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助動詞の「り」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。今回は最後に「助動詞について覚えてほしいこと」をつけてあります。長い説明ですので無視してもかまいません。「ふ~ん」と眺めてくだされば嬉しいです。ただし「絶対に覚えるべきこと」としてあげてある内容はかけ算の九九だと思ってマスターしてください。お願いします。  古文単語 その47★帯ひきほどき まくり出せるいちもつは 見るもいぶせきおおわざものなり。


助動詞の「り」を扱います。短歌を中心に用例を提示します。今回は最後に「助動詞について覚えてほしいこと」をつけてあります。長い説明ですので無視してもかまいません。「ふ~ん」と眺めてくだされば嬉しいです。ただし「絶対に覚えるべきこと」としてあげてある内容はかけ算の九九だと思ってマスターしてください。お願いします。  古文単語 その47

★帯ひきほどき まくり出せるいちもつは 見るもいぶせきおおわざものなり。

★白妙の 我が下衣 失はず 持てれ我が背子 ただに逢ふまでに


万葉集 3751

我が下衣(下着)持てれ(持つ・四段・已然形・り・已然形・持っていなさいよ)我が背子(愛するあなた) ただに逢ふまでに(じかに逢えるその日まで)

君が行く 道のながてを 繰りたたね 焼き亡ぼさむ 天の火もがも・あなたが去って行く長い長い道のりを、手繰り寄せ巻き畳んで、焼き亡ぼしてしまう天の火が欲しい。そうすれば、あなたはもう先に行くことは出来ないでしょうから」の作者である。作者は下級の女官であり、清掃などの雑務にあたる地位であったと考えられる。

○ 朝ぼらけ 有り明けの月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪 

     
古今集三三二

(完了存続り)動作が継続しているとの判断
咲けり 行けり 恋せり 死せり 
「流れり」という例はない。(流れたり)とする。

蝦夷征伐で有名な坂上田村麻呂の家系でけまり(サッカーのリフティング)の名人だったそうです。足利尊氏に京都を追い出された後醍醐天皇が奈良の吉野に移り南朝の成立を宣言しました。南北朝の始まりです。
朝ぼらけ(朝おぼろあけ・朝がおぼろに明けるころ・ほのぼの夜が明けるころ)
有り明けの月と見るまでに(九月の夜明けにまだ空に残っている白く見える月・ほのかな光を放っている、身にしみるような月の姿・と見まちがえるほどに・明け方の月ではないかと疑われるほどに)
吉野の里(奈良県吉野には応神天皇・雄略天皇の離宮(別荘)をはじめ俗世間を逃れた貴族達が別荘を構えていた・桜の名所・南北朝時代の南朝があった場所)
降れる白雪(四段降る已然形プラス完了存続り連体形・降り積もっている白雪であることよ)

★股をかたくしめて、すまはんとわぶるを、これかれして指を届けて、ひなさきのあはひより、差しぬりたまへりけり。


   すまはん(すまふ・争う・四段・未然形・む・推量意志)たまへりけり(たまふ・尊敬・已然形・り・完了存続・けり・過去詠嘆)

★ほろ酔ひを  さます軒端の くれは鳥 あやめも軒の つまに匂へり


軒端(山型の切妻屋根の軒の端の部分・つま・軒のはし)くれはとり(美しい綾のあるところから、「あや」「あやに」「あやし」にかかる・古代、中国から渡来した綾織りの技術者)あやめ(菖蒲・綾目・筋目)にほふ(映えている・美しく染まっている)

★つぼみゐし こぞを今年の はるにあふ  心は時の 花をひらけり

つぼみゐる(つぼみをつけている)し(き・過去・連体形・去年はまだ少女だった女性に)こぞ(去年)ひらけり(ひらく・四段活用・已然形・り・完了存続・終止形)

○ かささぎの 渡せる橋に 置く霜の しろきを見れば 夜ぞふけにける

      新古今六二〇

(完了存続り)動作が完了し、なおその状態が続いているとの判断

作者の大伴家持は中納言でした。太政大臣・左大臣・右大臣・内大臣・大納言と続きますので、次のランクとなります。万葉集の十パーセントが家持の作品です。
カササギの渡せる橋(宮中にある寝殿造りの建物に付属している宮中の階段(きざはし)を指す。七夕伝説に織り姫を渡すために、多くのカササギが天の川に翼を広げ連ねて橋を作るという話がある。この伝説にちなんでこの語句を用いている。内裏を雲居の宮とも言う。
渡せる橋→四段渡す已然形プラス完了存続り連体形プラス橋・かささぎが掛け渡していると言う天上の橋(宮中の階段)に)
置く霜のしろきを見れば(上一段見る已然形プラスば・降りている霜が白々と光っているのを見ると)
夜ぞ更けにける(下二段更く連用形プラス完了ぬ連用形プラス過去詠嘆けり連体形・ぞの結び・夜がかなり深くなったことだなあ)

★帯ひきほどき まくり出せる(いだす・四段・已然形・り・完了存続・連体形) いちもつは 見るもいぶせき(心が晴れ晴れしない・いやな) おおわざものなり。

古典の助動詞は、残念ながら、現代語では使用されていないものが多いので、意味と活用と接続を覚えなくてはなりません。

動詞の何形に接続するのか。  
動詞の、どの活用形に接続するかが助動詞ごと、助詞ごとに決まっています。

○ 「走らずという形」 を考えてみます。「走る」に「ず」の接続した形です。


「走ら」は走るの未然形ですが、同時に「ず」は未然形に接続することも意味しているのです。

○絶対に覚えるべきこと
ず・ざ・で・じ・む・まし・まほし・使役(す・さす・しむ)・受身(る・らる) に接続するのは未然形

          
笑はず 走らざる人 咲かで 行かじ 登らむ 

て・、テン・き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし・つつ・用言(動詞・形容詞)に接続は連用形  

 
笑ひて 走り、 咲きき 行きけり 登りつ 泳ぎぬ 泣きたり 書きけむ 受けたし 降りつつ 
☆ 例外の「ぬ・ね」 咲かぬに・咲かぬ花・花咲かねど(ず)・花咲きぬ・花咲きね(ぬ)未然と連用の両方に接続

と・。マル・べし・まじ・めり・らし・らむ・や に接続するのは終止形

  

笑ふと 走る。咲くべし 行くまじ 登るめり 泳ぐらし 泣くらむ 書くや 
☆ 例外 すなり・するなり 終止形接続なら伝聞推定・連体形なら断定 
☆ 花ぞ咲きける。○の上でも連体形。                        花こそ咲きけれ。○の上でも已然形。

を・に・の・は・が・名詞(体言)に接続するのは連体形  

 

笑ひけるを 走りしに 咲きけるのを 行きつるは 登りしが 泳ぎたる人

ど・ば・り に接続するのが已然形 

     
(完了「り」はサ変は未然形せり、四段は已然形・サミシイ)  
笑へど 走れば 咲けり   
☆ 例外の「ば」 ・花咲かば  未然形プラスば → モシ~ナラバ         ・花咲けば  已然形プラスば → ノデ・スルト 会話の中の命令形  

~れ・~へ・~め・~け・~ねの形で終わるのは 命令形

      
走れ  笑へ  読め  行け  行きね

参考までに、どこかの予備校の講師の作った別の覚え方も提示しておきましょう。

未然形 に接続するもの  ず・じ・む・まし・まほし・す・さす・しむ・る・らる   →覚えかた  ムズムズす、じましむ(ジンマシン)さすらるまほし

連用形 に接続するもの き・けり・つ・ぬ・たり・けむ・たし    →覚えかた 連用形 (タバコ)つき けりぬ。煙 たしたり

終止形 に接続するもの  ま じ・ め り・ な り・ ら し・らむ・ べ し→ 終止  豆並べ
終止形に接続する 「なり」 は伝聞推定・連体形に接続する 「なり」 は断定

四段活用の已然形とサ変の未然形にしか接続しないものは、完了・存続の「り」 リカはサ未四已(さみしい)

連体形および助詞の「の・が」に接続するものはなり・たり・ごとし
名詞に接続する「たり」は断定  →覚えかた 連体形につく「なり・たり・ごとし}  ナタリー蛾のごとし

以上です

以下の知識は私大の難しめ(W大とかK大とかD大)や二次の国立の文系以外では、あまり出題されないだろう知識です。

○ 助動詞の接続の順序について (配列順序の組み合わせ  組み合わせる場合、どの助動詞を先にするのか。)
○ 古典では助動詞をいくつか連ねて使用することで複雑な表現を作り上げています。その並びには、ルールがあります。

○ 例   過ぐ (ガ行上二段)   き (過去・第三)   ぬ (完了・第二)の並べ方 → 

過ぎにき


助動詞のグループ

第一順位のグループ

    尊敬  す・さす・しむ ・ る・らる
「さす」と「らる」では 「 させ らる」はあるが「られさす」は無い。す・さす が優先
全ての助動詞・敬意の補助動詞たまふ よりも 第一順位 が優先される。詠ま せ たまふ
ただし下二段の謙譲の「たまへ・たまふる・たまふれ」よりも先になることはない。

第二順位グループ

  助動詞の活用形が未然形から已然形まで、そろっている助動詞
該当する助動詞の間でも、相互に優先関係はあるが高校程度では無理であり、 断定の「なり」などは例外が多く、第三グループの下に接続することがある。

第三順位グループ

  「せ○きししか○」のように未然形から已然形までそろっていない助動詞

例外 第三グループの「めり」の下

に、同じ第三グループの「き」が付いて 「めりしかば」のようになることもある。 助動詞の活用の種類 を考えます。実は動詞や形容詞の活用に似ているのです。
活用は、動詞の活用、形容詞の活用とほぼ同じもののグループと特別な活用をするものがあります。

助動詞のタイプ別分類に基づく活用の覚え方

動詞型  四段活用(む・けむ・らむ)
下二段 活用(る・らる・す・さす・しむ・つ)
ナ変 型(ぬ) ラ変 型(たり・り・けり・めり・なり)
形容詞 型(まほし・たし・べし・まじ・ごとし)

特別型(ず・き・まし・じ・らし)

①特別な型を覚えます。

ずざら ずざり ず ぬざる ねざれ ざれ            せ○きししか○            ませ○ましましましか○            ○○じじじ○            ○○らしらしらし○

② ~りの助動詞はラ変型

  ~しの助動詞は形容詞型の活用をする

③ む・らむ・けむは

 ○○むむめ○  ナ変型は「ぬ」だけ

④ 残りはすべて

下二段型
まずは、これだけ覚えておけば共通試験程度は何とかなります。識別問題が出来る生徒は、文法はほぼ大丈夫です。


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