【詩】心臓

愛されたいんだ、愛なんて知らないまま。
あなたが描いて、わたしの心臓は、まるでわたしのものであるみたいに、はげしくはげしく脈打って、それで、赤く塗りすぎたんだな、と思った。からだじゅう、血がめぐっていた。もみじよりも深い赤。見知らぬ風景よりも深い赤。けれど、それでも、夢うつつで、あなたに愛されているのが分かる。あなたの、笑顔も怒声もなにもかも、漂白されたみたいに愛おしいんだよ。
泳ぐような筆先、発狂するみたいに走り出して、
色を増して、厚く塗られて、
それでも、いくらでも描いて、殴り描きでもいいから。
わたしの心臓は、生まれたときからあなたのもので、
あなたが絵を描くのをやめ、
わたしを、この世界のなにもかもを、愛さなくなるとき、わたしの愛も消える。そうして、心臓だけが、ずっとずっと痛いんだろう。
赤い赤い心臓。恋は、鮮血みたいですね。

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