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徒然なる地球温暖化:息抜き1-人間は「Matrix」に出てきた電池になれるか?

 次回以降、地球温暖化の話で避けられないエネルギーの話をしたいので、その前に脱線してエネルギーの単位について雑談します。
 ついでに、映画「Matrix」でAI文明がエネルギーの発電源としていた人間カプセル電池がAIを維持する容量になるか妄想します。

まず、エネルギーの単位の勉強です。

 下の本に、種類の違うエネルギー源を比較した面白い設問があったので少し紹介します。

 次のうち、1グラム当たりのエネルギーが最も高いのはどれでしょう?
 ・チョコチップクッキー
 ・水素
 ・TNT火薬
 ・パソコンの電池
 ・ウラン235
 ・石炭
 ・ガソリン




答えは、

バークレー白熱教室講義録 文系のためのエネルギー入門 リチャード・ムラー 早川書房

 こういう全く違う種類のエネルギーを比較するためには、エネルギーの単位を揃えないといけません。ここでは、1グラム当たりで得られるキロカロリー(kcal)で比較されています。カロリーは、エネルギーの単位の一つです。

 意外ですが、1グラム当たりのカロリーは、弾丸やTNT火薬よりもチョコチップクッキーの方が高いですね。
 火薬はエネルギーが高いわけでなく、わずかなエネルギーを瞬時に開放して強力な力を出すという瞬間タイプです。その他も比べてみると、ウラン235のエネルギーが一番高く、次に水素、ガソリン、石炭となります。

 それぞれ、原子力発電、燃料電池、火力発電に使われる原料ですが、この数字を比較するだけでエネルギーの効率が良く分かります。石油は石炭の約2倍、水素は、石油の2.5倍、原子力は水素の100万倍効率がいいことになります。

 コンビニで売っている食品の後ろにはカロリー表示がありますが、食べ物でない火薬やウランをどうやってカロリー表示するのでしょうか?
 エネルギーには種類に応じて色々な単位がありますが、「カロリー」と「ジュール」、「ワット」などに換算して比較することができます。

食べ物のカロリーを見てみる

 生き物が生きるのに必要なエネルギーは、コンビニで売っている食べ物のカロリーを見て考えることができます。
 例えば、おにぎり、ポカリ、クランキーチョコ、ハンバーガーを、エネルギーの小さい順に並べたらどうなるでしょうか?

少し意外ですが、
 ハンバーガー 125kcal
 ポカリ 190kcal
 おにぎり 250kcal
 クランキーチョコ 260kcal
となり、ハンバーガーよりおにぎりの方がカロリーが高いことが判ります。

 人は活動に必要なエネルギーを、炭水化物・脂質・たんぱく質の3大栄養素から得ています。人が1日に必要とするエネルギー(カロリー)については、まず次の式で標準体重を計算します。

標準体重(kg)=身長(m)×身長(m)×22

例えば、身長が160㎝だった場合、標準体重は56.3kg程度です。

次に、1日の基礎代謝量を計算します。
基礎代謝量とは、安静にしていても消費される最小エネルギーのことです。

1日の基礎代謝量=性・年齢別基礎代謝基準値(表より)×標準体重

 で求められ、例えば、体重56.3kg、年齢18~29歳の女性の場合、1日の基礎代謝量は1329kcal となります。

性・年齢別基礎代謝基準値(愛知県瀬戸保健所)

 さらに、1日のエネルギー必要量は、
1日のエネルギー必要量=1日の基礎代謝量×身体活動の強さ
で求められ、体重56.3kg、年齢18~29歳の女性が普通に生活している場合、
1日のエネルギー必要量は、1329×1.75=2325kcal となります。

 これは、コンビニのおにぎり約11個分です。意外とたくさん食べても大丈夫かも…。

 痩せたい人はカロリーに敏感だと思いますので、タニタの公開している表で運動したらどれくらいカロリーを消費するかも見てみましょう。

 体重60キロの人が20分ジョギングした場合、147kcalのエネルギーを使うことになります。
 ティラミス1個のカロリーが約400kcalですので、ケーキを無かったことにするためには、約50分のジョギングが必要です。
 とてもじゃないけど、やってられません…。

基礎代謝で言い訳する…

 運動してカロリーを消費して痩せるのもなかなか大変ですね。
運動したくない人のために、基礎代謝の話もしましょう。
 基礎代謝は、何もしなくても呼吸や体温、筋肉や内臓など組織の維持に使われるエネルギーの量です。基礎代謝量が多いのは、肝臓や脳などの臓器類です。
 つまり、太らないために基礎代謝でエネルギーをたくさん使いたい人は、いっぱい考えてたくさん脳みそを使うようにしましょう。
 アルコールをたくさん呑んで、肝臓を酷使するのはダメです。

カロリーは熱の量の単位

 これまで何も考えずに使ってきたカロリーという単位ですが、食べ物の熱量を表すのにも使われますが、元々の定義は「標準大気圧下で1グラムの水の温度を1℃上げるのに必要な熱量」です。
 水温が10℃の100gの水を11℃に上げると100calとなります。

 ただし、世界的にはエネルギー、仕事、熱量、電力量の基本単位としてジュール(J)を使うことが決められています。
 水の比熱はその温度によって異なりますが、とりあえず「1カロリーは4.2ジュール」と覚えておけばいいです。
 1グラムの水の温度を1℃上げるのに4.2ジュール必要ということになります。物を動かす力や電気エネルギーとジュールの関係は以下のように定義されています。
 1 ジュール = 1 N·1 m = 1 ニュートン・メートル = 1kg・m2・s-2
 1 ジュール = 1 W·1 s = 1 ワット・秒
 これまでの計算で、人は大体一日に約2000kcal分のエネルギーを食べ物から得ていました。
 1カロリーは4.2ジュール(J)なので、一日に8400kJのエネルギーを使っていることになります。
 一秒あたりにすると、約100ジュールです。
 1 ジュール = 1 W·1 s = 1 ワット・秒 なので、約100W・sと言い換えることができます。

熱交換のない部屋に閉じ込められた人は熱死する

 ジュールとワットで、部屋の温度を考えてみましょう。
 光の入らない閉じられた部屋の中で、電気製品などをつけていなければ、時間が経つと部屋の中の全てのものが同じ温度になります。全ての物の間には、熱エネルギーのやり取りはない状態です。

温度差があると、熱エネルギーの移動が起こり始めます。
 室温25℃の部屋に、体温37℃の人が入ってくると、人から部屋の空気へ熱エネルギーが移ります。
 人のエネルギーはだいたい100W· s(ワット・秒)で、
       1 ジュール = 1 W·1 s = 1 ワット・秒
なので、1秒当たり100Jの熱エネルギーが部屋の空気に供給されることになります。
 人体は絶えず発熱しているので、100W・sの割合で外部に熱を逃さないと、部屋の温度が上がり続け自分の発熱で熱中症になってしまいます。
 周りの温度が体温より高い場合、そのままでは熱が体内から空気に移動しないので、汗をかいて熱を体外に逃がし体温を下げようとします。

水の蒸発や凍結もエネルギーの出し入れによって起こります。
汗は熱エネルギーを受け取って蒸発することで、周りの温度を下げます。

BioWeather service https://www.bioweather.net/column/weather/contents/mame024.htm

 1gの水が蒸発することで奪う熱エネルギーは、約600カロリー(約2,500J)ほどです。人が発熱する100W・s(J・s)を冷ますためには、
100J・s÷2,500Jで、毎秒0.04gの汗が蒸発すれば、焼け死なずに済むことになります。

蛇足ですが、サウナ-は何故、火傷しないのか…?

 では、これを踏まえて、サウナで火傷しない理由も考えてみましょう。
サウナの中は下段が70℃、上段が100℃。湿度は10%程度になっています。

 70℃の風呂に浸かったら大火傷するのに、何で70℃のサウナに入って座っていられるんでしょう?
 これには、水と空気の熱伝導率、熱容量の違いが効いてきます。
 水の熱伝導率は、空気の20倍、水の熱容量は空気の数千倍になります。つまり、水は空気に比べて早く熱を伝えたり、与えられた熱をたくさん保持できるということです。
 風呂のお湯はたくさんの熱を蓄えていて、その温度はすぐに身体に伝わるのに対して、サウナの空気中の温度はゆっくり身体に伝わって、その間に肌から発汗した汗が蒸発することで肌表面の熱エネルギーを奪うので、温度は肌にすぐには伝わらないということで、70℃のサウナに入って座ってられることになります。

電気のエネルギー

 電気のエネルギーは、W(ワット)で表わされます。
各家には電気使用量を示す電力計がついていますが、そこにはkWhと表示されています。

 kは1000を表すキロの略です。
 Wは電気の大きさで、電気を流す水道の蛇口の太さのようなものです。
hは一時間を表すhourの略です。
 kWhで、電気の大きさと時間の長さをかけ算して、使った電力の総量を表します。
 例えば、1kWの電気製品を1時間使用すると、1kWh の電力量が消費されることになります。
 電気料金は、契約している電力会社によりまちまちですが、おおよそ27~30円/kWh程度です。
 家庭の電気料金は、様々な家電製品を使用した消費電力量により決まります。消費電力量は、使用した電気製品のワット数に使った時間をかけて決まります。
 電気代を安く収めるためには、ワット数の小さい電気製品を使う、ワット数の大きい電気製品の使用時間を短くすることが大事です。
 様々な生活必需家電の消費電力は、数ワット~2000ワットと幅がありますが、温度変化が伴うものは消費電力が高くなります。

家電の消費電力

映画 Matrix的機械文明は成り立つか?

 映画 「Matrix」シリーズでは、AIが支配する機械文明のエネルギー源として人間を電池にして使っていました。

 人間は一日2000kcalのエネルギーを食べ物から得て、8400kJのエネルギーを生体維持に使っていますが、これは、8400kW/日(350kWh)の電気エネルギーを作っているのと同等です。
 人間本体を生かすためにベースを2000kcalとして、更に2000kcalの液体食物を人間電池のカプセルに与えれば、350kWhの余剰電力を得られます。
 これは、デスクトップパソコンを1,000台以上稼働できる電力です!!!

 100%の効率で熱量を電力に変換することは難しいですが、ペルチェ素子などを使って人間の熱エネルギーの一部を電力として使うことはそんなに難しくありません。実際には人間より微生物を使った方がより効率的ですが…

 これからAIが高度化し続けると、その維持に必要な電力が莫大になりますが、AI側から「増え過ぎた人類の一部を電力リソースに使わせてくれ!」という要望が来始めるのも間もなくかもしれません…。

 息抜きのつもりだったのに、こんなこと妄想し続けて、いちいちnote+に書いてたら疲れて息抜きにならない・・・。
 この記事を書くのに、テレビを見ながらだけど週末の3時間が費やされているので、約1000kWhの生体エネルギーを間接的にネットに取られているようなものです。
 いかんいかん!際限ない。この辺で止めなければ・・・。

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