文章教室②
「何を書いていいか分からない」を一瞬で解決する方法
書き出しは2種類しかない
健の前には原稿用紙があり、健はシャープペンも持っている。
だが手が動かない。書けない。
ひとつ分かることがある。
なにを書いていいか分からないのだ。
ダナイは健の足下でイビキをかいて寝ている。
健はダナイを譲り起こす。
無理やり起こされたダナイは不満いっぱいの目で健を見ている。
ダナイは作文の放棄を勧めてくるが元も子もない。
ダナイは猫らしいというか、人間の固定観念を揺さぶってくる。
「書けないというものを書けというのは無理な話だろう。無理は体によくない」
ダナイの意見は新しい視点だが、人間には人間の仕事があるため放棄はできない。
ダナイ曰く、高校受験では入試において小論文を採用しているところがあるとのこと。大学生になったらレポートもあるし、卒業には論文も課題になってくると述べた。
どこでそんな大学の知識を身につけたのだろうか。
ダナイは書けない理由を紙に書くよう健に勧めた。
何を書いていいかがわからない
めんどくさい
文章が上手く書けない
健が書き出したところ、ダナイは解決可能だと真面目に言う。
ダナイ曰く最初の一行が大事らしい。
気持ちを書くもの
出来事を書くもの
気持ちを書くとする。例えば読書をしたなら、その直後に感情のまとめを書く。
「おもしろかった」
「おもしろくなかった」
ざっくりでいい。
そのあとは《その理由》を書いてみる。
正直に書くと怒られる心配を健はしている。
ダナイは猫哲学してんで「怒る方がおかしい」と主張する。
健は遠足の作文を書きたがっている。
ダナイの指導はこう。
書き出しは「遠足がありました」出来事の記述だ。
起きた出来事を時系列順に書いていけばいいだけだ。
ダナイ曰く、上手く書こうとするから手が進まないのだという。ハードルを自分から上げているのだ。知識だけ入れても頭でっかちになるから、いっそ適当に書くだけでいい。コツを会得するのは後からでいい。
君の書く文章は?
気持ちの文章
「中学校になったけど、抱負はありません。」
ダナイのアドバイス。
「抱負があるなら《中間テストで50位以内を取りたい》」
「《野球部でレギュラーを取りたい》といった書き出しもいいね」
なぜその気持ちになったのか。
こんなことではいけないと思う
勉強やクラブで抱負を見つけたい
胸を張って卒業できるように、3年間がんばりたい
出来事を書く文章
事実を書く。
「昨日、遠足があった」
時系列順に書いていく。
「学校に集合した。健康観察をした。先生の注意を聞いた。出発した。目的地は公園だった。ダラダラ歩いた。」
箇条書きになってもOK。徐々に上達していこう。
慣れればこんなことも…
めんどくさく感じるのは、才能がある証拠
ダナイに言われた通りにした。遠足という出来事から深掘りしていく方針を採用した。
手が止まる。
ダナイは机の上に飛び乗ってきて、どうしたのかと問いかける。デブっちょであるため、しんどそうだ。
事実を時系列でまとめて書き出す…。健にできなくなはさそうだった。しかし健は面倒だった。ただただ面倒だったのだ。
健がそう言うとダナイは褒めた。めんどくさいと思えるのは才能らしい。
書くべきことをたくさん見つけられたからこそめんどくさくなったとのこと。見通しがつくようになったのだ。
長く書くのがめんどうになると、文章が短くなる。短くなると無駄が無くなる。無駄が無くなると見やすくなるのだ。これは才能以外の何ものでもないとのこと。
「遠足の途中www翔のバカ話パネェwwww」
と過去にツイートしていた。
翔は遠足中、深夜ラジオの話をしていたらしい。
これは作文のネタになるとダナイは言う。
「友達の翔くんと深夜ラジオの話をしながら歩きました。僕が知らない深夜ラジオだったので、聴いてみたいと思いました」
これは出来事から感想を書いたテクニックだ。
下手な文章でもいいわけではない。読みやすさを第一に考えるべきだとダナイは言う。
上手い文章というのは主観的な部分が大きいので、読みやすい文章を目指すのがいいとのこと。
健はダナイに、読みやすい文章の定義を聞いたが、後で説明するらしい。
期日は明日。
健はひたすら後回しにし続けていたのだ。
ダナイは自業自得だと言った。
掘り下げる
事実や出来事を付け足そう。
どんなラジオ番組か
翔くんの行動や様子
目的地までのかかった時間
どう感じたか
ラジオ番組の面白そうなポイント
翔くんと話した感想
目的地に到着した感想
文章力アップの基本は読書
健はダナイからトレーニングウェアに着替えるよう指示された。文章のトレーニングをするとのこと。
ダナイに連れられた先は、図書館だった。
ダナイは「本をたくさん読めば文章力は上がる」とのこと。
絵や料理は見たり食べたりするだけではダメだが、文章は読むだけで上手くなるらしい。
ダナイの持論として、絵を描くためには沢山絵を見ることが大事で、曲を作るためには沢山音楽を聴くことが大事だと言う。しかし僕の持論だがダナイの言っていることはちょっと間違っていると思う。絵は実際に描かないと上手くならない。いくら読み漁っても画力は上がらない。ギターもそうだ。ドラゴンフォースを死ぬほど聴いたところで、ギターは弾けない。文もそうだと思う。村上春樹を全作品読んでも、長編小説は書けないだろう。知識にはなるかもしれないが。
ダナイが説く読書のメリット
理解力や読解力が付く
単純に知識が増える
コミュニケーション能力が高くなる
価値観が広がる
だから学校では漫画ではなく小説の読書が推奨される。
いい事ばかりでは無いらしく…
頭でっかちになり、行動のハードルが上がる
本が場所をとる
ダナイは最後にいちばん大事なことを話した。
勉強やレベル向上のために本を読むのは厳しいとのこと。続かない。
楽しさが正義だ。
読書が上手になる4つの視点
登場人物の言動
記憶に残った場面や、盛り上がった場面
自分を登場人物に置き換えてみよう
作者のバックボーンを知る
1日200字の日記
健の書いた日記を見て、ダナイは満足そうに頷いた。
毎日書くことが重要だ。
読むより書く方が、経験値のたまりかたが天と地の差がある。
ただ日記は見世物ではないので、読みやすさは重要視しなくてよいらしい。
日誌なら人に見せるものなので気をつけよう。
日記の文体は自由だが、200字書くという条件は付ける。
Twitterの上限文投稿を2回するだけでいい。
毎日続けると、習慣になる。
いつの間にか見るもの触れるものは、日記のネタに昇華していく。
売れっ子作家の朝井リョウは、小学生の頃から日記を書いていたそうだ。その後早稲田大学に進み、23歳で直木賞を受賞。
まとめ
ルールは2つ。
出来事→感情。
そして習慣にするために、いつどこで書くのかは決める。
200字が厳しいなら一行でもOK。
僕の持論は《無理をしない》ということなので、ダナイとは違う。
「やりたきゃやれ!やめたきゃやめろ!」
とりあえず模写
ダナイが原稿用紙を持ってきた。そして文庫本も複数。
純文学、ミステリー、ライトノベルなど。
この中から1冊選んで原稿用紙に書き写せとダナイは言うので、健はミステリーを選んだ。
原稿用紙に文章を書く時の決まり
題名は何マスか空けてから書く
名前も何マスか空けてから書く
段落の始めは1マス空ける
句読点や小さい文字、エクスクラメーションマークも1マス分使って書く
句読点を行の始めに書くことはできない
読むよりも書く方がしんどい。原稿用紙に文字を書き写していると、400文字の量がどれくらいか分かってくる。
書き写すことのメリット
作者の癖が分かるようになる。
《台風が来ている》という出来事があるとして、表すといっても色々ある。
例
台風だ。風が凄い。家まで吹き飛びそうだ。
台風が来ている。物凄い風で、今にも家が吹き飛びそうだ。
台風の風で、家まで吹き飛んでしまいそうだ。
台風のすごい風。吹き飛びそうな家。
絵や字と同じように、言い回しにもその人の個性が出る。
そしてそれに間違いはない。
そして模写すると、自分が上手くなった気になれて、自信がつく。気分は小説家だ。
「書くことが無い」なんてことはない
健は困り果てていた。
ダナイがどうしたのかと聞くと、テレビが映らなくなったとのこと。ちなみにダナイは本は読むが、テレビは観ないらしい。
健がこのままだとチュールのCMも観れないことをダナイに告げると、ダナイは目の色を変えて直すように催促する。
ダナイがテレビの後ろに回り込むと、アンテナが外れていたことが判明。
テレビはアンテナが繋がっていないと映らない。それは人間の感性にも言えるようだ。
意識して周りを見る。それがアンテナを立てるということだ。
意識しないとアンテナは立たない。
このアンテナのケーブルが外れていた件だが、犯人はダナイだったらしい。
テレビの裏にチュールの広告雑誌のようなものを隠していたのだ。その時にケーブルが外れた。
気がつくコツ
身の回りの変化に気をつけてみよう。
新しく買った家電はどんなところが不便で、どんなところが便利か
クラスの女子が髪を切ったのはなぜか
その日の出来事
何かしらあるだろう。
「なにもない1日」とよく言うが、それは変化が無い1日だ。涼宮ハルヒのエンドレスエイト出ない限りそんなことはありえない。なんならエンドレスエイトだとしても書くことはある。
「近所の長谷川さんはまた同じトーンで挨拶をする。」とか。
書くことは自分の内面にもある。出来事が無いなら感情を掘り下げろ。
どうしても書けないなら
健は200字の日記が習慣になりつつあった。毎日続いている。本を読むことにも慣れてきた。
ダナイ曰く、読破する必要は無く、一節でも記憶に残れば、作者からすれば万々歳だと言われているので精神的ハードルは低い。
なんなら書きたいことが多すぎて困るくらいだ。健は腱鞘炎になりそうだった。
そんな健にダナイは音声入力アプリを勧めた。あまり精度は良くないが。
コンピューターは誤字脱字を指摘してくれるので便利だったりする。
ちなみに僕はSimejiを使って、フリック入力と外部のキーボードデバイスを無線で繋げて使い分けている。
楽しいならどんな入力方法でもいい。ダナイはどれだけ便利になっても原稿用紙に手書きがいいらしい。
困った時のテンプレート
健はこの頃になると相当な経験値を積んでいた。
しかし迷っていた。
健曰く「変に自信を付けてしまったから」とのこと。
翔くんのラブレターを代筆することになった健は、どう書いていいかが分からなかったのだ。
ダナイはテンプレートを勧めた。辞表とか志望動機とかの文章だ。
ネットで調べる際は、
《○○ テンプレート》と調べよう。