から、「堺筋本町センタービル」が会場なのかと判断したらしい。私はまず、「堺筋本町」という文字はここ一帯の地名であることを伝え、暇なので一緒に調べる旨を伝えると、大いに喜んでくれた。

私が「堺筋本町 ワクチン接種会場」で検索すると、400mほど南にある、「自衛隊大阪大規模接種会場(堺筋本町会場)」がヒットした。おそらくここだろう。道を説明するより、連れて行ったほうが早いと判断した私は、その女性とワクチン接種会場を目指した。私が東京からバスや列車を乗り継いでやってきた旅行者であることを伝えると、かなり驚いていた。女性はインドネシア出身の大阪大学の留学生で、もうすぐ帰国する予定だということなど、いろいろ話してくれた。私は、西成の兄ちゃんぶりに人間と会話したのでとても楽しかった。会場の入り口にいたスタッフに、女性のスマホに表示された画面を見せて、確実にここであることが判明すると、女性と別れ、再び大阪城を目指した。

途中、たまたま見つけたお好み焼き屋「ありがと屋」に立ち寄ると、一番安い320円のお好み焼きを食べた。この旅初めての大阪らしい食事。美味しかった。

大阪城は比較的混雑していた。観光客もいたが、犬の散歩をする地元の人の姿も多く見た。城にエレベーターがついていたのが、「時代」といった感じで面白かった。城の北側は、マラソン大会が行われていたようでかなり混雑しており、ごった返す人の波に沿って、JR大阪環状線の大阪城公園駅に向かった。なぜ、この期に及んで列車に乗ったかと言うと、さすがに疲れていたのと、この時14時半頃、意外とバスの発車時刻まで30分ほどしか余裕がなかったからである。

エレベーター付きの大阪城

総歩行距離およそ9km。大阪、独りぼっちの徒歩の旅が終わった。

未踏の地・鳥取へ(Day4 午後)

大阪梅田の駅に着いたのは、14時45分か50分くらいだった気がする。大ピンチだ。なぜって、私はバス乗り場までの行き方がわからないからである。梅田は大都会で、新宿や渋谷ほどではないが、駅構内は複雑な作りになっていた。エキナカ方向音痴の私は、小走りで駅構内を駆け回り、やっとのことでバスターミナルに着いたのは、14時58分。発車12分前であった。

バスで鳥取を目指す(3800円)

窓口に走りこんで、チケットを発券、そのままバスに乗り込んだが、頭上の荷物入れに思いっきり頭をぶつけ、「痛っ!!」と大きな声を出して座り込んだ。ほかの乗客が一瞬、こちらを見た。

ズキズキとして本当に痛かった。

#10 へつづく


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