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詩まとめ

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詩のまとめです。感情が滲み出てくるような詩を書きます。
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2022年11月の記事一覧

【詩】感覚花火

弾けて、弾けて、言い訳さえも弾けて花火になれよ。
正しいものぜんぶが破裂して、すばらしいもの、すばらしくないもの、きっとそれぞれ色は違うけれど、すべて同じように花火だったらいい。どこかの誰かの恋だとか、愛だとか、きみが考えていること、ぼくが考えていること、くだらないことのなにもかも、ぜんぶぜんぶ着火して、閃光を噴いて、儚いだとかありきたりなこと、呟きながら死んでくれ、死んでくれよ。その死んでくれが

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【詩】流れ星

酔ってるから吐いちゃうのかもしれないね、夢に、自分に。今日も都内の高架下で、きみの夢が吐瀉物になってゆく。きみは苦しくて仕方ないような顔をしているけれど、そうなってしまうのもあながち間違ってないことなのかもしれないね。吐瀉物を避けて歩くこと、同じように色んな人が夢に対して眉を顰めること、きっと、誰の夢も、叶わなければただの吐瀉物みたいなもので、だって、誰もきみの吐いた海に足を突っ込みたがらないから

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【詩】イヤホン

その子は、音楽を聴くようにしか世界を捉えることができなくて、だからわたしは、その子と世界を繋ぐ唯一の架け橋だった、だなんてそう思っていたのに、次の日にわたしは抽斗の奥底にしまわれて、それからは、わたしそっくりのわたしの代わりが、その子のすぐ近くにいた。きっと消耗品だから値段が付くんだ、値札の貼ってあるすべてのものは、とわたしはそのとき知って、でもその子はずっとそれを知らないままだから、きっと、液晶

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【詩】追記、三十、桜の木の下で

だれもやさしくしてくれなかった、ってことばだけ、ぼくにやさしかった。こどくっていうってきいた、ひとりでいきるのは。ぼくはぜんぜんやさしくなんてなくて、だからずっとひとりで、こどくで、けども、みんながいうやさしいひとってのは、ちっともぼくにはやさしくなくて、だからぼくにはやさしさがわかんない。
あいてのたちばにたって、みんなそのことばがすき。それでも、あたりまえみたいに、じぶんいがいのだれかにはなれ

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【詩】方程式の詩

すこしずつ、すこしずつ腐っていって、
何十もの季節が巡って、
そこに、いくつもの笑った顔と泣いた顔を掛け合わせて、
それを幸せと呼ぶこと、
18歳だったぼくたちは、
ぜんぶぜんぶ捨て去って、
綺麗なままの海になりたかった

【詩】ペトリコール

真夜中のキッチンは、いつもより鈍く光ってるように見える、無自覚に、けれども意図的に残された生活感のなかで。仕舞われていない包丁だとか、洗われていない食器だとか、薄汚れたまな板があるから、まだわたしは確かにこの世界で生きてるんだ、ってそう思える。ほとんどの人が寝静まった午前三時、雨の日に唐突に植物の匂いが沸き立つみたいに、散らばった生活感の中にはわたしの欠片が少しずつ埋まっていて、微かにではあるけれ

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