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僕、大地に立つ。痛くて笑う

手術翌日の朝が来た。
「おはようございます。」

痛い、痛い、痛い。
めちゃくちゃ痛いんです。
お腹全部。あぁ、力が入らない。

朝食の時、ベッドに座れますか?と言われ、なんとかサイドレールを両手で掴んだが身体が起こせない。ちょっと待ってとナースさんに告げ、ベッドのコントローラーを持ちヘッドをギャッジアップしながら起きる。
「さすが介護士さん、使いこなしてますね。」とナースさんに褒められる。
いやいや、こっちはね、必死なんですよと心の中で言いながら、口からは「ありがとうございます」などとお礼を言う。

かろうじてベッドに端坐位になり、なんとか朝食を食べる。おかずは食べたがお粥は半分も食べられなかった。夕食からは普通のご飯とのことだった。食べたいと言う気は起きなかった。

歯磨きをしていると「もう少ししたらちょっと歩きますよ」と悪魔のささやき。
「横になっておきますか?」って聞かれたので、二度と寝たり起きたりの動作はゴメンだと思い「座ってます」と答えた。
でもね、腹筋穴だらけでさ、実は座るって動作も腹筋使ってんだね…って感じるほどに痛かった。
「朝食後の痛み止めが効いてる内に歩きますよ(笑)」と容赦ない言葉。
まぁ僕も退屈だし頑張ってみよう!

まず、点滴の引きずるポールを持ち、そこに点滴と硬膜外麻酔のカプセルをぶら下げ、首からドレーンから出てくる排出物を受け取る入れ物をぶら下げ、ポールの下の方には尿バッグをぶら下げて、立てと言う。
なかなかの重装備ですよ(笑)

よいしょっと。
ズキューン!!
ハイ、やめました。痛すぎ。腹という腹が悲鳴をあげている。立ったのがやっと。
あのね、立つって凄いね。人間の筋肉という筋肉使いまくってるね。普段は全く気にもしない動作が、すごく緻密に計算された人体のすべての筋肉の連動によってなされているということに、気づいたね。
特に腹筋と背筋は大事だね。ここを痛めると立つことすらままならない。これは今後の仕事にも役立ちそうだ。

マジで死ぬかと思った。ナースさんには笑われた。でもすぐにやめさせてくれるところは優しい。どこかの機能訓練士たちとは大違いだ(笑)
「午後からまた頑張りましょうね」と言われ、「頑張ってはみます」と気弱に答える。

はい、午後。時の経つのは早い。病院でも早い。何を一体急いでいると言うのか。

寝ていたので例の方法でベッドに端坐位になる。麻酔と痛み止めで今は行けそうだ。
立てた。
点滴のポールにしっかり捕まって自分の足で歩く。
痛い、スゲ~痛い。腹が痛い。我慢だ。我慢しかない。それ意外に今の僕にすることは、たぶん無い。無いんじゃないかな?無いな。
集中治療室のカーテンから初めて出た。世界とかこうなっていたのか?全然わからん…余裕無し。
僕としてはかなり歩いたつもりだけど、たぶん数メートルしか歩いてなかったんだろうな。
再びベッドに戻る。そこでまさかの宣告。
「明日からトイレに行かないといけないからね。」尿バッグがとれるからだ。
嬉しさと恐怖に襲われる。でも明日なら歩けるね?歩けるよな。歩くのだ!

集中治療室の1日は面白おかしく過ぎたんだ。
あまりの痛さにおかしくなったわ。
※これから手術を受けられる方、あのう、大丈夫ですからね。ホント、大丈夫です。耐えられる範囲だから~。

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