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【IR分析 #10】買うならどのくらい?を読み解く 富士紡ホールディングス(2024.3期)

はじめに


有価証券報告書や決算説明資料など、投資家向けの開示情報(=IR情報)を読み解くことが、株式投資で成功する一番の近道だと考えています

投資にあたって重要なポイントが「ほぼ」記載されているからです。ただ専門的で難解で量も多いので、重要なポイントだけを短くまとめました。

増益予想など興味を持つに値する銘柄(=いい銘柄)に絞って、投資を検討する水準(=安いとき)を読み解いて、「何をいくらなら買うか」をストックしておきます。

意外とありそうでない、実用的な情報です。ほぼ無料でご提供しますので、まずはざっと読んでピンとくる銘柄を効率よく見つけてください。




富士紡ホールディングス(3104)


「半導体需要追い風で増益予想」

この情報は以下のIR情報をもとにしています。
2024.3期
(2023/4/1~2024/3/31)
有価証券報告書 決算短信 決算説明資料

この情報は決算期末の開示情報に基づいておりリアルタイムではありません。期中の業績修正等は反映されていません。また客観的な参考情報であり、投資判断、株価予測、銘柄推奨、投資勧誘ではありません。投資の際は自己責任でお願いします。内容には注意を払っていますが、誤りが含まれる可能性があります。また予告なく変更される場合があります。


Q1 どんな会社で何がいいの?


【概要】

  • 研磨材事業(37%)、化学工業品事業(35%)、生活衣料事業(19%)を中心に多岐にわたる事業を展開。

  • 1896年創業。複数の合併や新規事業の展開を行い、2005年に持株会社制に移行。一世紀以上の歴史で培った技術力が強み。

  • 東京都中央区、東証プライム、時価総額 523億円、自己資本比率 70.3%、配当利回り 2.5%、ROE 4.9%、PBR 1.2倍(2024.3期末現在)

【特徴】

  • 研磨材事業では、半導体デバイスなどの製造工程に不可欠な超精密加工用研磨材が主要製品。顧客企業と緊密に連携した製品開発を行う。

  • 化学工業品事業では、医薬原料や機能性化学品の中間体を受託製造し、品質管理と環境対応の高さが評価。

  • 生活衣料事業では、インナーウエア(BVD)などを製造・販売。紡績から製品までの一貫生産体制が競争力の源泉。


Q2 足元の状況は?


【環境】

  • 半導体市場の需要変動や化学工業品の需要低迷など、外部環境の影響が大きい現状。

  • 半導体市場は一時的な調整局面にあったが、徐々に需要が回復しつつある。

  • 一方、化学工業品事業は中国経済の低迷や電子材料市場の悪化により厳しい環境が続く。

【課題】

  • 研磨材事業では、次世代プロセスに対応できる製品開発が急務。化学工業品事業では、需要低迷に伴う設備稼働の低下が大きな課題。

【取組】

  • 主力の研磨材事業において、半導体市場の回復に対応するための生産能力増強設備の導入を進行中。台湾に研究開発施設を設置。

  • 化学工業品事業では、柳井・武生両工場の連携を強化し、新規顧客開拓を進め、安定した設備稼働を目指す。

【戦略】

  • 中期経営計画『増強21-25』で各事業の成長基盤を強化。特にDXの深化を図る。2025年3月期売上高600億円、営業利益100億円、ROE10%以上が目標。


Q3 業績の傾向は?


2024年3月期実績:減収減益
売上361億円(-4.1%)、営業利益28億円(-42.2%)、経常利益32億円(-35.0%)、当期純利益21億円(-37.7%)

【要因】

  • 研磨材事業では、半導体市場の調整局面による需要減少が主な要因。

  • 化学工業品事業では、原材料コストの上昇を価格転嫁する一方で、需要低迷が影響し利益が圧迫。

  • 生活衣料事業では、物流費や原材料費の高騰、円安の影響が見られたが、ネット販売の増加や海外向け販売は好調。


Q4 今後の見通しは?


2025年3月期予想:増収増益
売上420億円(+16.3%)、営業利益51億円(+81.0%)、経常利益53億円(+61.7%)、当期純利益35億円(+65.3%)

【根拠】

  • 研磨材事業では、半導体市場の回復基調が進む見込み。主要な半導体メーカーが在庫調整を進めたことにより、需要が回復傾向。

  • 化学工業品事業では、中国経済の低迷や電子材料市況の悪化が続く中でも、安定した需要が見込まれる。

  • 生活衣料事業では、新型コロナウイルス感染症の位置づけが変更され、行動制限が解除されたことで、店舗販売の改善が期待される。


Q5 予想の信ぴょう性は?


【売上予想】

  • 予想水準:前年実績比で-11%~+4%の範囲。今期予想は+16%で例年より積極的な水準。

  • 達成度:100%~109%の範囲。保守的な予想を着実に達成する傾向。

【純利益予想】

  • 予想水準:前年実績比で-35%~+10%の範囲。今期予想は+65%で例年より積極的な水準。

  • 達成度:76%~173%の範囲。達成にばらつきがあり不確実性がある。

  • 利益率:5.9%~12.4%の範囲。今期予想は8.3%で現実的な水準。前期の5.9%からは改善傾向。


Q6 市場の評価は?


【評価の傾向】

  • 相関性:EPSとPERに逆相関の傾向が見られる。これは市場がEPSの変動を一時的なものと見なし、過剰評価を避けるための反応とも考えられる。

  • 5期前比較:一方で、5期前から直近期にかけてPERは上昇傾向にある。これは市場の企業の成長性に対する期待が高まりつつあるとも考えられる。

  • 評価レンジ:直近5期の平均的な評価レンジは、安値PERの平均10.4倍~高値PERの平均16.4倍の範囲。変動幅は約58%程度。その中間値以下が一つの目安として概ね安い水準と考えられる。


Q7 どう見ればいいの?


【経営環境】利益に影響を与える要因

  • ポジティブな要因として、電気自動車や半導体市場における需要増加が見込まれる点が挙げられる。

  • 一方、ネガティブな要因としては、物流費や原材料費の高騰や中国経済の低迷が利益を圧迫するリスクがある。

  • 会社は売上や利益の予想を積極的に設定しているが、外部環境の影響を受けやすい側面があり、慎重な見方が必要。

  • 結論:「ややポジティブ」成長分野での需要増加が期待される一方、コスト増加や外部要因に対するリスクが存在する。

【予想の信ぴょう性】例年の達成傾向

  • 売上は高い達成率を維持している。会社は保守的な予想を出す傾向があり、例年通りの慎重な予想設定であることが伺える。

  • 一方、純利益の達成度はばらつきがあり、達成には不確実性が残る。利益率の改善傾向は見られるものの、外部環境次第で変動する可能性が高い。

  • 結論:「ニュートラル」売上予想は例年通り保守的で信ぴょう性が高いが、利益予想にはばらつきがあり、不確実性があるため、中立的な評価。

【市場の評価】EPSとPERの相関性

  • 直近5期のEPSとPERには明確な相関性が見られず、EPSが上昇してもPERが低下するケースや、EPSが減少してもPERが上昇するケースがある。

  • 市場は短期的な業績変動に対して冷静に対応し、長期的な成長性を重視していると考えられる。

  • 5期前と比較すると期末PERの変動幅は大きく、特に2024年3月期には大幅な上昇が見られる。

  • これは市場が将来的な成長期待を維持していることを示唆している。市場はリスク要因に対する警戒感を持ちながらも、長期的な成長に期待している。

  • 結論:「ややポジティブ」短期的な業績に対する市場の反応は抑えられているが、長期的な成長性に対する期待が高い。


Q8 安いと考えられる水準は?


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