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介護予防は誰のもの【体力(持久力)維持の勘所~人に任せるデメリット~】

 今回のテーマは【体力(持久力)維持の勘所~人に任せるデメリット~】です。 

 前回は、不使用による筋肉の変化についてお伝えしました。不使用の早期から下肢の筋力を中心に急激に筋力が低下すること、それは特に持久力で著明なこと、さらに回復には不使用の期間の3倍の時間が必要なだけでなく、一度白筋化した筋肉は赤筋には戻らないことがポイントでした。それゆえ、術後の翌日からでも動くことが必要(=早期リハビリテーション)で、在宅生活でも”人に頼る部分は最小限にして”自分の力で自分のペースで行うことが重要であるという内容です。

 というわけで、”人に任せること”のデメリットについて皆さんと一緒に考えてみたいと思います。
 ストレッチの勘所で触れましたが、運動しなきゃ!と思うとウォーキングやスクワットなどが頭に思い浮かぶと思います。一方、筋肉の勘所で触れたように、体力の低下は下肢筋力を中心とした持久力から始まります。
 つまり、生活の自律を維持するためには運動が不可欠ではありますが、持久力から衰えるのであれば、ウォーキングが最適解?ということになります。

 なるほど、テレビでもよく紹介されております。ただし、ウォーキングの難点は天候の影響を受けやすいところです。梅雨時や秋の長雨の時期、寒い冬・暑い夏などは気が滅入りますね。その時期を除いて実行しましょう!・・・って、いったいどれくらいの時間を運動するのでしょうか??

 一般の方には聞きなれない言葉ですが、METs(メッツ;厚労省サイト参照)という指標があります。これは、人が安楽な状態にいるときの酸素消費量でみた体力消費(≒基礎代謝)を1としたときに、様々な日常生活動作がどれくらいの体力消費をしているかというものを比較したものです。
 簡単に言うと、ベッド横になっている体力消費を1メッツとしたら、座って食事をする(=1.5メッツ)と1.5倍の体力を消費するということです。
 風邪をひくと座っているだけで疲れて食事もままならないるのは、寝ていることの食事をするだけで1.5倍体力を消費するからだったということです。(実際には体内の炎症に対する体力諸費が基礎代謝の20%以上追加されます。)

 さて、話を戻してウォーキングはメッツ換算するとどれくらいでしょうか?
 高齢者にとってのウォーキング(少し早め)は3メッツです。つまり、じっとしている体力消費に比べて3倍の体力消費ということになります。少し早めのウォーキングは30分も行えば軽く運動した感じがしますから、3メッツ*0.5時間=1.5メッツ・時となります。

 弱点は、暑い日・寒い日・雨の日・体調不良の日は行わないことですから、平均すると1週間毎日というわけにはいかないですね。1週間のうち平均4日行うとすると、1.5メッツ・時/日*4日/週=6メッツ・時/週となり、ウォーキングの体力諸費は1週間で約6メッツ・時ということになります。

 これに対し、食事1.5メッツ、食事の準備2メッツ、皿洗い2.3メッツ、簡単な掃除2.5メッツなどウォーキングに近い体力消費があります。1日3食ですから、食事の準備から片付けまで1時間・平均2メッツとしても、3食*2メッツ*1時間=6メッツ・時となり、1回30分のウォーキング(=1.5メッツ・時)より食事関連の動作で4倍も体力を消費することとなるのです。
 1週間でみたら、食事をしないわけにいきませんから、×7日で食事関連の運動は42メッツ・時(>ウォーキングの6メッツ・時)となります。

 食事の準備を人に任せてしまうと、貴重な運動の時間を手放してしまうことになるのです(/ω\)

 食事を例にとっても、これだけの運動になってます。なにより、ウォーキングは天候に左右されますが、食事の準備と後片付けは天候に左右されません。
 買い物に行く、片付け・掃除をする、洗濯をする、そんな普段から何気なくやっていた(今はやっていない=人に任せてしまいたい)そんな運動が、実はウォーキング以上に皆さんの体力(≒持久力)の維持に不可欠だったのです。

 人に任せることのデメリットは、自分でできる体力維持の運動を自分から手放してしまうことにあったのです。自分でできる体力維持の貴重な機会を手放しておいて、別な手段としてお金を払ってジムに通う、ウォーキングをする・・・しかも天気が悪い日は家でじっとしている( 一一)

 体力維持の秘訣は、ちょっと大変だなということを継続することに尽きます。出来ないことを無理することはリスクを高めるだけですが、出来ることを継続することはリスクを軽減します。介護予防には、自分ができることを継続することが何より肝心だということがご理解いただけますでしょうか。

 次回は、重量挙げの選手が膝の屈伸であれだけ重いものを持ち上げられてもバレーボール選手にはなれないように、バレーボール選手があれだけ膝の屈伸をしても重量挙げの選手になれないことを例に、日常生活で出来る事を自分ですることのメリットを掘り下げてみたいと思います。

 親が子供へ、子供が親へ、忙しさや気遣いでなかなかそれぞれの”おもい”を”カタチ”にしにくい、そんな気持ちの橋渡しをしていきたいと願っておりますので、よろしくお願いします。りはっぴぃ代表で理学療法士で団塊ジュニアの鹿島雄志が、理学療法士としての専門性と子を持つ親としての想いを通して、少しずつ大切な親世代への応援・支援をカタチにしていきます。 

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